くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「凍河」「情炎」「黒の奔流」

「凍河」

それぞれの登場人物のお話が空回りしているように見えるけれど、原作がしっかりしているのか、それなりの人間ドラマに仕上がっていました。ただ、主人公竜野と阿里との恋愛部分が妙に薄っぺらく見えたのはちょっと勿体無い感じでした。監督は斎藤耕一

 

主人公竜野が兄貴にバイクの指南を受けている場面から、若い医師の竜野がバイクで新しい赴任先にやって来るところへ移り映画は始まる。院長の高見沢は、自由奔放主義で病院を運営している精神病院で、患者たちも自由に毎日を過ごしている雰囲気だった。副院長で事務長の唐木が竜野を迎える。竜野は高見沢の家に行き、娘のナツキに出会うが、ナツキは手紙で、阿里葉子という患者に惚れることになるから気をつけるようにと予言してきる。ナツキはどこか小悪魔的な少女だった。

 

竜野は病院で勤務する中、すでに全快しているにも関わらず、過去に何度も暴行されたりした過去のある阿里と出会う。そんな理由もあり彼女は病院を去ることを拒んでいた。しかし、理由はそれだけではなく、院長高見沢に惹かれているというのもあった。高見沢は戦時中満州で人体実験jをした過去があり、いまだに悩んでいた。同僚の元医師もアル中で病院にやって来るが、まもなくして自殺してしまう。彼もまた苦悩していたのだ。

 

竜野は次第に阿里に惹かれ、一緒にデートして外泊もする。竜野は阿里と結婚することを決める。そんな頃、ナツキが家出をして居なくなる。それぞれがそれぞれの道を歩むことを決めていくなか、経営状態の厳しかった病院は、高見沢が退くことを条件に新しい経営者の手に渡ることになる。竜野は阿里にプロポーズし、北海道の小さな村に一緒に行こうと誘う。そしてバイクで二人が旅立ち、それを見送る唐木、高見沢の姿で映画は終わっていく。

 

役者それぞれがどうも空回りするような演技を繰り返してしまった感じで、胸に迫って来るものがいつまでも感じられない作品でした。決して駄作ではないし、お話もしっかりしているのですが、感動を覚えられなかった。

 

「情炎」

監督は頭が良すぎて、私らのレベルではついていけない退屈さ。それでもそのシュールな映像表現にのめり込んでしまう魅力。物語は捏ねまわした感のあるシンプルな女の情念の物語ですが、何度か気を失いそうになってしまった。でも癖になる、だから映画は面白いという一本でした。監督は吉田喜重

 

証券会社の社長の妻織子が歌会にやって来る。そこには母の情夫だった能登という石の彫刻家が来て居た。織子の母繁子は交通事故で亡くなったらしい。生前、織子は繁子に能登と別れるように言っていたが母は受け入れなかった。さらに、能登は、繁子が事故の頃付き合っていたのは自分ではなく労働者の男だったと織子に告げる。

 

織子も夫との仲が冷めて居て、離婚を考えて居た。夫の妹の悠子が男友達と遊びに来て、織子も誘われる。夜の海、悠子のボーイフレンドたちが海辺で遊び、悠子は何処かへ走り去る。一人になった織子が悠子の後を追っていくと、悠子は労働者風の男に抱かれているのを見かける。後日、織子はその労働者のところへ行き、悠子に近づかないようにいうが、逆にその男に織子も抱かれる。

 

織子は能登の元を訪ねるが、砕石場へ仕事に出ているという。織子が能登のところへ出かけるが、作品搬出の際、クレーンから石が落ちて能登は大怪我をしてしまう。能登が性的に不能になる可能性を告げられる織子。織子は家を出る決心をし、襖に夫へ宛てた歌を書き、悠子に後を頼んで駅に向かう。ホームの反対側にあの労働者の男を見かける。こうして映画は終わる。

 

例によってのハイキーな露出画面と細かいカットの繰り返し、車に轢かれる繁子と、終盤同じシーンで織子が轢かれる幻想的なシーン、現実とも非現実ともつかない不可思議な映像演出、映画を映像芸術として楽しむ魅力を兼ね備えた映画ですが、ちょっと仕上がりは今ひとつに映画だった気がします。

 

「黒の奔流」

よくあるサスペンス映画で、先も読めるし、見ていて退屈もしないし、普通に面白おかしく楽しめる娯楽映画でした。松坂慶子がまだまだ初々しいし、山崎努のオーバーアクトも楽しいエンタメでした。監督は渡邊裕介。

 

貧乏弁護士の矢野の事務所でつまらない結婚詐欺の相談をしている場面から映画は幕を開ける。不平を言いながら弁護士会館で矢野は恩師の若宮弁護士と会う。若宮がある事件で国選弁護士でも居ないかと話しているのを聞き、恩を売るつもりで矢野は貝塚藤江という女中の殺人事件を担当することになる。そして、矢野が見事無罪を勝ち取り、被告の貝塚藤江は無罪となり、一躍時の人になった矢野は若宮弁護士からも気に入られる。

 

矢野は流れで貝塚の住まいを段取りをしてやり、矢野の事務所で雇ってやることになり、いつの間にか愛人関係になっていくが、矢野を気に入った若宮弁護士は、娘の朋子の婿に矢野を選ぶ。貝塚は弁護士事務所の岡橋から、矢野が朋子と結婚する話を聞いた貝塚は矢野に捨てられると感じ、日陰の女でもいいという前言を覆したばかりでなく、実は無罪を勝ち取った殺害事件の真犯人は自分だと告白、矢野も共犯になると脅しにかかる。

 

困った矢野は愛人の岡橋に相談、貝塚を殺すことにする。矢野は一旦は冷たい態度をとった貝塚を呼び出し、依を戻す話をした上で旅行に誘う。旅先の湖上で貝塚を突き落とす計画だったが、貝塚は矢野の態度からそれを察知し、逆に果物ナイフで矢野を刺し殺す。全てが明るみになって、若宮弁護士らが話題にしているシーンで映画は終わる。

 

のちに二時間サスペンスで山のように描かれる推理ドラマの元ネタのような映画ですが、見て居て肩も凝らないし、気楽に楽しめました。