くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アマゾン無宿 世紀の大魔王」「裏切者は地獄だぜ」

「アマゾン無宿 世紀の大魔王」

なんとも珍妙な怪作。錚々たる大俳優たちが奇妙な仮装でコスプレして真面目くさって大立ち回り。しかもお話は無駄に世界規模でオールスターだからもう笑いが止まらない。名作映画を平気でパロディにしたり、あれよあれよと荒唐無稽にストーリーが展開したり、役者たちが楽しそうに演じているだけでも見る値打ちのある一本でした。監督は小沢茂弘。

 

ニューヨーク、アメリカ周辺の賭博師の大ボスが集まり、次の市場進出は日本だと相談し、熊吉というチンピラを送り込むことにする。その頃カイロではアジアアフリカ連合がこれまた日本の賭博場を狙っている。さらにヨーロッパでも日本市場進出が目論まれている。ここに香港の麻薬組織の大ボス竜は日本での相棒の本屋敷のホテルに滞在し、日本での賭博市場を全て牛耳ろうとしていた。竜の秘書の玉琴、実は恋人を竜に殺された日本人の彼女は、密かに竜を狙っている。竜は日本のユートピア教会という怪しい宗教団体のボス西園寺をまず手中に収めようと画策を始める。

 

その頃、ブラジルからテンガロンハットを被った源次が日本にやって来る。賭博場で熊吉と知り合い、さらにヨーロッパから来たジャックとも知り合った三人は竜に見込まれて殺し屋として雇われる。しかし、三人それぞれは自分の利益しか考えていなかった。竜はまんまと西園寺を倒しユートピア教会を手に入れる。竜の命を狙った玉琴はすんでのところで見つかり突然発狂して精神病院へ入れられる。玉琴の正体を知る源次らは彼女を助け故郷の北海道へ行き、日本を狙っている竜ら外国人を倒すべく密約する。

 

そして本屋敷のホテルに戻った源次らは、着々と日本征服を目論む竜に敢然と立ち向かい銃撃戦を繰り広げる。そして駆けつけた警官たちに竜の部下らは逮捕され、竜は自害して果てる。実はジョーは国際警察の警官だった。源次と熊吉は無罪放免となり、熊吉も玉琴も源次のブラジルの農場で働こうと強引に飛行機でついていって映画は終わる。

 

片岡千恵蔵進藤英太郎辰巳柳太郎そのほか錚々たるメンバーが珍妙な格好で、時に彼らの一部は気狂いになって踊りまくる場面は圧巻。もう開いた口が塞がらないひどあっけに取られる豪華絢爛なおふざけエンタメ映画で、これだけのことをいとも簡単にできる余裕こそが映画全盛期の勢いなのだろうと思います。まさに拍手である。

 

「裏切者は地獄だぜ」

ここまで破天荒にストーリーが展開すると面白くて仕方がない。娯楽映画とはかくあるべきと言わんばかりで、次々と出て来るスターたちに目移りする上に、二転三転なんでもありの物語はまさに職人芸の世界である。めちゃくちゃな銃撃戦は今となってはリアリティが吹っ飛んでいるけれど、なぜか全編だらけることもなくあれよあれよと引き込まれて楽しんでいる自分がいる。これがエンタメだなと思える一本でした。監督は小沢茂弘。

 

海山千吉という曲者の写真を前に教訓を垂れるやくざ者のシーンから映画は幕を開ける。変わって、ボクシングの試合で熊次という男がコミカルな試合を繰り広げて見事チャンピオンに。ここは刑務所のボクシング試合だった。模範囚となった熊次は出所することになり、出迎えたのはかつての弟分青野達。ところがシャバに戻ってみるとかつての組は陣手率いる新興ヤクザに乗っ取られ、親分は殺されたのかどうか行方不明、しかも青野達は海山を新しい親分にしていた。熊次も海山の子分になることになり、さっそく大仕事へ向かう。それは麻薬取引の現場で金を横取りするものだったが、警察を巻き込んだものの、踏み込まれて混乱して、熊次や海山の知り合いのお春らは逃げる。

 

留置所に入った青野らはジョーといい男の手引きで脱獄して、海山の元へ。海山は親分の未亡人静江の家に行き、親分の仇を打つために動き始める。しかし、ジョーは実は刑事だった。海山は陣手に掛け合い、陣手のアジトのキャバレーを共同経営にさせる。一方、この町の市長は高額な公館を建てて、何やら怪しいことに使っていた。市長が黒幕だとみた海山らは市長を拉致する。市長には弟がいて若い頃、父親を刺し殺した兄を庇って弟が警察に捕まり、兄は市長に、弟はこの地の親分格になって公館に住んでいた。

 

海山らは真実を暴き公館へ踏み込んで弟らと銃撃戦の後、悪人を退治する。実は海山は警視庁の刑事で、この地で捜査していた若い警官が殺された事件を追って捜査に来ていた。ジョーは彼の部下だった。二人は次の赴任地海外へ旅立ち、静江の妹は正義漢の市長の息子と見送って映画は終わる。

 

とにかく。あれよあれよと物語が展開して、振り返って思い出すと、なんでもありやったなあと思ってしまう映画ですが、意外にしっかりと作られていて。途中だれることが全くない。やはり職人監督が作るとこうなるものかと感心してしまう映画でした。