くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「狂った野獣」「制覇」(中島貞夫監督版)「実録外伝 大阪電撃作戦」

狂った野獣

やりたい放題にメチャクチャな映画ではあるけれど、短い時間に娯楽を詰め込んだバイタリティあふれる展開はストレートに面白い。次々と車を壊し、これでもかというほど馬鹿馬鹿しいギャグを詰め込み、ヤケクソに突っ走る様が痛快そのものの映画だった。監督は中島貞夫

 

京都、一台のバスが通り過ぎる。一番奥の席にスーツを着たダンディな男速水が座って新聞を読んでいる。大阪で宝石泥棒が発生して八千万近い被害が出たというニュースが聞こえる。実は速水こそ宝石泥棒だった。銀行強盗をしたものの逃げる途中で金を捨てて、失敗した挙句、通りかかったバスに飛び込んだ二人の男谷村と桐野。二人はバスを乗っ取って逃げようとして映画は始まる。

 

あとはバスの中に居合わせたちんどん屋や不倫の教師と生徒の母、老人、子供たち、大阪のオバハンらが好き放題に大騒ぎし始める。子供たちの親は顔にパックをしたままパトカーで追いかけ、それぞれの乗客の過去がフラッシュバックされて物語が展開する。

 

速水はテストドライバーだったが目が悪くなり事故を起こして会社をクビになる。そこで恋人岩崎と宝石泥棒をして逃げる途中である。バスを追いかける白バイ、捜査本部の刑事、それらの人たちがこれでもかとドタバタ劇を繰り広げていく。しかもバスの運転手は心筋梗塞の疑いがあるのに無理やり乗っていたので途中で亡くなってしまう。

 

速水がハンドルを代わりバスは疾走、桐野たちに指示しながら警察を振り切ろうと暴走する。そしてとうとう横転するが、速水は機転を効かせてヘリを呼び、乗客代表のふりをして桐野たちと脱出するが、警察の罠にかかり桐野と谷村は銃殺される。速水は乗客に、散らばった宝石を片付けさせてケースを持って逃げるが、実は乗客が宝石をネコババしていた。速水と岩崎は空のケースを捨てて、川を延々と泳いでいって映画は終わる。

 

なんとも言えないドタバタ劇で、呆れ返るほどに騒々しいが、シンプルそのもののエンタメ感満載の作りがとにかく楽しい。そんな一本だった。

 

「制覇」

もっと雑なヤクザ映画かと思っていたら、思いの外人間ドラマとしてしっかりしていて、ぐいぐいと引き込まれてラストシーンは胸が熱くなってしまいました。広域暴力団山口組をモチーフに、明らかに「ゴッドファーザー」を意識した作りになっていますが、今はなき古き日本の家族のドラマを見せられた感がたまらなくノスタルジーに浸れるし、とにかく映画として丁寧に描かれていたと思います。監督は中島貞夫

 

ナイトクラブで、谷口組を全国組織にしたカリスマ的指導者田所政雄に、若いチンピラが踊り込んで銃で撃つところから映画は幕を開ける。警察も谷口組も犯人を追う中、若い頃から田所の家で世話になっている若衆野口は躍起になって犯人を探すが見つからない。そんな中、チンピラ組織の近江という男が犯人だと判明、まもなくして潜伏していた近江は惨殺されてしまう。

 

谷口組の組織内では若頭河上と補佐の権野との間に食い違いが生まれ始める。戦後間も無く田所に拾われて育てられた河上、時の流れにおいて行かれた古きヤクザもの権野を守ってきた田所との恩義の関係の中、二人は食い違いながらも谷口組のためにそして田所のために身を挺して尽くしていく。田所は旧友で大学病院の医師大友に命を救われるが、谷口組の中の幹部達は次第に小競り合いを生むようになってきた。

 

田所の家では、妻のひろ子を中心に、子供たちはそれぞれの生活をしていたが、谷口組の親分の家族という肩書きがついてまわり、何かにつけて、マスコミや警察から目をつけられてしまう日々だった。映画は、谷口組の中の権力争いを描く一方で、田所家の家族の物語を並行して描いていく。そして、田所の周辺のその他の様々な人物のドラマをスパイスにしながら、組織の安定のために河上が二年ほどの刑務所へ行くことになった間に、心臓病が悪化した田所は亡くなってしまう。

 

ひろ子は、幹部たちの前で、田所の言葉を伝える。後目は河上に譲るというものだったが、まもなくして、元々腎臓が悪かった河上は獄中で死亡してしまう。ひろ子は、その知らせを聞いて刑務所へ向かうべく支度をしている姿で映画は幕を閉じる。

 

志茂田景樹の原作がそこそこいいのかもしれないが、非常に丁寧な描写と人間ドラマがハイテンポで描かれていく様が、オールスターキャストの豪華さと相まってエンタメ性とドラマ性をうまくコラボした仕上がりになっています。一級品とまでは行かないまでも、そこそこの出来栄えの大作だった感じでした。

 

「実録外伝 大阪電撃作戦」

昭和三十五年に大阪で起こった抗争事件をもとにしたフィクションですが、とにかくバイタリティあふれる映像が展開するので退屈しない。映画の出来の良し悪しよりも、今ではほとんど作られないヤクザもの同士の抗争とエロを交えたエンタメ性を楽しむ作品でした。監督は中島貞夫

 

場末の賭博ボクシング場、大阪南原組の高山と大阪双竜会の安田はそれぞれの選手を応援しているが、結局リング場で乱闘になり収拾がつかないまま終わってしまう。南原組の宮武はその場を収めるが、そこに大東組の大東が、この場所を買ったから出て行けとやってくる。大東は神戸川田組の幹部山地と親しくなり、川田組の大阪進出に手を差し伸べようとしていた。高山は南原組組長の思惑を無視して勝手に山地を襲ったため、南原は山地に詫びを入れざるを得なくなり、高山を破門にする。

 

そんな高山に安田が近づいてきて双竜会に入ることを勧める。そして二人で山地を殺そうと計画する。ある時、安田がたまたまナイトクラブで飲んでいて、入ってきたヤクザものにいちゃもんをつける。ところがそのヤクザものが川田組の組長だった事から、川田組と双竜会の関係が悪化、組長に絡まれた事から山地はけじめのために双竜会幹部、さらに安田と高山を殺すべく関係組員を集めて大規模な捜索が始まる。

 

まもなくして双竜会の幹部二人は捕まってしまい、川田組に組されることになる。まもなくして安田と高山も発見され、山地らに殺されてしまう。川田組はこの構想で大勢の幹部が逮捕され、多額の資金が出てしまうという痛手を被って映画は終わる。

 

とにかく全編ヤクザ抗争の殺し合いの連続で、それでもしっかりストーリーテリングはできているから見事なものである。職人監督の作った娯楽映画という感じの一本でした。