「瀬降り物語」
とにかくカメラが抜群に美しい。山々の自然を的確に捉えた色彩と景色にまず引き込まれてしまいます。そして、今はなき山の民サンカの姿と村人達のドラマを丁寧に描いた物語も見事。いい映画を見た感のあるなかなかの秀作だった。監督は中島貞夫。
美しい山々の景色を丁寧に捉えたカメラから、山の民サンカ=群子の親分と言われるヤゾーの一と息子の太が亀蔵とクニが暮らす川原の瀬降りを訪れるところから映画は幕を開ける。カズオとハナの婚礼の儀式の仲立ちするためだった。ヤゾーは一年前に妻を亡くしていて、クニは娘のヒデを仕切に勧めていた。冬が来て春が来る頃に、高齢だった亀蔵が亡くなる。直後、クニは出産をするが死産だった。実はクニはヤゾーに恋していた。先の夫の子が生まれて十五年は新しい夫を迎えられないという掟に縛られないように殺したのではないかとヒデは疑う。
時は戦時へ向かって国家総動員法が制定されることになる。そんな時、カズオとハナが、村の巡査に窃盗で捕まる事件があった。巡査は戸籍もないカズオを拘束するがハナが身を張って助け出し、その際怪我を負ってしまう。なんとか瀬降りに戻ってきた二人をヤゾーは逃すことを決意し、山の奥深くへ連れて行く。
ある時、いつものようにヒデは村に箕を届けに行き、たまたま村に戻っていたジローと出会う。ジローは都会で芸人の付き人をしていたがうだつが上がらず、村に徴兵のために戻ってきたが、都会では成功したかのように嘘をついて、アコーデオンを演奏したり歌を歌ったり、さらにヒデにハーモニカを教えたりする。そんなジローに外の世界を知らないヒデは惹かれていく。一方、ジローも自分の言うことを素直に信じるヒデの純粋な心に惹かれて、とうとう体を合わせてしまう。ヒデはジローに嫁にしてくれと念を押す。しかし山の民と村人がねんごろになることは掟で許されていなかった。
ヒデのことを知ったクニは罵倒し、ヤゾーは掟に則ってヒデを首だけ出して土に埋める。クニは太を伴って村に行き、ジローに、クニを嫁にしてもらうように念を押すが、ジローの義姉は断固として反対し、ジローも逆らえず、徴兵検査を口実にクニを追い返す。一旦は太と瀬降りを目指したクニだが、太を先に帰して村に引き返す。この夜、村は祭だった。そこへ乗り込んだクニは再度ジローに迫るが義姉は村人達を煽ってクニを追い詰める。自暴自棄になってクニは暴れ、瀬降りへ逃げる。義姉は村人達とクニを追いかけ、河原でクニをなぶり殺しにしてしまう。駆けつけたジローの叫びで村人は我に帰って村に帰るもクニは死んでいた。
太はヤゾーに、クニが村に行った旨を話し、ヤゾーは河原で死体となったクニを見つけて瀬降りに戻る。そして、刀を磨き、徴兵検査に行くジローを待ち伏せするが、ジローは検査に行かず、瀬降りへ向かう。そして、埋められたヒデをみつけた助け出す、そこへ、ヤゾーがやってくる。ジローはヒデと一緒になるなら命懸けで守るというので、ヤゾーは刀でジローの片目をつぶす。そして、ヤゾー親子とジロー、ヒデは一緒に山の民となることにし、山を登って行き映画は終わる。
戦前のまだまだ古の民達が生活していた時代を、伝奇的な物語として描いた作品で、カメラが美しい上に、クライマックス、クニが村人達に追い詰められるくだりに祭りの太鼓の場面が交錯するなど、非常にクオリティの高い演出が施されています。ヤゾーの存在感も相まって、時の流れ人の考え方の変化をヒデの存在で描写しながらも、男と女の情念を醸し出していく展開も見事。なかなかの秀作でした。
荒削りなストーリー展開で突っ走る犯罪アクション映画という感じで、なんの理屈もなく、ーあれよあれよと前に進む物語が、潔くて面白い一本でした。監督は中島貞夫。
何やら穴を掘る男片桐次郎、彼は殺し屋の片棒を担いで、殺し屋三人が殺す男の埋める穴を掘っていた。そこに車にターゲットの男とその情婦を乗せたいかにも殺し屋らしい三人、本郷、早川、石松がやってくる。三人が殺す相手と争っている際、次郎のそばに、殺し屋が請け負った五百万の金の入った紙袋を落としてしまう。それを手にした次郎は、最初から三人に殺される計画だったことを知り、車で逃げてしまう。
