くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ダム・マネー ウォール街を狙え!」「ジェヴォーダンの獣」(4Kレストアディレクターズカット版)

「ダム・マネー ウォール街を狙え!」

面白くなる話なのですが、直近の実話を元にしていると言うのもありますが、裕福な投資家がバカで、スラングだらけの小口投資家=ダム・マネー側がお調子者としか見えない下品な映画に仕上がってしまった。言いたいことはわかるが、そこを一歩引いて冷静にエンタメにして欲しかった。監督はクレイグ・ギレスピー

 

いかにも金持ちと言う投資家スティーブが、大きな邸宅を手に入れ、テニスコートにする許可を取るのに大声で電話している場面から映画は幕を開ける。さらに、敷地が大きすぎて、パソコンがある仕事場へ行くのにダッシュして垣根を越えないといけないという馬鹿さ加減。投資家仲間と電話でやり取りしながら、最近話題にゲームストップ社の株価の話をしている。

 

今にも潰れそうなこの会社の株に巨額の空売りをかけて、将来の値下がりを待っているのだが、彼の意に反して、株価が上昇していた。上昇の仕掛け人は、SNSを中心に動画配信しているキース=ローリング・キティが、小口の投資を繰り返しながら、フォロワーに情報を流していた。その情報で面白半分の小口投資をするフォロワーたちの姿が交互に映されていく。

 

小口投資家の資金は徐々に膨らみ、それにつれてゲームストップ社の株価は天井知らずに上昇し始める。映画は、株価がどんどん上昇して、売るかどうか悩む小口投資家と、キースの行いに、資産家への闘争心を煽る気持ちが描かれていく。ところが、危惧した投資家側はキースらの使う証券会社のサーバーをダウンさせてしまう。

 

投資家からの依頼かどうかは不明ながら、突然の処置に小口投資家は右往左往するが、キースが売る行動をしないので、小口投資家もそれに倣う。やがてシステムは復旧するが、ほとんど小口投資家の残高は変わっていなかった。投資家側は破産する会社も出始め、下院はキース、スティーブら関係者を召喚する、時はコロナ禍の真っ最中で、全員がオンライン討議となる。結局、解決はなく討議は終了する。その後のことがテロップされ、キースは最後に大口の投資をした後姿を消した旨が流れる。

 

全体が非常に雑多な作りになっていて、そこにスラングやらが飛び交うので、下品な空気感だけが表に出てしまっています。もうちょっとそれぞれの攻防戦を面白おかしく組み立てたら、なかなかの娯楽映画になったかもしれない。脚本をもっと練って欲しかった。

 

ジェヴォーダンの獣

典型的な冒険活劇という感じの映画で、二時間半もあるので少々物語が不必要に反復されているところがあって、構成に緩急強弱をつければもっと面白くなったろうにと思える映画だった。とはいっても、ラストまでほとんど退屈することがなく、次々と派手なアクションシーンと不気味な獣の存在、さらにそれを操る秘密結社の摩訶不思議感で引っ張っていくのは、原作の強みだろう。面白かった。監督はクリストフ・ガンズ

 

一人の老人が、若き日の冒険を回想する姿から映画は幕を開ける。時はフランスルイ15世の治世、革命思想の息吹が吹き荒れようとしていた。彼の名はトマ、若き侯爵だった頃、彼はかつてのジェヴォーダンの地に現れた怪物に対処していた。場面が変わると一人の女性が何者かに追われて崖っぷちに追い詰められ、ついにその怪物に殺される。この村では女、子供だけを襲う獣に悩まされていた。ここに、パリで王室博物学者でもあるフロンサックは友人のマニと共にこの地の獣を退治するべく国王の命でやってきた。彼らの前に老人と女がならず者らに追いかけられている現場に遭遇、マニが鮮やかにならず者を倒し老人と女を助ける。

 

フロンサックらはダブジェ侯爵の館に逗留することになる。彼らはアフリカに行った際に片腕を亡くした貴族ジャン=フランソワとその妹マリアンヌと知り合う。そしてフロンサックはマリアンヌに一目惚れしてしまう。ダブジェ侯爵の若侯爵トマに連れられて、この地の娼館に出かけたフロンサックは、そこで謎めいた娼婦シルヴィアと出会う。

