くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「青春の反抗」

「青春の反抗」

青春映画という触れ込みなのですが、芯になる話がまとまっておらず、三角関係の展開を繰り返す一方で学生運動の成り行きを同じウェイトで描いていくので視点が見えてこない。ラストの締めくくりから遡って思い起こしても、今ひとつ心に迫ってくるものがない映画でした。監督はスー・イーシュエン。

 

1947年の二・二八事件の後戒厳令が敷かれた台湾は1987年に解除されるまで恐怖政治が続いたというテロップの後、時は1994年に舞台が移る。旧態然とした運営が今なお行われている大学で、美術学科のチーウェイは、何かにつけ理不尽な態度を取る教授陣に疑問を呈していた。この日も、クラスメートからの回しメモを見たことをきっかけに主任に咎められ、それに反抗したために採点を落とされてしまう。その頃、校内では大学側の運営に反旗を翻すビラが撒かれる事件が繰り返されていた。たまたまビラ張りをしていたウェイチンと出会ったチーウェイは、彼らの運動に次第に参加していく。

 

ウェイチンは政府の高官の娘で学生運動のリーダーイークァンの恋人でもあった。イークァンとウェイチンを中心にした学生たちは、美術課の主任の退任、理不尽に退学された学生の復学、学校の運営方針の変更などを求めて授業ボイコットやストライキを行う。チーウェイは拠点であるウェイチンの家に出入りするうちに、ウェイチンに興味を抱いていく。ウェイチンは父への反感もありイークァンと体を交えたりするが、ある日、チーウェイと海に出かけた時、つい口付けをしてしまう。

 

チーウェイは次第にウェイチンに友人以上の感情が湧き上がっていくが、イークァンもまたチーウェイに好意を持っていく。次第にウェイチンの活動はエスカレートし、運動のリーダー的な行動を取るようになるにつけイークァンと争うようになっていく。チーウェイとウェイチンはますます惹かれあい、とうとうベッドで交わってしまう。しかしウェイチンはイークァンに絶対知られないようにしてほしいとチーウェイに頼む。

 

学校側との討論の機会を得た学生たちだが、結局意見がまとまらず、ウェイチンは事務局を占拠する行動に出る。独断的な行動にとうとうイークァンはウェイチンと喧嘩をし、別れることになる。まもなくして、教育副大臣との対話で学校側と折り合いをつけたイークァンは、事務局占拠を解き、資料を引き上げるためにウェイチンの家にやってくるが、その頃はウェイチンとチーウェイは一緒に暮らしていた。イークァンはウェイチンの部屋で、チーウェイが描いたウェイチンとチーウェイの抱き合うスケッチを見てしまう。ウェイチンとチーウェイははっきりとお互い恋人同士になり、二人で手に手をとって出かけるところで映画は終わる。

 

青春映画といえばそうなのだが、学生運動にも力の入った演出がなされているために、どっちつかずの仕上がりになったように思います。台湾の近代史を語りたいという意図も強いために、まとまりのない映画になったのかなと思える一本でした。