くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「エクスペンダブルズ ニューブラッド」「スライス」「葬送のカーネーション」

「エクスペンダブルズ ニューブラッド」

ハリウッド映画はこうでなくちゃいけません。単純に面白いし、中身よりも見せ場というコンセプトがとにかく飽きさせない。スター総出演とはいかないけどそれなりのロートルが所狭しと撃ちまくる暴れまくるから映画を楽しんだという満足感で映画館を出ることができました。監督はスコット・ウォー

 

リビア、旧化学兵器工場では核爆弾の起爆装置が作られていた。そこへ突然、ラフマトら率いる武器商人軍団が襲い掛かり、工場の将軍を拉致して起爆装置を手に入れようとする。そんなころ、CIAから新たな任務を受けたバーニーは相棒のリーの家に行き彼を誘い出して、エクスペンタブルズ出動に向けて動き出す。命令するマーシュの指示によりリビアへ旅立ったバーニーらだが、ラフマトの激しい反撃の中、ついにバーニーの操縦する輸送機は爆破されバーニーは死んでしまった上に、起爆装置を持ったラフマトはまんまと逃亡に成功させてしまう。

 

CIAのマーシュは、新たなエクスペンタブルズを組織し、タイ国籍のタンカーに乗って核兵器をロシア領内で爆破させて第三次世界大戦を起こそうと画策するラフマトを阻止すべく出動を指示する。前回の任務で失敗したリーは参加できなかったが、マーシュが加わる。リーは自身のナイフにGPSを仕込んで恋人のジーナに持たせて、かつてのバーニーの仲間のデーシャと共に後を追う。

 

エクスペンタブルズらはタンカーに無事着艦するが、情報が漏れたのか待ち構えていたラフマトらに拉致されてしまう。タンカーに追いついたリーはデーシャとタンカーに乗り込み、ジーナらを探す中、ラフマトらと銃撃戦を開始。すでに核爆弾のタイマーはセットされていた。ジーナらは自身で拉致された部屋から脱出、合流したリーらと共にラフマトと銃撃戦が始まる。

 

ラフマトは、仲間とエクスペンタブルズとの引き換えを要求、やがてラフマトの仲間が輸送されてくるが、出迎えたマーシュはその男を撃ち殺す。マーシュこそが裏切り者だった。第三次世界大戦を起こして大儲けをしようと計画していたのだ。そして銃撃戦の後、ラフマトを倒したリーは残りの仲間をデーシャの船に移し、自分はタンカーの航路を変更するために船に残り、マーシュとの最後の戦いに臨む。

 

間一髪、応援のヘリがやってくる。操縦するのはバーニーだった。彼は25年前からマーシュが怪しいと考え、自身の死を偽装して尻尾を出すのを待っていた。そして、船は方向を変え、バーニーのヘリのロケット弾で、タンカーは海に沈んで大爆発を起こす。こうして全てハッピーエンドで映画は終わる。

 

なんのことはない映画だし、よく考えると無茶な話だが、これがハリウッドエンタメの本髄だと思います。楽しいひと時を過ごせました。面白かった。

 

「スライス」

過去のホラー映画のネタをつまみ食いしたような馬鹿騒ぎのホラーコメディ。ノリだけで突っ走るので辻褄も何もないのだが、B級ホラーなんてこんなもんだという気楽な映画だった。監督はオースティン・べセリー。

 

キングフィッシャーの街、ショーンという男がピザの配達に車を飛ばしている。客の家に着き玄関にたった彼は一瞬で首を切られ死んでしまう。賑やかなアニメによるタイトルが延々と流れた後、この町にオオカミ男が戻って来たところから物語は始まる、というテロップで映画は始まる。キングフィッシャーの街は、幽霊と人間が共存する街だが、市長は幽霊をゴーストタウンに住まわせるという政策で支持を得ている。ショーンが殺されたことで、マーシュ刑事は犯人がオオカミ男だと決めつける。

 

一方ショーンの働いていたピザ屋では、ショーンの死を悼んで閉店しようと店長のジャックが言うが、ショーンの彼女のアストリッドは店を続けようとやってくる。この店には幽霊のジョーも店員だった。そんな中、ピザの配達人がまた殺される。殺人事件はオオカミ男の仕業だと慈善団体ジャスティス40000のヴェラが叫ぶ中、オオカミ男に罪が着せられるが、事件を追うジャーナリストのセイディは、ピザ屋の過去を調べるうちに、ピザ屋の前は中華料理屋だったことがわかる。その中華料理屋も閉店当時事件を起こしていた。

