くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「スリープ」「WALK UP」「青春がいっぱい」

「スリープ」

雑な脚本と芸のない演出、キレのない展開で、なんとも退屈はホラー映画だった。低予算というのも見えるのだが、面白さというものがどこにも見当たらない。カンヌ映画祭批評家週間招待ということで見にきたが、期待外れすぎた。監督はユ・ジェソン。

 

ベッドで眠る、俳優としてそこそこ評価の高い夫ヒョンスと出産を控えた妻スジンの姿から映画は幕を開ける。突然、ヒョンスが起き上がり、誰か入って来たと言ってまた寝てしまう。ドアが空いていたのでスジンが家の中を見て回るがこれというものもなく朝が来る。階下に越して来た母子から引っ越しの挨拶をされるスジン。階下の女はここ一週間、物音に悩まされたと苦情を言う。

 

ところが次の夜、ヒョンスが顔を掻きむしって血だらけになり、さらに次の夜はヒョンスが深夜に冷蔵庫の生肉や卵を貪り食うのをスジンが目撃、さらにベランダから飛び降りようとするに及んで病院で検査を受ける。そして薬を処方されるも、今一つ回復しない。まもなくしてスジンは出産し、赤ん坊と三人ぐらしになる。

 

ヒョンスが愛犬を殺したことから、危険を感じたスジンは赤ん坊と浴室で一夜を過ごしたり、ヒョンスを拘束したりとエスカレートしていく。スジンの母が連れて来た巫女に見てもらうと、ヒョンスに男の霊がついていると言う。次第にエスカレートしていくスジンに、ヒョンスも恐怖を覚え始める。

 

スジンは階下の女に会いに行き、以前住んでいた老人の話を聞くと、その老人は階下の女の父親で、亡くなったと言う。どうやら、ヒョンスに取り憑いているのはその父親の霊だと判断したスジンは、ベッドに母にもらったお札などを置くと、ヒョンスに異常が見られなかった。

 

行動が極端になったスジンはとうとう精神病院に入院することになる。ヒョンスは、薬の処方を変えてもらうと、症状も改善し、治ったと思ったヒョンスが、この日退院予定のスジンを迎えに行くと、勝手に帰ったと言う。家に戻ると、部屋中お札が貼られていて、スジンは今日中にヒョンスに取り憑いた老人の霊を追い出さないと永遠に鬼神となって取り憑くのだと言い出す。

 

階下の女を拉致し、階下の女が飼っていた犬も殺し、スジンはヒョンスに取り憑いた老人の霊を脅し始める。そして階下の女をドリルで殺しかけると、ついにヒョンスから老人の霊が出ていくと言う声が聞こえる。そして元に戻ったヒョンスとスジンが眠る姿で映画は幕を閉じる。

 

とにかく、荒っぽい展開の脚本で、なんの脈絡もなくクライマックスを迎え、一気にエンディングという適当さは流石にあまりというしかない。映像も怖がらせ方も平坦な上に、ショッキングシーンや巫女の登場などあまりに適当すぎて、ひどいというしかない映画だった。

 

「WALK  UP」

ホン・サンス監督らしい画面構図と、限られた空間で展開するシンプルでどこかシュールでそして時間軸が交錯していく物語はいつもの如くで面白いのですが、一方で若干マンネリ感が見え隠れする作品でした。

 

ヨーロッパのコンパクトカーに乗って映画監督のビョンスとインテリア関係の仕事を目指す娘のジョンスが、インテリアデザイナーで活躍するキムの所有するアパートにやってくるところから映画は幕を開ける。

 

一階がレストラン、二階がソニという女性が主催する料理教室、三階が賃貸住宅、四階が芸術家向けアトリエで、地階はキムの休憩所的な場所だという。三人はワインを飲みながら談笑するが、ビョンスに仕事の連絡が入り、その場を離れる。ビョンスがいつまでも帰ってこないので、ジョンスとキムはすっかり打ち解け、ジョンスはキムの弟子でしばらく働きたいと言い出す。さらに父ビョンスへの不満も口に出す。

