くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「青春群像」(4Kリマスター版)「マーティン・エデン」

「青春群像」

なるほどと言えるいい映画ですね。めくるめく様な夢見心地にさせられる青春ストーリー。ラストのベッドの場面が交錯するシーン、バッチリ決まった見事な画面の構図に引き込まれてしまいます。監督はフェデリコ・フェリーニ

 

海辺の街で、ミス人魚姫コンテストで、サンドラが優勝する場面に映画は始まる。しかし、サンドラはその場で気を失い、妊娠していることがわかる。相手はサンドラの兄モラルドの友人ファウスト。二人は結婚し新婚旅行へ。しかし根っからの女好きのファウストは戻ってきてもことあるごとに、身近な女に色目を使う。そんな夫の姿に悲しむサンドラ。一方、モラルドはファウストと行動を共にしながら、この街で暮らし続けることに疑問を抱いている。駅で知り合った少年の駅員と意気投合したりする。

 

戯曲を書いているレオポルドは何かチャンスを掴もうと必死になっている。姉が不倫をしている場面を見かけたアルベルトはなんとか姉を守ろうとするが、姉のオルガは街を出てしまう。歌だけの取り柄のリカルドはファウストらと何をするでもなく過ごしている。

 

映画は彼らのひと時の青春ドラマを描いていくが、ファウストの女遊びを中心にした展開となっている。所々の画面の構図が実に美しい上に、夜の街並みの捉え方など何とも言えない。

 

我慢の限界に来たサンドラは赤ん坊を連れて姿を眩まし、ファウストは自身の行動に目を覚まし、必死でサンドラを探しようやく発見し自宅に連れ帰る。ある朝、モラルドは一人汽車に乗る。彼を見送るのは少年の駅員のみ。モラルドが列車でさっていくバックに、ファウストら友人たちがベッドで眠るカットが、まるで夢の様に挿入される。このエンディングは素晴らしい。

 

前半のパーティシーンはまさにフェリーニの映像世界で、ピエロの像が現れたり、サーカスのカーニバルの如し。流石に優れた一本を堪能できました。

 

 

「マーティン・エデン」

自伝的な小説を原作としているとは言え、圧倒的な人物描写の脚本に驚愕する。さらに主人公を演じたルカ・マリネッリの演技力にも拍手せざるを得ない。さらに、独特のカメラの構図が実に美しく独創的で、フラッシュバックで描かれる過去の場面は今時かもしれないが時に心象風景を描くために使うという映像演出も上手い。映画としてあまりに完成されているためにしんどいと言えなくもないがどんどん映像に引き込まれていきました。監督はピエトロ・マルチェッロ。

 

貧民街で生まれ幼い頃から食べるために船乗りになっていた主人公マーティンは、ある港で一人の若者を助ける。そしてお礼に食事に招待されたが行ったところは裕福な名家だった。マーティンはそこで美しいエレナと知り合い恋に落ちる。さらに、そこで知識に目覚めたマーティンは、作家を目指す様になるが、小学校レベルの教育しか受けていないマーティンにはさまざまなハードルが待ち受けていた。

 

出版社へ原稿を送れども返送されるばかりのマーティンは、次第にエレナとの仲もギクシャクし始め、姉夫婦のところで暮らしていたマーティンはとうとうその家を追い出されてしまう。路頭に迷い乗った列車でマリアとその子供達の家族と知り合い、そこで暮らす様になる。しかし、送る原稿は相変わらずで、そんな時、エレナに招かれたパーティでブリスという出版社の老人と知り合う。そして彼の影響もあり、過激で底辺の人物を描くマーティンの短編がとうとう雑誌に採用される。

 

次第に認められ始めるマーティンだが、思想的に社会主義化しているかの偏見を持たれる様になる。エレナとの関係は完全に断たれ、マーティンはマルゲリータという女性と知り合い行動を共にする様になる。次第に作家としても成功していくが、ブリスは兼ねてからの病状が悪化し、とうとう自殺して死んでしまう。

 

作家として成功を収めていくマーティンだが、何処かにエレナへの想いが立ちきれず、一方のエレナもマーティンへの想いが消えていなかった。マーティンはアメリカに行くことになり、その旅支度を進める頃、エレナが訪ねてくる。しかし、マーティンは彼女を受け入れることなく追い返してしまう。窓からエレナの去る姿を見ていたマーティンは、路上を歩く一人の青年に気がつく。それはかつてのマーティンの姿だった。

 

マーティンはその幻を追って、浜辺まで来る。戦争が始まったという声が聞こえる。夕日が沈んでいく海に向かってマーティンは沖に向かって泳いでいき映画は終わる。

 

海を見つめるマーティンのカットにエレナが喪服を着て立つカットが入っていたり、電線を左に右手に汽車が抜けていく構図など非常に独創的なシーンも多々見られ、さらにルカ・マリネッリの抜群の演技力が際立つので、映画が本当に深みのあるリアリティを生み出してきます。相当な作品に出会った感じです。ただ、クライマックス、いきなり成功した彼の周りに集まる脇役の描写がそれまであまりされていずにいきなり登場した様に見えるのがちょっと残念。でもいい映画でした。