くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「FUNNY BUNNY」ファニーバニー

「FUNNY BUNNY」

元が舞台劇なので、展開や間の取り方が舞台劇調になっている感が最後まで抜けきれなかったのは残念ですが、全体のお話としては面白かった。もっと切なくてラストで泣くべき物語なのに、出演者は泣いているが観客はそれに合わせられない感じの演出で締めくくったのは意図したものかどうかわかりませんが、この監督の作品としては中の下くらいの仕上がりでした。監督は飯塚健

 

二人の若者剣持と漆原がタクシーに乗り込みところから映画は始まる。公立図書館へ行ってほしいという依頼に、ものすごい勢いでタクシーを走らせる運転手西門、そのどこか自暴自棄な姿に説教を始める剣持の場面、そして公立図書館に着いて、うさぎの頭を被って降りる二人を運転手が見送る。二人は閉館間近に図書館へ駆け込み、受付の男女を拘束して、本棚に押し込め、何やら、誰も借りれない本を探し始める。

 

場面が一時間ほど前に戻って、漆原と剣持は各日に二十四時間営業する中華飯店のカウンターにいる。そして剣持は学生時代の友人田所の話を始める。場面は校舎の屋上、剣持と田所が話している。田所は最近筋トレを始め、鉄アレイも買ったのだという。そんな田所にバカな会話をする剣持、しかし、実は田所はいじめられていた。剣持は全然気が付かなかったが、ある時田所はいじめっ子らと喧嘩をして、殴られた拍子に死んでしまう。いじめっ子の主犯らは少年院に送られたのだという。

 

一方図書館、拘束された図書館員はたまたま隠れていた利用者に助けられる。三人は新見、遠藤、服部と言った。剣持らは逆に服部らに詰め寄られ、剣持がことの次第を話す。絶対借りられない本に隠された田所の宝、それはおそらく鉄アレイだと判断し、五人でその本を探し始める。そして、夜も明けようとする頃、一冊の本から鉄アレイを発見する。剣持は、この日少年院から出所してくるはずの田所を殺したいじめっ子の主犯に復讐するつもりだった。しかし、そんな剣持を漆原は必死で説得してやめさせる。この辺りの展開が、あまりに舞台劇すぎたのは実に残念です。

 

そして、説得された剣持と後の四人は夜明けの中華飯店へいく。そして時は四年が経つ。この日、剣持を待つ四人は中華飯店にいた。実は剣持は駅のホームで一人の青年が飛び込むのを助けた。彼の名前は菊池と言って、デビュー作だけヒットしたミュージックグループのボーカルだった。菊池は実は服部の知り合いで、という舞台劇らしいノリがカウンターで繰り返される中、剣持は菊池を連れてくる。

 

やがて剣持ら五人と菊池は、冒頭のタクシーに乗って電波ジャックするためにラジオ局へ向かう。そして菊池らのグループの切ない過去が語られていく。菊池らは四人でミュージシャンとしてデビューを夢見ていたが、デビュー間近の時、ボーカルの藤井が交通事故で死んだのだ。ラジオ局についた剣持らは全員ウサギの被り物をして局に突入するが、そこにいたのはかつての菊池のグループのメンバーだった。この後半部分が前半に比べてバイタリティに欠けているので、入り込めない。舞台劇ならこういう力の配分もありなのですが映像だと一つにまとめた方が良かったのではと思います。

 

そしてスタジオに入り、菊池は歌い始めるが、何故か藤井の声が聞こえ始める。絶唱する菊池をミキサー室で見つめる剣持らに涙が溢れていくる。映画はここで物語を締めくくり、中華飯店前でタクシーを待つ剣持と漆原が、来たタクシーに公立図書館までと告げて暗転エンディングとなる。

 

会話の応酬、セリフの間合い、エピソードの流れがいかにも舞台劇調なのですが、それを映像として面白く仕上げられたらよかったけれど映像のリズムに乗せきれず、切ない二つの話の重なりも描ききれなかった感じです。よくセリフを聞いていると、二つのエピソードの共通点が心に訴えかけてくるはずなのですが、そこの部分を軽く流した結果になったのが残念。おそらく舞台で見たら、物凄くいいんじゃないかと思います。