 

そして、アストリッドらと調べるうちに、ピザ屋の地下に地獄の門があり、その門を開くためにヴェラは市長と組んで、殺人事件起こしてそれを幽霊やオオカミ男のせいにしようとしていた。ジャックやアストリッドが地下に行くと、地獄の門番のカールがいた。そしてヴェラこそが魔女で、真犯人だと暴く。

 

アストリッドはオオカミ男に、満月の夜に変身して魔女を倒すべきだと提案、やがて満月の夜が来て、地獄の門を開こうとしたヴェラにオオカミ男とアストリッドが立ち向かう。そして、マーシュ刑事が銀の弾丸で魔女を殺してオオカミ男の無実を証明する。ジャックはピザ屋を再開し、オオカミ男は中華料理店を開き、セオディも出世してニュースキャスターになり、ジョーも店を開いて大団円。と言うかなんのことかわからないラストシーンで映画は終わる。

 

終始馬鹿騒ぎの映画で、その馬鹿騒ぎが今ひとつテンション上がってこないと言う落ち着きが奇妙な作品で、CGなども使ったバトルシーンがある割に全体がしょぼい映画だった。

 

「葬送のカーネーション

地味な映画ですが、抑えた色彩と画面の構図が美しいクオリティの高い作品でした。淡々と流れる物語ですが、現実とも幻影ともつかないシーンを交錯させ、背景に、トルコ周辺の政情をシリアスに描きながらの展開は鬼気迫るものがあり、ラストは、主人公ムサの妻への思いに切なく胸が熱くなってしまいました。監督はベキル・ビュルビュル。

 

太鼓の音と賑やかな人の声、道の中央で騒ぎながら踊っている人々を縫うように車が抜けていく。車には老人ムサと孫のハリメが乗っていて、運転手は人々を避けながら道路に出る。さらに、車には棺桶が載っていることに気がつく。死体は老人の妻らしく、二人は棺桶を引いて国境へ向かっていた。ハリメの両親は亡くなっているようで仕方なく祖父について来ている。道の分かれ道で、村へ向かう運転手らはムサとハリメと棺桶を下ろす。ムサはハリメの持っていたおもちゃの木の車輪を棺桶に結びつけて引っ張りながら、乗せてもらえる車を探すが見つからない。

 

口の聞けない羊飼いに会い、ロバに棺桶を乗せてもらったり、友人と金のトラブルで電話ばかりしている農夫にトラクターで運んでもらったりする。洞穴についた二人は棺桶から遺体を出して、ハリメを棺桶の中に眠らせ、オオカミらがうろついていて危険だと感じた故だろうか。ムサはハリメがいなくなり遺体も燃やされ、棺桶も木の上に吊るされる夢を見て目が覚める。一方のハリメも、棺桶にいれられたまま引きずられる夢を見てムサを起こす。

 

すでに棺桶の底はボロボロで、仕方なく材木屋に寄るが、棺桶を治すのは無理だと言われ、また死体を国境まで運んでいくのは罪になると諭される。そして、死体は段ボールに入れ、材木屋の知り合いのおばさんのトラックで移動する。途中のガソリンスタンドで下ろされたムサとハリメは通りかかった大型トラックに乗せてもらうが、国境付近で警察に捕まってしまう。

 

留置所で、死体はこの近くに埋めるようにと忠告される。ムサは妻への誓いで生まれ故郷に連れて帰りたいというが、近くの墓地に埋めることになる。埋めたところにハリメは真っ赤なカーネーションと自分が描いた祖母の絵を貼り付ける。ムサは一人ととぼとぼ国境の金網に向かう。そして金網を超えて行ってしまう。

 

ハリメも後を追おうと金網に登りかけるが登れない。ムサを呼ぶハリメを後にムサは歩いて行くと、結婚のパーティだろうか、花嫁らしい女性と周りで踊る人たちが見える。ムサは黙って花嫁の横に座る。それはかつてムサが結婚した時の思い出の幻覚なのかもしれないが、こうして映画は終わる。あの後ハリメはどうなったのかわからない。

 

おそらく、主人公が結婚した当時国境もなく、幸せだったのだが、紛争が起きて故郷を追われたまま人生を終えたのだろう。故郷へ戻してやりたいというムサの思いがラストで一気に彷彿し、複雑な政情の中での厳しい現実の物語に、たまらなく切なくなってしまいました。いい映画でした。