くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「DOGMAN ドッグマン」「PLAY!勝つとか負けるとかは、どーでもよくて」

「DOGMANドッグマン」

なかなか深みのある人間ドラマだった。B級ホラーアクションかと思いきや主人公のキャラクターが単純なサイコ野郎ではなくて、なるべくしてなってしまった深みのある存在感で、その描写がドラマを大きく膨らませている。さらに神の存在にも言及し、周囲に張り巡らせた犬の存在が限りなく作品を盛り上げているのが見事。素直にラストは感動してしまいました。良い映画だった。監督はリュック・ベッソン。まだまだ才能は健在でした。

 

深夜の検問所、一台のトラックが近づいてくる。警官が運転席を開けると、中にマリリン・モンロー風の女装をした男性が乗っていて、さりげなくタバコに火をつける。この煙草が実に上手い。荷台にはたくさんの犬が乗っている。夫のDVから逃れ母と幼い子供と暮らしている精神科医のエヴリンの所に電話が入る。緊急で留置所で被疑者にあってほしいという。子供を母に預け、エヴリンが留置所へ出向くと一人の女装した男性がいた。煙草を燻らせながら真摯に向き合ってくるその男性は、名前をダグラスだと言う。そして、エヴリンにこれまでの経緯を話し始める。

 

コンウェイ高校の廃墟となった校舎、一人の青年ホアンが奥の部屋にやって来て、そこにいるドッグマンことダグラスに捨て犬を届ける。ダグラスは見返りに何か役にたってやろうと言うのでホアンは恋人のマーサがこの地域のヤクザで死刑執行人の異名のエル・ヴェルドに見返り料を急かされ困っていると言う。ダグラスは引き受けたと言う。場面が変わると、エル・ヴェルドのところに数匹の犬がやって来て、一匹のドーベルマンがエル・ヴェルドの股間に噛み付く。もう一匹が電話を渡し、その電話を通じてダグラスはマーサに近づかないようにと告げる。

 

ダグラスはエヴリンの前で、何故こう言う仕事をするようになったかを話しはじめた。少年時代のダグラス、父は闘犬で生計を立てていていつも家では暴力を振るい、母やダグラスは苦しめられていた。歳の離れた兄は何かにつけ父の味方をして、ダグラスを貶めていた。ある日、家族より犬の方が大切だといったことから、ダグラスは犬舎に閉じ込められ、そこで生活するようになる。そんな姿を見た母は家を出てしまう。ある時、ダグラスは父が向けたショットガンに撃たれ指を飛ばされた挙句跳ね返った銃弾で脊髄を損傷してしまう。兄は慌てて父を家に隠したが、ダグラスは犬たちを使って警察を呼ぶ。この頃にはダグラスは犬を手なづけ、なんでも言うことを聞くように訓練していた。

 

ダグラスは施設に入れられ、そこで、演劇を教えに来ていた女性サルマにシェークスピアなどの演劇や歌、さらに化粧の仕方を教えてもらう。父は逮捕された先で自殺、兄は八年後に出所してくるが、ダグラスが差し向けた犬によって殺されてしまう。ダグラスはドッグシェルターを管理して生活するようになる。サルマは施設を出て劇団に入りやがて大舞台に立てるまでになって、ダグラスは応援に赴くが、すでに彼女は結婚していた。

 

ショックからシェルターに戻って来たダグラスだが、予算不足からシェルターが閉鎖になることが決まる。ダグラスは立退の日の前にシェルターから犬を逃しコンウェイ高校の廃墟跡に移り住んだ。仕事を探したもなかなか決まらず、やっと場末のクラブで歌手としてデビューする。脊髄を痛めているため一曲ぐらいしか立っていられずすぐに車椅子に座ってしまうのだが、この歌唱シーンが圧巻である。医師からは、銃弾を完全に取ると脊髄が漏れて死んでしまうから、体内に残したままだから、激しく動くなと言われていた。

 

