くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「男はつらいよ フーテンの寅」「新・男はつらいよ」「男はつらいよ 望郷篇」

男はつらいよ フーテンの寅」

監督が森崎東に代わって、少し色合いが違うのですが、素直な人情ドラマとして、なかなか良かったです。こういうのを見ると、男はつらいよシリーズのファンがいるのも納得いきます。頭の夢シーンなどもなく、すんなり本編に入るのも良い。

 

田舎の料理屋での結婚式の場面、大騒ぎする宴会場に主人公寅さんが風邪で寝込んでいる姿が絡んで映画は幕を開ける。間も無くして、柴又に帰ってくるが、叔父らが寅さんの縁談を準備している。勇んで出かけた寅さんは、そこで出会った相手の女性は旧知の知り合いで、叶わぬ恋を成就させてやったもののとらやの面々に怒られて、また旅に出る。

 

とらやの夫婦が骨休めに湯の山温泉に行き、そこの旅館で寅さんと再会。寅さんはその旅館の女将お志津に惚れている。しかし彼女には大学教授の許嫁がいる。例によってのてんやわんやで、寅さんは失恋し、旅館を去って本編は終わる。

 

1969年の大晦日、とらやで年越し蕎麦を食べ、テレビを見ていると、テキヤをしている寅さんが映る。こうして、寅さんの風来坊ぶりが語られて映画は終わる。全体の組み立てがなかなかしんみりまとまっているのが良い作品でした。服装が前二作と違うのも、まだまだシリーズ化出だし故でしょうね。

 

「新・男はつらいよ

一見、雑な脚本なのだがやはり山田洋次の力量は微かに残っている感じである。大量生産に入っていく感じが垣間見られる一本でエピソードの組み立ても取ってつけたようになっているが、それなりの人情ドラマにはなっています。監督は小林俊一

 

裏の社長が旅先で寅さんに会ったくだりを語る場面から映画は始まる。競馬で大儲けをして帰ってきた寅さんはとらやの夫婦をハワイ旅行に連れていくことになる。ところが、旅行会社の社長に金を持ち逃げされ、仕方なく、旅行に行ったことにしてとらやに隠れているところへ泥棒が入りとドタバタ劇から始まる。

 

近くの幼稚園に来た春子先生がとらやの二階に間借りすることになり、そこへ寅さんが帰ってきて一目惚れ。そしてドタバタと展開するが突然春子先生の恋人がやってきて寅さんは失恋。とらやを後にして旅先でいつもの口上で楽しませている場面でエンディング。

 

全く、なんの脈絡もないエピソードの羅列で書かれた脚本がかなり雑いものの、軽い人情ドラマで楽しむ仕上がりになってました。まだまだ汽車が画面に出てくるのは時代ですね。

 

男はつらいよ望郷篇」

これは良かった。物語の展開はいつものパターンなのですが、妹のさくらを有効に使った人間味あふれる脚本と監督の山田洋次の卓越した演出がなせる一品に仕上がっていました。どれもこのレベルの作品なら全部見ても良いかなという感じです。

 

例によって寅さんの夢のシーン、とらやの叔父が亡くなる場面を見た寅さんは慌てて戻ってくる。そして上野から先に電話をするのだが、とらやの叔母は寅さんを担ぐべく叔父の具合が悪いと嘘をつく。寅さんは慌てて戻ってくるも嘘とわかって怒る。そんな寅さんに、妹のさくらは、良い加減に地道な生活になるように説得する。

 

そんな時、寅さんがかつて世話になった親分が臨終の床にあると聞いて、舎弟の登と北海道へ行く。そこで、親分に、息子に会いたいと言われ、なんとか機関士をしている息子に会いに行くが、そんな父はいないと断られる。程なくして親分は死んでしまうが、このことがきっかけで、寅さんは本気で地道に暮らすことを決意、登と兄弟分を解消して追い出し、柴又に戻ってくる。ところが、行くところ行くところで断られた寅さんはぷいと出て行ってしまう。

 

そして浦安で豆腐屋の手伝いをすることになったと手紙がくるが、実はその店の娘節子に惚れていた。さくらは心配になり寅さんのところに行くが、やっぱりと納得して帰る。ある夜、節子が寅さんにずっと店にいてほしいと言い、てっきりプロポーズと勘違いした寅さんは舞い上がってしまう。ところが、節子には木村という恋人がいて、結婚して家を出るのに母一人残せないと寅さんにお願いしたことがわかる。

 

それを知った翌朝、源公を残して寅さんは豆腐屋から姿を消す。折しも祭りの花火の夜、柴又に帰ってきた寅さんは荷物を取り、さくらたちに別れを告げて旅立っていく。そして海岸を歩く寅さんは伸びると再会して映画はエンディング。

 

いつもと同じ展開ながら、妹のさくらを使ったシーンが実に心にしみてくる仕上がりになっていて、いつもの失恋話なのに、無性に切ない映画で締めくくる。明らかに山田洋次の演出力によるものだと思います。良い作品でした。