 

ビョンスは、このアパートで暮らし、不動産屋の女性ジオンと会ったり、キムからジョンスが突然ここをやめてチェジュ島へいってしまった等の話を聞く。ソニとも恋人同士のつもりだったが、ソニは別の男性を愛し始めていて、結局ビョンスは一人がいいのだと呟いたりする。

 

車をキムの夫に貸していて、その車をアパートの玄関で受け取ったビョンスのところにワインを買って戻って来たソニと出会う。一人タバコを吸いながら、何気なく佇むビョンスの姿で映画は終わる。

 

これという物語があるでもなく、時間の流れも過去から現代へ素直に流れているふうでもなく、どこでどう交錯しているのかじっくり見ていないとわからないところもあるが、個性的な作品という色合いは十分楽しめる映画だった。

 

「青春がいっぱい」

思春期の少女たちが三年間の修道院で巻き起こす騒動をハイテンポなストーリ展開と心地よいリズム感、そしてラストに、心の染み渡る優しいエンディングを用意した名作と呼べる一本、とっても良かった。今はなきスタイルの作品ですが、主人公たちを憎めない上に微笑ましく応援してしまう。そして彼女たちに翻弄される修道院長の心の描写も上手い。いい映画を見ました。監督はアイダ・ルピノ

 

叔父に育てられた孤児のメアリーは、女好きの叔父の厄介払いか、三年間、寄宿性のセント・フランシス・アカデミーに入学するべく列車に乗っている場面から映画は幕を開ける。列車内で意気投合したレイチェルといざ入学したものの、修道院と学校を兼ねた古めかしい建物の学校は何かにつけて規則が厳しく、二人は次々と騒動を起こしては修道院長を悩ませる。

 

地下室で葉巻を吸って火事騒ぎを起こしたり、警察の捜索事件になったり、修道女たちの飲み物に石鹸を入れたり、同級生のいとこの顔に石膏を固めてしまったりと、トラブルのない日がない。クリスマスの休暇が唯一修道院長らの休息の時間になっていきます。修道院長は一時は二人を退学させようかとレイチェルの父とメアリーの叔父を呼ぶものの、結局退学させず、様子を見る決断をする。いつのまにか、メアリーとレイチェルの騒ぎがないと寂しく感じ始めている修道院長でした。

 

実は修道院長は若き日ファッションデザイナーを目指していたのですが、ふとした神との出会いで今の職についたのでした。そんなある日、一人の修道女が心臓麻痺で急死し、修道院長は密かに棺に泣き崩れる姿をメアリーが目撃したり、美しい修道女の一人がハンセン病の蔓延する地で教育に携わるためにここを離れる等のことを知るにつけ、メアリーの心は次第に何かの変化を感じ始めていた。

 

三年が過ぎて卒業の日、修道院長は聖職に就く二人の名前を発表する。その一人がメアリーだと知ったレイチェルは驚くとともに落胆し、メアリーと口を効かなくなる。そして、レイチェルらが旅立つ日、メアリーに別れを言わないレイチェルに修道院長は、メアリーは自身の意思で残ることにしたことを告げる。一度は列車に乗りかけたレイチェルだが、意を決してメアリーの元に走り、これからも手紙を送るからと抱き合い、メアリーを称賛する。列車が出て、メアリーは修道院長に、レイチェルも修道女として戻るかもしれないと言うと、その時は私はここをやめますと修道院長が呟いて映画は終わります。

 

とにかく、小品ながら名作の雰囲気が漂う作品で、次々とメアリーたちが繰り返す悪戯の数々に見ている私たちも翻弄されながら、いつの間にか三年が経って、その間にいつのまにかメアリーや修道院長の心に変化が生まれているのが手に取るように伝わって来て、ラストは胸が熱くなってしまいました。いい映画だった。