ダグラスは週一回のステージに立つ一方、犬の欲しい人への仲介や、犬を使っての警護、さらに犬を使って富豪たちから宝石などを盗んだりするようになる。ところがある大富豪の家に盗みに入った際、保険の調査員アッカーマンが防犯カメラから犬の存在を見つける。そして関連の事件のビデオから、車椅子に乗る男が犯人だと特定し、ダグラスのステージを見にやってくる。その帰り、アッカーマンはダグラスをつけて、コンウェイ高校のダグラスの家を発見、銃を持って中に入り、ダグラスが盗んだ宝石を奪おうとする。しかし、すんでのところで犬たちに襲われ殺される。

 

そんなある時、エル・ヴェルドとその手下たちが、ホアンを脅してダグラスのアジトを見つけ乗り込んでくる。ダグラスは訓練していた犬たちを使って反撃し返り討ちにしてしまう。こうしてダグラスは逮捕されるまでに及ぶ経緯をエヴリンに話し終える。エヴリンは聴取を終え自宅に戻る。

 

留置所の外には犬たちが集まっていた。そして受付の警官を巧みに驚かせて鍵を奪った犬はダグラスを助け出す。エヴリンに頼んで持って来てもらっていた正装を着たダグラスは車椅子で留置所の外に出る。外はすでに夜が明けていた。必死で立ち上がり、向かいの教会へ向かうダグラス、教会の十字架の影の中でやがて脊髄が漏れ出したダグラスは十字架に包まれるように倒れて死んでしまう。エヴリンの家の窓の下には一匹のドーベルマンがダグラスの死を知らせるかのように佇んでいた。こうして映画は終わる。

 

ダグラスが時々吸う細い煙草が実に上手いし、ゴッドファーザー愛のテーマやエディットピアフの名曲などを流す音楽センスも上手い。アクションシーンも終盤に向かって盛り上がりを見せるし、語り続けるこれまでのダグラスの人生の姿が映画にさらに深みを生み出していく。物語の構成のうまさ、テンポの組み立ての秀逸さ、小道具の使い方など堂にいっている。なかなかのクオリティの佳作だった。

 

「PLAY!勝つとか負けるとかは、どーでもよくて」

B級レベルのたわいない青春映画なのですが、一生懸命作っている感満載なのと、ちょっと変わった脚本が瑞々しくて楽しい映画だった。出来の良し悪しはともかくこう言う未完成でも真面目に作った映画は大好きです。監督は古厩智之

 

徳島、eスポーツゲームロケットリーグに夢中の高専生達郎は、今日もゲームにのめり込んでいるが今一歩で、ライバルに負けて悔しい思いをしている。そんな彼はたまたまロケットリーグの高校生大会のネット広告を目にする。応募しようとしたがメンバーが三人必要だった。早速募集のビラを作り学校に貼る一方で、近くの席でいつもゲームをしている亘に声をかける。

 

募集ビラで申し込んできた翔太と無理やり参加させた亘を交えて達郎は大会に応募する。翔太は金髪でピアスを開けてみたりしている。彼に気がある紗良は必死でアプローチするが翔太はなかなか受け入れてくれない。家庭は裕福だがVtuberと会話ばかりしている亘は、なかなかゲームに気持ちが向かない。達郎の父は飲んだくれらしく、母が一人で頑張っている。翔太の家庭は夫婦仲が悪く、弟達は寂しい思いをしている。この辺りの家庭背景の描写が実に弱いので映画が薄っぺらくなっているものの、かえって暗い部分が希薄になって、eスポーツ場面の爽やかさが全面に出たのは良かった。

 

やがて地元の予選大会が始まる。最初は乗り気でなかった亘は途中から本気になり、元々ゲームの才能があったのもあって、達郎らの足を引っ張ることはなかった。初心者ながら必死で練習して来た真面目な翔太の活躍もあり予選は優勝して東京へ行くことになる。

 

先生に引率してもらい三人は東京で決勝戦に臨むが、準決勝で敗退してしまう。しかし、三人はこの後は素直に遊ぼうとわりきってゲーム大会の行方を応援する。紗良は別の男性と付き合うことにしたと翔太に告げ、翔太の両親は東京へ旅立つ前に離婚、達郎は、バスケットボールをしていた頃の古傷が痛む。亘は、Vtuberだけでなく本当の友達を手に入れる。こうして映画は終わる。

 

それほど出来のいい映画ではないのだけれど、真面目に作っている気持ちが伝わってくる爽やかな青春映画でした。見て損のない一本だった気がします。