 

村では、パリから派遣されたボーテルヌの軍隊と共に獣狩りの男たちが組織されるが、マリアンヌも男顔負けの姿でフロンサックにつきそう。しかし、現れるのは狼ばかりで、成果があげられない軍司令官は解雇され、代わりにパリから国王直属のボーテルヌの討伐隊がやってくる。しかも、その討伐隊の行動にフロンサックらは参加を拒まれる。

 

間も無くして一匹の狼を連れ帰ったボーテルヌは動物の剥製も作ることができるフロンサックに、偽装するように命令する。それを持ち帰ったボーテルヌは国王に褒められ、手助けしたフロンサックにも褒賞として希望していたアフリカ行きを与えられる。王宮でフロンサックは、庶民に広がりつつあり今や発禁になっている啓蒙本を手渡され、王政が危機に瀕していると言われる。そんなフロンサックに恋焦がれるマリアンヌは手紙を託す。ジェヴォーダンでは、あの後も獣による惨劇が続いていた。

 

フロンサックはマニと共にマリアンヌの元へ戻ってくる。その頃、一人の少女が行方不明となり、その捜索に行ったフロンサックらは、洞窟に隠れる少女をマニが発見する。獣に襲われ生き延びた人々の証言などから獣は動物と金属でできていた。さらに獣を操る人物もいると判断する。そして、トマ、フロンサック、マニの三人のみで獣退治へ向かう。

 

マニと心が通じる狼の導きでついに目の前に獣が現れるが、用意した罠は全て破壊される。マニの攻撃で重傷を負わせたものの獣は逃げてしまう。マニはその後を追って不気味な洞窟に辿り着く。そこでは、鉤爪をつけた異様な集団がいた。彼らと戦うマニだが、追い詰めた一人が、最初に助けた女だと気がつき、つい油断した隙に背後から銃で撃たれてしまう。

 

捨てられたマニの遺体を見つけたフロンサックは激昂する。マニの体に残された銃弾は銀の弾で、それはジャン=フランソワが愛用する銃のものだった。フロンサックは、秘密結社の洞窟へ行き、散々暴れた後、一旦マニの遺体を火葬するが、直後、地元の警備隊に捕えられてしまう。しかし、シルヴィアが現れ、フロンサックになにやら食べ物を与えると、フロンサックは突然苦しんで死んでしまう。しかし、それはフロンサックを助け出すためにシルヴィアが持ち込んだ仮死になる薬だった。

 

一方、ジャン=フランソワは、妹であるマリアンヌに以前から恋焦がれていた。そしてとうとうマリアンヌを強姦してしまう。秘密結社は、謎の獣を作り出して王に脅威を与えて啓蒙本で庶民を操り国家転覆を計画していた。そこへ、再度フロンサックが突入するが、多勢に無勢で、ピンチになる。あわやという時、銃声が響く。シルヴィアはローマ教皇に遣わされた人物で、彼女はローマ教皇の軍隊を率いて救援にやってきたのだ。そして秘密結社の面々は逮捕され、獣はマニの攻撃で瀕死となっていたが、間も無く死んでしまう。

 

フロンサックが戻ってくるとマリアンヌが兄の異常な愛情の末、瀕死の状態だった。フロンサックはマニに譲られた秘薬を与える。その姿を思い出す年老いたトマの姿へ画面が変わり、外に出ると、革命を起こした人々が貴族を糾弾していた。アフリカに向かう船の中、フロンサックとマリアンヌが抱き合っている姿で映画は終わる。

 

もう少しストーリー構成に工夫したら、あるいは、もう少し緩急をつけた演出が施されたらもっと傑作になったろうにと思える映画で、獣の存在や秘密結社、王政の危機、兄の妹への恋慕など、多彩なエピソードが同じ配分で描かれているので、散漫に見えなくもないのがとっても残念。でも退屈しない娯楽映画でした。