くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ぼくは明日、きのうのきみとデートする」「ドント・ブリー

kurawan2016-12-22

ぼくは明日、昨日のきみとデートする
なるほど、こういう時間テーマのストーリーもありかと感心する一本。しかし、映像化するにはもう一工夫必要だったようですね。終盤まで、どんどん切なさが募ってくるのですが、ラストシーンの処理に困りましたというエンディングでした。監督は三木孝浩、結構この手の映画を得意にする監督です。

電車の線路のシーンから、主人公高寿が電車の中で、一人の女性福寿愛美に一目惚れして声をかけるところから始まる。しかも、みるみる二人は順調に接近していくのですが、時折、愛美は意味深な言葉を投げてくる。そして、何かのタイミングで涙を流す。

二人の関係は毎日みるみる発展し、ある夜、二人は結ばれる。深夜に帰った愛美を見送り、ふと自室に戻った高寿は一冊のメモ帳を見つける。そこには意味不明な書き込みがあった。

そしてかかってくる電話。愛美は高寿に話さなければいけないことがあるという。翌日、愛美は高寿に、不思議な話をする。

この世界の隣には、時間が逆に進む世界がある。愛美が五歳の時この世界のお祭りに連れてきてもらった時、35歳の高寿に助けられたのだという。一方高寿は5歳の時、35歳の愛美に溺れるところを助けられたのだというのだ。そして、二人が会えるのは5年に一度30日間だけだと告げられる。

高寿の明日は愛美の昨日、二人の関係は不可思議な時間の流れとなって、切ない恋の物語を紡いでいく。当然、ラストは、期限の30日がきて、愛美が消えてしまうところになるが、その後のエピローグで、映画としての終わらせ方を模索してしまっているのがこの映画の弱点。確かに、普通に考えて、全く思いつかない。原作があるのですが、かなりシンプルである。

ただ、愛美を演じた小松菜奈の魅力が映画を引っ張ったという感じで、高寿役の福士蒼汰はいつもながらの演技だった。

つまらなくはなかったけど、もう一歩、練りこんだ脚本で仕上げて欲しかったと思います。切ない話なので、胸は熱くなるのですが、細かいエピソードやさりげない小道具、ちょっとしたセリフを生かす演出があればかなりの感動が呼べたかもしれません。まぁ、小松菜奈が可愛かったのでいいとしましょう。


ドント・ブリーズ
満席の映画館、どこがどう話題なのかと思えたが、それほど凄い映画でも、怖いホラーでもなかった。人を怖がらせるには、見えない恐怖、閉鎖された空間を使うのが常道なのだが、そのどれもが、一見使われているようで使われていない。第一に、恐怖の源である目の見えない老人が、普通に強すぎるし、ピストルを持ち出すということからして、まず怖くない。それなら、別に目が見えなくてもいいじゃないのという感じ。監督はフェデ・アルバレスという人。ホラーの作り方、人を恐怖に引き込むすべを心得ていないという感じでした。まぁ、普通のバイオレンス映画でしたね。

俯瞰で捉える郊外の住宅地、一人の男が女を引きずっている。カットが変わると若者三人が一軒の家に巧みに忍び込み、ブランド物など盗んで逃走。そして次のターゲットになったのが、元軍人で、両目とも失明した老人で、どうやら、娘が事故で殺された時に手にした賠償金を家に隠しているらしいという家。

目が見えないことで油断して入ったが、なんといきなり男はピストルをぶっ放してくる。一人殺され、ほんの僅かの音でも反応して、迫ってくる恐怖、を描くはずが、ここが非常に普通で、なんのための設定だと思ってしまう。

結局、迫ってくる老人と対決し、地下室に、娘を殺した女が監禁されていて、人工授精で子供を作ろうとしているという異常な設定が、とってつけたように登場するが、その後は、また逃げるバイオレンス。

後は、最後の一人になったロッキーという女がなんとか脱出して、妹とカリフォルニアに向かう。その出発ロビーで、老人は命が助かったというニュースを見てエンディング。

この老人に、不気味さが足りないので、ホラーとして成り立っていない。映画としての普通のドラマで終わるこのエンディングは、いただけません。退屈しないのは、ただバンバンとバイオレンスが繰り返されるからで、怖くもなんともない。なんで、こんなに観客がいるのかと思う一本でした。