くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ママと娼婦」「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」

「ママと娼婦」

3時間40分近い長尺な中、延々と展開する三角関係のドラマは、不思議なほどに退屈しないのだけれど、唐突にエンディングを迎えることで、題名の意味を把握できないままに見終わった感じでした。先日見たこの監督の作品と少し構図が変わって、アップが多用されています。クライマックス、自分は男性とSEXはするけれど娼婦ではないと言う長台詞に映画のメッセージを盛り込んでいるのでしょうが、私には理解しづらかった。監督はジャン・ユスターシュ

 

主人公アレクサンドルが、愛人マリーとベッドで目覚め、一人起きて階下の住人に車のキーを借りて出かける。そして、道を歩く一人の女性に声をかけ、今からあなたの講義を聞きにいくと強引に迫る。どうやら元カノのようだが、その後のカフェでの会話から、3年ほど会っていないようだ。そしてアレクサンドルは執拗に結婚を迫るが、結婚できないなら、その女性が今同棲している男性と結婚した方がいいと話す。途中一人の女性をナンパして自宅に戻り、そのことをマリーに話す。

 

ナンパした女性ヴェロニカに電話をして約束をして待ち合わせるがすっぽかされる。そのあと、電話してくれるように頼んでおいて、電話が鳴る。そしてカフェでデートする。マリーが数日ロンドンへ出かける時に、アレクサンドルとヴェロニカはSEXをする。しかしそれを知ったマリーは嫉妬する訳ではないけれど、嫌悪感をあらわにする。

 

こうして映画は、アレクサンドル、マリー、ヴェロニカの三角関係で、お互いを認め会いながらも、次第にマリーとヴェロニカが接近していく中で翻弄されるアレクサンドルの展開へと移っていく。三人で裸でベッドに入り、二人の女性に迫られるアレクサンドルには疲労感だけが募っていく。マリーの前でアレクサンドルらはSEXするが、それをみてマリーは自殺しようとして大騒ぎになる。そんな中、ヴェロニカは処女を失った二十歳の頃から数々の男性と関係してきたが自分は娼婦ではなく、男性と体を合わせるのが好きなだけだと延々とベッドで長台詞を吐く。

 

一人ヴェロニカはアレクサンドルの部屋を後にするが、ヴェロニカのことを愛しているのを知っているマリーはアレクサンドルを送り出す。アレクサンドルはヴェロニカを家まで送るが、そのまま家まで押しかけていく。ヴェロニカは妊娠したと言う。アレクサンドルは過去に大勢の女性に結婚を迫ったが、ヴェロニカにも結婚して欲しいと言う。酔って吐きそうになるヴェロニカは、結婚するなら洗面器をとってと言って、アレクサンドルが洗面器を渡し、唐突に映画は終わる。

 

男と女の、一見理解しづらい展開のラブストーリーだと思いますが、4時間近くあるのに、それなりに最後まで見れた勢いはそれなりのクオリティの作品だったのだろう。好みの映画ではないけれど、見るべき一本という感じでした。

 

「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」

SFなのですがなんともシュールで不可解な作品でした。単純な未来の人類進化映画なのですが、独特のグロテスクさと造形で描く様はまさにデヴィッド・クローネンバーグ監督の映像美学の世界。物語が複雑に絡み合う割には今ひとつ整理ができていなくてかなり退屈だった。

 

近未来、入江に大型客船が横倒しに沈んでいて、一人の少年ベレットが海岸で遊んでいる。母のジュナが、余計なものを食べないようにと叫んで、家に招き入れる。食後だろうか、歯磨きをしている少年は突然足元のプラスティックのゴミ箱を齧り始める。ベッドで眠るベレットを突然ジュナが枕で押さえつけて殺し、夫のラングに連絡して家を出る。

 

場面が変わると、異様な虫の甲羅のようなベッドで眠るソール。今や人類は痛みという感覚が消えてしまっている。ソールは体の中に新しい臓器を作り出してしまう加速度進化症候群という病気で、それをパフォーマンスでパートナーのカプリースに解剖の機械でタトゥーを入れて取り出すショーをしていた。食事の際も、咀嚼などを補助する機械に座って食べるソールだった。二人は臓器登録所を訪れ、そこのウィペットとティムリンという職員と面談する。

 

誤った進化と暴走に危惧した政府はニューバイスという組織を立ち上げ、その調査員のコーブは密かにソールと接触していた。そんな時、ラングからソールが連絡を受け、ソールの機械でベレットの解剖をして欲しいと言われる。実はラングは、プラスティックや産業廃棄物を食べることができる体に人類を改造する組織を主宰していて、普通の人間が食べると毒になる食品を製造して広めようとしていた。ベレットは手術しなくてもプラスティックを食べることができる新しい人類が生まれたと喜んでいたが、それを恐れたジュナが殺したのだった。

 

ソールとカプリースはラングの依頼を受けることにし、解剖機でベレットの解剖を始める。ところが、開いてみると、ラングが予想していた美しい進化ではなく、悍ましい臓器に満たされ、参加した人々も驚愕してしまう。しかも、ラングは謎の女に暗殺されてしまう。ソールはコーブから、ベレットの内蔵がああいう状態であるのをあらかじめ知っていたと知らされる。それはティムリンによってすでに解剖されていたのだ。

 

ソールは痛みが感じられ始めたことから自分が新しく進化しているのではないかとカプリースと相談し、咀嚼を補助する機械でラングが作った食品を食べてみると、これまで普通の食品なら苦しみながら食していたのに、何の違和感もなく食べれることがわかり、映画は終わる。

 

何ともコメントできない展開の異様な作品で、耳を身体中につけた男がダンスするシーンなど、どう解釈したらいいかわからないエピソードや、終盤に二人の女性が暗殺を始める流れも意味がわからなかった。映画の出来の良し悪し以前に、クローネンバーグ美学の世界を体感した感じの映画でした。