ここに、いかがわしい行為の場を与えて稼いでいるスナックのママ聖子は、マスターの抱かれる日々に辟易としていた。そして店の金を鷲掴みにした聖子は店を出て外に止めてあった車を盗んで走り出す。ところが金を持って逃げてきた次郎の車と衝突してしまう。次郎は車の女聖子が訳ありだと見破り、一緒に乗せて二人で次郎の故郷丹後を目指すことにする。三人の殺し屋は次郎の後を追い始める。
ところが次郎は途中で持っていた金をばら撒いてしまい無くしてしまう。聖子は猟をしている男をまんまと騙して銃を奪い、その銃で闇賭博場を襲って一千万の金を手にれる。丹後には次郎の妹がいて、職場の金を横領してその金を補填しないといけないと言う妹からの手紙を次郎は受け、犯罪に手を染めたのだった。一方、次郎を追いかけてきた殺し屋三人は、次郎が妹のところへ向かうと推測して妹と待ち伏せする。実は妹は恋人に貢ぐために金が欲しかっただけだった。
次郎は妹に連絡をし、外れの小屋で待ち合わせることにする。そして聖子を待たせて次郎は一人で妹と待ち合わせの場所に行く。そこで次郎は待ち伏せていた殺し屋達と諍いになり、その争いで殴り倒される。異変に気づいた聖子が猟銃を持って駆けつけ、殺し屋を追い払うが。次郎は瀕死の重症だった。さらに警察が駆けつけ、聖子達は包囲される。次郎は殴られて苦しいから殺してほしいと聖子に頼み、聖子は次郎を撃ち殺してやる。次郎の妹は被害者のふりをして警察に投降する。一人残された聖子は警察と銃撃戦の末、狙撃手に殺されて映画は終わる。
とにかくあれよあれよと展開していく雑なストーリーですが、何も考えずに楽しむことができる一本で、気楽なエンタメ作品という感じでした。
「女帝 春日局」
主演の十朱幸代が若干役不足で、春日局のしたたかさと芯の強さ今一つ伝わってこないのは残念でしたが、物語としては楽しめるサスペンス時代劇でした。監督は中島貞夫。
1600年、関ヶ原の戦いで徳川方が勝利したところから映画は幕を開ける。豊臣方で裏切った小早川の陣営の稲葉正成も家康に接見していた。正成の妻おふくは、正成の仕官を頼むために単身家康の元を訪れる。好色で女好きの家康はおふくに惹かれ、湯殿で一夜を共にしてしまう。まもなくしておふくは妊娠するが、正成はすでに女を抱くことはできず、おふくは家康の種だと確信する。おふくは正成の不貞の場を見るにつけ、そして自身のお腹の子が家康の子であると告白するにつけ、正成の元をさることを決意し、四人の子供と召使のおつめとともに江戸へ向かう。
江戸城では、二代目将軍秀忠の正室が身籠り、その乳母を探していた。そこへ生まれたばかりの赤ん坊を抱いたおふくは乳母として申し出る。まもなくして正室は出産するが男の子の死産だった。死産に乳を飲ませよという大姥の申し出を一旦決めていた乳母が拒否してしまい、民部卿は反対したものの、最後の最後に大姥の推しでおふくは乳母として選ばれる。しかもその際、大姥と民部卿はおふくの末の赤ん坊を正室の子供として生まれたことにしてしまう。そして竹千代と命名される。
やがて四歳になった竹千代はおふくのもとで健やかに育つが、秀忠の正室が再び妊娠し、男の子を出産、国松と名付けられる。当然、薄々陰謀を知っていた正室の竹千代への憎しみは強くなり、毒殺しようとするが、すんでのところで毒見をしていたおふくの長男の機転で竹千代が助かり長男は死んでしまう。おふくは、何があっても竹千代を将軍の職につけるべく意を決する。
そんな時、駿府の家康が重病で倒れたという連絡が入り、民部卿や大姥は国松を正式な後目にするべく、竹千代とおふくを排除しようと動き始める。しかし、おふくは抵抗し、奪われそうになった竹千代はおつめが連れ出して駿府へ向かう。その争いの中でおつめは大姥を刺し殺してしまう。
家康の病が仮病らしいとおふくに言われた民部卿は単身家康の元へ行くが会わせてもらえず、身を挺して家康に訴えた後自害してしまう。家康は自身江戸城へ赴き、竹千代は自分の種かどうかおふくに詰め寄るが、おふくは頑として家忠の子供であると言い、家康はついに折れて次の将軍は竹千代だと重臣達の前で公言する。竹千代は三代将軍家光となり、おふくは春日局となって、大奥を作ったというナレーションで映画は終わる。
素直に、サスペンスエンターテイメントとして楽しめる一本で、実に面白いのだが、十朱幸代他脇役に至るまで若干役者が弱いために、歴史サスペンスの壮大さ、奥深さが物足りないのは少し残念でした。でも面白い映画でした。