「総理の夫」
久しぶりにテレビドラマレベル以下の凡作を見ました。原作が弱いのか脚本が弱いのか演出にキレがないのか、なんともし難い映画だった。物語の流れも読めるし、登場人物も平凡だし、主人公も際立たない。中谷美紀が出れば相当な映画もそれなりに引っ張り上げるのですが今回は力及ばず、さらに小物の田中圭も何のための登場かと思えるほど残念だった。監督は河合勇人。
ソウマグループの御曹司で、都内の閑静な邸宅に住む相馬日和が、仕事の一環でもある野鳥観察を家のベランダからしている場面から映画は始まる。北海道へ出張の予定でその準備に嬉々としている日和は出かけに妻の凛子に「私が総理になったら何か不都合がある?」と聞かれその言葉を聞き流して北海道へ旅立つ。
携帯も繋がらない先で10日が経ち戻ってみるとなんと妻の凛子は初の女性総理大臣になっていた。内閣広報官の富士宮が日和につき、総理の夫として突然時の人になった日和は戸惑うばかり。凛子は精力的に活動するが、日和は凛子の政敵原の策略でスキャンダルの種を抱えてしまう。しかし、鮮やかに切り抜ける凛子。この辺りの展開は流石に中谷美紀のうまさが光る。
しかし、ここから後がいけない。原に敵対した凛子は衆議院解散をし一気に総選挙へ持ち込むが、折しも凛子は妊娠してしまう。選挙は大勝し、第二次内閣として総理大臣になるが、無理が祟り、病院へ担ぎ込まれ絶対安静を言い渡される。焦る凛子だが、日和の言葉もあり一歩下がって冷静になり総理大臣を辞する決意をする。
記者会見で発表する凛子の前に日和が駆けつけ、これからも前に進もうという意味の言葉を投げかけて記者団の賛辞を浴びる。そして時が過ぎ、子供も生まれ、凛子が目指した法案も後任者が成立させ、敵対していた原さえも味方になっていた。この弱さ、ゆるゆる感はなんだというクライマックスである。そしてこの日も出張に行く日和を送り出す凛子は「もし総理大臣になったら」という言葉を投げかけて映画は終わる。
なんともお粗末な映画だった。中谷美紀どうしたというのもあるが、根本的に原作が弱い上に脚本が荒い。演出も適当な上に面白みがないし、脇役もその場限りの演技で小手先で済ませている感満載。しかも悪人である岸部一徳も凡人だし、凛子や日和を取り巻くファンもしょぼくて見てられない。お金取るなといい言いたくなるような一本だった。