くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「おまえの罪を自白しろ」「フィフィ・マルタンガル」

「おまえの罪を自白しろ」

確かに面白いストーリーです。その意味でエンタメ映画としては十分に楽しめましたが、いかんせん主人公の中島健人が非常に弱く、前半部分のポリティカルサスペンスの部分に迫力が伴わない。その結果、後半の意外な展開からな真相への導きにインパクトが欠けていて、後一歩の爽快感が微妙なことになってしまいました。監督は水田伸生

 

荒川大橋建設現場を俯瞰で捉える映像から、この工事に関わった衆議院議員の宇田清次郎の姿、そしてこの工事に関しての汚職事件を含めての地元反対運動の姿が描かれて映画は始まる。起こした会社が倒産し、父の議員秘書についた次男の晧司は、父の汚れた政治スタイルに反感を持っていた。清次郎は現夏川総理大臣の裏仕事を請け負いながらここまできて間も無く大臣の椅子が見えていた。この日も晧司らと仕事に向かう。見送ってくれる娘の麻由美とその娘に声をかけて車に乗り込むが間も無くして晧司に麻由美から連絡が入る。娘が誘拐されたらしいという。

 

やがて犯人から連絡があり、明日の午後五時までに清次郎が過去の罪を自白しないと娘を殺すとメッセージが入る。清次郎は罪を自白する一方で官房長官を通じて政治制限をかけてもらうように要請する。その場合、清次郎の犯罪の捜査がストップされるのである。しかし、それは夏川総理の政治生命に影響を与える可能性があり、なかなか答えが来ないまま会見の時間が迫る。そして、差し障りのない罪だけを告白して清次郎は記者会見を終える。競艇場を現在の市の研修施設への移設をめぐる談合疑惑もあり、記者たちも晧司もそこまで触れる予定だった。

 

そんな父の態度に不満の晧司は、清次郎に詰め寄るが、兄の掃一朗らも加わり次の策を練る。そんな時、次の会見を要求する犯人からの連絡が入る。晧司は官房長官に詰め寄るが、何故こちらの動きが総理に筒抜けなのか不信に思う。そして、かつてそばで働いていた山本が木美塚官房長官の指示で情報を清次郎のライバル青柳議員に漏らしていたことを知る。晧司は木美塚の前で、清次郎を切る態度をとった総理からの電話を無視して、将来の総理候補木美塚に迫る。

 

清次郎は二回目の会見で競艇場移設の談合の件を告白、要職を辞任して離党すると宣言する。間も無くして孫が解放されるが、ショックで言葉が話せなかった。晧司は、研修センターを壊して漕艇場を移設するにあたっての土地を再度調べ直し、何か秘密があると判断し、三回目の記者会見を計画する。そこで清次郎は議員も辞職し、研修センターの地盤が脆弱にも関わらず移設を決定するに至った真実を晧司らと宇田家総力で調べると宣言する。

 

地質調査が再度行われたが、ある雨の夜、調査員がいない中、二人の男女が調査地点にやってくる。それを待ち構えていたのは警察、晧司らだった。晧司は、移設反対の本当の理由を突き止め、実はこの場所に何かありと判断してフェイクの記者会見で犯人を誘き出したのだ。

 

警察の捜査の結果、上荒川橋移設にあたって倒産した寺中という姉弟の工場で、父を殺してしまった事件が関わっていて、市の研修施設の場所に死体を埋めたために、漕艇場の移設に反対し、掘り起こすのに抵抗し、清次郎の孫を誘拐したことがわかる。

 

最後の記者会見は犯人を誘き出すフェイクではあったが、宇田家では晧司が清次郎の地盤を継ぎ、この日国会答弁の場にいた。受ける総理大臣に木美塚の姿があって映画は終わる。

 

面白い話だし、細かいところにも気配りした演出は見事なのですが、全体にやや荒っぽさが見え隠れして、迫力が伴いきれていない。子供はなぜ声が出ないほどショック状態になったか、楊一朗と晧司とのさりげない確執もしっかり描ききれていないし、前半の麻由美のややオーバーアクトな演出が後半いともあっさり消えているのももったいなかった。力強さが今ひとつ見られないけれど楽しめる映画でした。

 

「フィフィ・マルタンガル」

フランスコメディはどうも苦手です。面白い作りでトントンと話が展開していくのですがどうも笑えない。クライマックスの即興で繋いでいく劇中劇の舞台はなかなか楽しい趣向で面白かったけれど、劇作家が右往左往しながらもがく様に入り込めないものがあって、楽しい作品ながらもどうも好みの映画ではなかったです。監督はジャック・ロジェ

 

パリでヒット中の戯曲プールバーグと呼ばれる大衆娯楽劇「イースターエッグ」がモリエール賞という演劇界の高尚な賞を受賞、いぶかった劇作家は何かの陰謀に違いないと、報復するために上演中の劇を大幅に改編しようと計画する。

 

CM撮影の準備でニワトリの格好をして化粧室で準備するイヴは突然呼び出され、とりあえずタクシーに乗って劇場へ向かうが、前の車と衝突して足の怪我をしてしまう。それでも、稽古に向かうイヴ。稽古を始めたもののままならず、演出家もプロデューサーも困ってしまう。そんな時、セリフを一発で覚える特技を持ったガストンが現れる。

 

ガストンは出演料を前金で受け取り、カジノへ向かう。なぜかヒロイン役のフィフィもついていく。そしてそこそこに勝ったガストンは自身の劇団の借金を返済する。ところが肝心の舞台上演前、入ったはずのセリフが飛んでしまう。その様子をフィフィも見て、仕方なくプロデューサーらは人間プロンプターを入れることにして舞台に穴を作る。

 

やがて開演するが自分の役をとられたイヴは復讐してやろうとプロンプターの席に隠れる。そして、プロンプターと一緒にガストンの様子を伺うが目も当てられないほど一言も喋れない。そんなクライマックス、コック役が突然パイをぶつけて大暴れするし、桟敷席ではガストンの劇団の団員がギターを弾き始める。フィフィはフラメンコを踊り出し、ギターも絶好調で大騒ぎになって終演、映画は終わる。

 

全くドタバタ劇タイプの展開ですが、即興で繋いだ感のある時間と空間を吹っ飛ばした演出はなかなか面白く、これがジャック・ロジェの個性かと思わせる一本でした。