くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「銭ゲバ」「キャバレー日記」

銭ゲバ

荒っぽい脚本で、原作のエピソードを駆け抜けていくような展開は流石に雑な仕上がりになった映画で、主人公のカリスマ性やストーリーの奇抜さ面白さはそっちのけの映画でした。監督は和田嘉訓

 

片目が半分潰れていてぶ男な主人公風太郎が寂れた街を歩きながら、壊れたサングラスを拾い、無銭飲食しようとしたり、金もないのに女を抱こうとするところから映画は幕を開ける。子供の頃、病気の母が金がなくて医者にかかれず死んでしまったため、金に異常な執着心を持つ風太郎は、ある大会社の社長の車に飛び込んでまんまと社長宅に入り込み、土下座して働かせてもらうようになる。

 

この家の運転手で次女の正美と懇ろな男を殺して後釜に座り、とうとう正美と結婚する。長女三枝子がまだ独身だったので会社の重役となり、社長を殺して社長になり、さらに三枝子をレイプして自分のものにするが、三枝子は姿をくらます。若い頃に殺した青年を捜査する1人の老刑事が風太郎の周りに出没し始め、風太郎の前に突然現れたかつての飲んだくれの親父も殺し、次々邪魔者を消していくが、突然、三枝子が赤ん坊を連れて戻ってくる。風太郎の子供だと言われて、その子供を殺し、三枝子も殺すが、自分の業に号泣しながら浜辺で海を臨む風太郎のシーンで映画は終わる。

 

なんとも言えない羅列だけの映画で、なんの中身もないし、唐十郎の演技も引き出されていないし、とにかく、安直に作った感満載の一本でした。

 

「キャバレー日記」

相当に良かった。ロマンポルノの一本ではあるものの、丁寧に張り巡らされた伏線、テンポの良い演出、人間味の溢れた展開に胸の中がどんどん熱くなっていきます。お色気シーンは満載ではありますが、散りばめられた生の感動がたまらない切なさを産んで滲み出てきます。いい映画でした。監督は根岸吉太郎

 

キャバレーの店員の和田が店に出勤してくるところから映画は幕を開けます。背後に流れる鼻歌、店内での軍隊のような勢いのある点呼の繰り返し、キレのいい演出に一気に引き込まれます。しかし、映像はいきなりの裸の連続、色気が溢れる中に営業最優先のプロの世界を描写し、そこに、男と女の妖艶な物語が走り始めるともう目が離せません。。

 

夜、道端で吐いている店の女の子宏美を助けた和田は、店で禁じられている店の女の子との関わりを店長に見られ、翌日殴られる。その潔い展開も心地よい。実は和田は宏美のことが好きなのだ。宏美は福永課長と交際していて、尽くしているようであるが、ある時、福永は店の女の子淳子と行方をくらましてしまう。どうやら2人はできていて、店では付き合えないこともあり辞めてしまったらしい。

 

まもなくして淳子が戻ってくるが、淳子と福永が同棲している間も、福永は宏美に金をせびりに来ていたことを知り、店長らが宏美を使って福永を誘き出しとっちめる。店ではチェーン店同士の競争が行われ、一位を目指して従業員一丸となって必死に働いている。係長になった和田も粉骨砕身頑張る。一方、思いを寄せる男を罠にかけたという罪悪感で宏美は悩んでいる。そんな宏美と和田は店で体を合わせる。翌朝、店で目を覚ました和田は店長に起こされるが宏美は寮を出て行っていないのだという。宏美は最後に和田に電話をしたが和田は気づかなかったらしい。宏美はトランクを持って旅立っていく。

 

この日、チェーン店の成績発表があり、一時はトップだったが最終で二位になったと店長が従業員に発表、店長の熱弁に従業員たちはつい涙ぐんでしまう。そして、この日も和田は店の前に立ち。掃除したり呼び込んだりスカウトしたり、日常が戻ってくる。こうして映画は終わる。

 

とにかく、映画のテンポが抜群に良い。それに面白い。そして、登場人物みんな血が通っていて暖かさを感じてしまう。さらにお色気も満載。凝縮された人間ドラマの秀作という感じの映画だった。