くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「終わった人」「いろは囃子」「風流温泉日記」「風流交番日

kurawan2018-06-11

終わった人
よくもまあ、こんなありきたりな映画を作ったものである。
次の展開が全て読めてしまうし、ストーリー展開の妙味も全くない。強いて言えば舘ひろしのファッションの着こなしと言うべきか。流石に長年トップクラスの二枚目を演じてきただけあって、しょぼくれてもバッチリ決まる。映像も、流石に中田秀夫監督、バッチリ決まっている。のだが、陳腐な映画なのである。

主人公田代壮介が定年の日を迎える数分前から映画が始まる。東大卒でエリート銀行マンだったかれは、ライバルに負けて関連会社の役員出向して定年を迎えた。妻の千草は美容師である。子供達はすでに独立し、夫婦二人暮らしなので、これと言って趣味もない田代には一瞬ですることがなくなってしまう。

周りの人々のアドバイスなどもあり、大学院を目指そうとするが、カルチャースクールの受付の女性浜田久里と出会うが、恋だと思ったのは結局田代の思い違いだったり
IT企業の社長に見初められて顧問になるが、間も無くその社長が急死。社員に懇願されて社長になったがふとしたことで会社が負債を抱えて倒産。

田代は、独立して美容院を開業する妻千草に、これ以上迷惑をかけたくないからと離婚を伝える。しかし、千草は卒婚を希望。つまり、卒婚という今時テーマを描きたかったのだとようやくわかるのだが、どうにもまどろこっしいのと、ラストが故郷の盛岡でNPO法人を営む高校時代のラグビー仲間の手伝いをしている田代のところへ妻がやってきてエンディング。

確かに、内館牧子の脚本はしっかり書かれている。ただ、時代が一歩ずれている。でも、ずれているならずれているで、今の映像にしなければいけないと思います。
脇役の人物描写がどれも中途半端だし、エピソードそれぞれの描きこみも適当。
景色の捉え方や構図は流石に美しいが、物語に最後まで入り込めなかった。


「いろは囃子」
普通の娯楽映画で、これと言う名作でもないがやはり画面の構図はしっかりしているし、話としては好きな物語です。監督は加戸敏。

二人のヤクザ者が、付け火の嫌疑をかけられそうで逃げ回っているシーンから映画が始まる。

主人公の男平太郎がとあるお茶屋に逃げ込み一人の女お仙と出会い、やがて二人は恋仲となるが、色々あって入水自殺を図る。そして時が経ち、実は二人とも生きていて平太郎は木材問屋の旦那になっている。お仙はしがないやくざ者の船頭と一緒になっている。

平太郎の妹がかどわかしに会い、それを助けたのがお仙の亭主で、ゆすりに来たところで汚染と平太郎が再会、もみ合ううちに平太郎は船頭を殺してしまう。家に戻れずまたやくざ者になる。

時が経ち、祭囃子の人混みで、酔っ払った平太郎がお仙とすれ違うがお互い気がつかず別れて行ってエンディング。

ラストの祭囃子の提灯の構図や木場の上での喧嘩シーンなどなど、構図がしっかりしていて実に美しい。まさに職人監督が作った一本という映画でした。


「風流温泉日記」
売春禁止法時代の白浜温泉を舞台にした人情ドラマで、典型的なお気楽な娯楽作品。ただ、昭和33年の白浜温泉がノスタルジーでした。監督は松林宗恵

白浜の老舗旅館南海荘に新しい女中として一人の女の子が見習いでやってくる。といって彼女が主演ではなく、物語はここに出入りするさまざまな客や、女中たちの人生ドラマが描かれて行く。

詐欺師に引っかかってしまったり、赤線あがりで女中をしていて悩んだり、幼い頃に捨てた娘との再会を心待ちにする女中や、新婚旅行の夫婦をもてなすベテラン女中の手腕や、強盗が泊まってきたり、金を横領して自殺するためにきた男を思いとどまらせたりと次々と物語が展開して、地元の巡査が昇進して和歌浦に転勤して映画が終わる。

たわいのない話ですが、なんの肩がこることもなくみ終われる一本、癒しの映画ですね。


「風流交番日記」
昭和30年代の東京を舞台にした人情ドラマ。駅前の交番で出入りするさまざまな人間模様と巡査の物語で、ノスタルジックな時代色を楽しむ上では、楽しい一本でした。監督は松林宗恵

駅前の交番に勤務するベテラン巡査、中堅、2枚目の巡査、新入り。それぞれがそれぞれに日常を過ごす姿を描いて行く。

まだまだ売春行為が平然と行われ、小さな犯罪が横行している。田舎から出てきた娘が普通に街で立ちんぼを始める。孤児が新聞を売っている。浮浪者まがいの男が結婚式をする。無銭飲食で捕まる男。

などなど次々と日常が描かれて、そのままラストシーンへ。こういう映画は今ではほとんど見られませんが、どこか楽しくてたまらない一本です。