くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「エクソシスト」(ディレクターズカット版)「こんにちは、母さん」

エクソシスト

ほぼ50年ぶりの再見、それなりに目も肥えてきてるつもりですが、やはりこの映画は名作だと改めて感じました。シーン編集のテンポが実に上手いし、次第にじわじわ盛り上がってくる展開も並のホラーと一線を画す感じです。細かいシーンやセリフもほとんど覚えていました。監督はウィリアム・フリードキン

 

教会のマリア像とジョージタウンの煉瓦造りの家をカットで繋いでタイトル、イラク北部、遺跡発掘現場に映像は移って映画は始まる。発掘に来ているメリン神父が、珍しい物が出たという知らせに行ってみると何やら像のかけらのようなものと時代が違うロザリオ。何かの予感を感じたメリン神父が研究室に戻ると時計が突然止まったりする。翌日、発掘現場に行き、遺跡の頂に聳える不気味な像と対峙する。突然目の前を馬車が駆け抜けたり、不吉な出来事が交錯して場面はジョージタウンの閑静な住宅街へ。

 

女優のクリスがダイニングにいると屋根裏で物音がする。使用人のカールに、屋根裏のネズミを退治して欲しいというが、何もいないという。この日、撮影を終えたクリスが自宅に戻ってくる。撮影を見学するカラス神父の姿もある。途中にチューブラベルズが流れ、クリスは裏の教会で神父の心の相談に応じているカラス神父を見かける。カラス神父は精神科の医師の資格もあった。子供達が走り抜ける。家に帰ると一人娘のリーガンが出迎える。このオープニングが素晴らしい。

 

カラス神父は病弱な母を自宅で介護していたが、叔父もなかなか助けに来てくれず困っている。ある時、母が突然発作を起こし精神病院に緊急搬送される。カラス神父は病院に行くが母は自分を捨てたかのように罵倒する。二日後母は亡くなる。

 

リーガンの誕生パーティの日、クリスは自宅に大勢の客を呼んだが、二階で寝ていたリーガンが突然降りてきて、宇宙飛行士に悪言を吐いた末放尿してしまう。どこか具合が悪いと感じたクリスはリーガンを病院へ連れて行き様々な検査をするが異常は見つからない。一方自宅で寝ているリーガンのベッドが突然揺れたり、卑猥な言葉で母親を罵倒したり、超常現象が起こり始める。

 

たまたま、使用人のシャロンの留守にリーガンを見てもらっていた映画監督の男バークがリーガンの部屋から外に投げ出され、階段を転げ落ちて死ぬ事件が起こり、殺人課のキンダーマン刑事が聞き込みにくる。

 

更なる検査が必要という医師に、クリスはうんざりだと言い返す。医師は、望みは少ないが悪魔祓いの方法があると言う。クリスはカラス神父を紹介され、リーガンを見てもらうが、その症状に悪魔憑きを実証する物が見えなかった。ところがある夜、シャロンはカラス神父に連絡をし、見て欲しいものがあるという。カラス神父が駆けつけると、リーガンのお腹にhelp meの言葉が浮かぶ。悪魔祓いの規定が揃ったと思ったカラス神父は教会で悪魔祓いを申請、まもなくしてメリン神父が遣わされる。

 

メリン神父とカラス神父はリーガンに対峙、ところが悪魔の力は強く、カラス神父は母の幻影を見せられ疲弊していく。メリン神父はカラス神父を外に出して一人リーガンに対峙する。静かになった部屋にカラス神父がはいると、メリン神父は息絶えていた。狂気に狂ったカラス神父はリーガンにつかみかかり、自分に乗り移れと絶叫、次の瞬間悪魔の如く変貌するカラス神父はリーガンを締め殺そうとするが、一瞬戻った人間の姿の時に窓から飛び出し階段を転げ落ちて死んでしまう。駆けつけた同僚のダイアー神父が最後の懺悔を聞く。部屋では、元の声に戻ったリーガンが泣き叫んでいた。

 

クリスたちがこの家を去る日、送りにきたダイアー神父にリーガンがついキスをする。カラス神父のロザリオをクリスはその神父に託そうとするが、それはクリスが持つべきだと返す。走り去る車を見送るダイアー神父のところにキンダーマン刑事がやってきて、カラス神父に話しかけた時同様に映画に誘うが断られ食事に向かって映画は終わる。

 

前半の徐々に物語が核心に向かう中で描かれるそれぞれの苦悩や人間ドラマが、クライマックス悪魔祓いという見せ場で全てに決着をつけていく展開が見事で、一級品の映画とはこういうものかと納得させられてしまいます。もちろんホラー映画ですが、それ以前に、優れた人間ドラマとして完成された名作だと思います。

 

「こんにちは、母さん」

丁寧に隅々まで書き込まれたセリフと、間合いを操った巧みな演出はまさに職人芸、隅田川のそばの下町の一家族の日常を描いたたわいないお話ですが、素直に見入ってしまいました。監督は山田洋次

 

大企業の人事部長の神崎昭夫は、この日同期入社で出世に一歩遅れた木部から、希望退職の件で詰められている。家に帰れば妻と離婚問題で揺れている上に、妻のもとにいた大学生の娘舞が家出したと妻から連絡が来て奔走する。昭夫は下町で足袋店を営む母福江の元を訪れる。

 

福江は地元の人たちとホームレスのボランティアをしていてそのメンバーの一人で牧師の荻生に密かな恋心を抱いていた。物語は昭夫が奔走する姿と新しい恋にときめかせる福江、未来を手探りしている舞の姿を交錯させ、そこにホームレスのイノさんを絡ませての人情物語として展開する。

 

木部は退職しないとゴネ出し、結局本部長に怪我をさせるトラブルを起こし、懲戒解雇のところを昭夫が助け、自らは退職する。人事という仕事が向いていないと以前から思っていたことからの決断が潔い。さらに妻とも離婚届にハンを押す。福江が恋焦がれる荻生は北海道の教会に転任することになり、福江は心ならずも失恋してしまう。誰も彼もの人生に一区切りがついて、隅田川の花火の日をクライマックスにして映画は終わる。

 

一つ一つのセリフが一言工夫されていて、さらに、演技演出も、一味付け加えた丁寧さがとっても心地よく仕上がっています。山田洋次作品の中ではトップクラスとは行きませんが、最近の作品の中では良い出来栄えの一本だったと思います。