くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ある殺人、落ち葉のころに」「ラ・ヴァレ」

「ある殺人、落ち葉のころに」

やろうとしていることはわかるのですが、幼すぎる脚本ゆえか、映像作りに感性がないのか、独りよがりの作品にしか見えず、見ている方に伝わって欲しい何かが見えてこない。物語の錯綜感、シュールに繰り返すインサートカット、一見殺伐とした青春ドラマのような空気感に見えるドラマ、そのどれもがうまく噛み合っていない感じがします。監督は三澤拓哉。

 

和也達4人の学生時代の映像から映画は幕を開ける。そして、彼らは和也の父の土建屋に勤めることになる。何かにつけて恩義を売る和也、彼に頭が上がらない英太、どこかしら奇妙な四人の絆だが、なぜ和也の土建屋の力が彼らに大きくのしかかっているのかわからない。和也らは、会社の資金繰りが苦しいために、不法投棄の仕事を受けざるを得ない状況も描かれるがそこもよく見えない。

 

そんな頃、彼らの恩師で、和也の叔父が事故で死んでしまう。何かが狂い始めたのが葬儀の場面の人々の呟きで描かれるのだが、ただの噂話にしか見えない映像展開。そして、不法投棄の金が入り、倉庫で酒盛りをしようとなるが、英太の彼女沙希がやってきたので、普段は倉庫に女を入れることを嫌う和也が、英太の彼女を認めてやる。たまたま、トイレなどでみな席を外し、和也と沙希が二人きりになり、和也はつい襲ってしまう。

 

しかし、沙希が怒って警察に訴えるというのを周りがなぜか必死で押さえ込もうとする。この町で生きていけなくなるからだというが、どんだけ和也は偉いにかという感じが見えてこない。時折、白いテーブルで手紙らしいものを書くシーンが何度も挿入されるが、この意味が何か最後までわからなかった。

 

そして、なぜか時が経ったのか、和也がスーツ姿になっていて、地下通路でかつてカツアゲをした若者を見つけて声をかけると、和也が瓶で殴られたようなシーンが続き、突然、倉庫でトランプをする冒頭のシーンのような場面に戻って映画は終わっていく。

 

いかにもシュールに作っていますと言わんばかりの場面が散りばめられ、そのわざとらしさが最初から鼻につく作品で、これがこの監督の作風なのかもしれないが、どうも好みの映画ではなかった。前作の方が良かった気がします。

 

「ラ・ヴァレ」

えーなんなんだ?という映画である。何やらニューギニアの奥地へ向かう物語らしいが、結局たどり着いてなんのエンディングも見えないままに突然finの文字が出る。原住民との交流も、冒頭のきっかけもなんの関係も無くなっていく。不思議な作品でした。監督はバーベット・シュローダー。

 

ニューギニア、フランス人のビビアーヌは、現地の珍しい羽を仕入れて商売にするべく仲介人の店を訪れている。しかし、希望していた鳥の羽が入荷されていなくて困っていると、一人の男オリヴィエがやって来て、奥地の探検に行く資金のために幾つかの羽根などを売りにくる。オリヴィエに興味を覚えたビビアーヌは、自分の探している羽を手に入れることができるかもしれない宣教師のところまで、同行することになる。

 

オリヴィエ達が向かうのは、まだ地図にも載っていない前人未到ニューギニアの奥地だった。戻ってこれないかもしれない探検に同行したビビアーヌは、いつのまにかオリヴィエと体を合わせる。ところが目指した宣教師のところでは羽が手に入らず、さらに奥地の呪術師のところまで行くことになる。

 

そして、ぞの呪術師に気に入られたビビアーヌは、羽をもらう。そして、飛行機で戻るためにさらに奥地へ向かう。ところがオリヴィエ達との冒険に惹かれていったビビアーヌは、飛行機で戻ることをやめさらに奥地の谷を目指すことになる。

 

ここからは物語があるというよりドキュメンタリーのように、原住民との交流シーンなどが描かれる。そして、さらに奥地に進んだビビアーヌらは、ついに食料も切れる。もうダメかと思われたところで、何やら美しい谷にたどり着いて、いきなりエンディング。え?なんだったのという映画である。

映画感想「るろうに剣心 最終章The Final」

るろうに剣心 最終章The F inal」

今回はよくまとまりました。ここまでの作品はドラマ部分とアクションシーンが分離されたような構成でドラマ部分が弱かったのですが、今回は程よくこなされて仕上がりました。しかもアクションシーンはさらにグレードアップし、セットも含め映画全体が大作の貫禄を帯びて出来上がりました。ラストもうまくまとめた気がします。難を言えば、まとまりすぎてギラギラ感が薄れたのはちょっと寂しいですがとにかく面白かった。監督は大友啓史。

 

明治12年の東京、列車内にいる上海から来た武器商人を探しに斎藤一らが乗り込むところから映画は始まる。乗っていたのは上海マフィアのトップになったという雪代縁、さすがに少々貫禄に欠けるのが実に残念ですが、続くアクションシーンを考えるとこの配役は仕方ないところでしょう。そして、派手な列車内の殺陣シーンになる。いつものワイヤーワークを使った剣劇が見事。今回も期待通りです。

 

一旦は逮捕された縁だが、何やら釈放される。彼には中国マフィアとの関係などもあるが、目的は姉の仇である剣心を倒すためだった。縁の姉巴は剣心に近づきその懐に飛び込んで倒すためだったが、いつの間にか惹かれてしまい、剣心を狙ってきた刺客と共に剣心に斬り殺された。その時の恨みで縁は剣心を狙っていた。剣心の頬の十字傷がその時にできたものであるという真相も明らかになる。

 

縁は同じく剣心に恨みのある輩を集め、剣心の周辺の人々を狙い始める。物語の本筋は、そういった輩と剣心の周辺の人たちとのバトル、さらに、愛する薫が縁に連れ去られ、剣心は縁のアジトへ乗り込んでいく。そこで、剣心たちと縁の仲間との大乱戦が繰り広げられ、最後は剣心と縁の一騎打ちの末、縁は破れ逮捕される。縁は薫から送ってきた姉巴の日記を読み、自分は剣心に斬り殺されたわけではないことを知る。一方剣心は薫を助け出し、二人で巴の墓参りに行き二人の仲を伝えて二人して手を取って映画は終わっていく。こうして一旦物語を締め括るが、再来月の作品で新たな物語へ展開していくという寸法である。

 

アクションシーンは今更いうまでもなく、さらに立体的にスケールアップしてとにかく面白い。これまでの作品で弱かったドラマシーンもそれなりに今回は措置なく処理されたので、アラが目立たなかったのと、アクションシーンとの配分がそつなく構成されていたので、全体が程よくまとまりました。難を言えば、クライマックス、次々と登場するかつての敵達の扱いを適当に済ませたことで、無理やりオールスター的になり、物語が深みにかけてしまったことでしょうか。あそこはバッサリ切っても良かった気がします。でも海外に通用するチャンバラ映画だと思います。

映画感想「大地の時代」

「大地の時代」

これは素晴らしい映像表現だ!と絶賛したらいいのかもしれないが、正直なんのことか全然わからなかった。まさに奇想天外映画祭の一本である。あちこち撮り溜めた映画を監督の感性だけで繋いだような作品で、一貫した物語も見えないし、カメラがどうのと言うものもないし、いきなり終わるし、ブラジルの歴史やその他を知っていなければ全くわかりません。映画なの!という一本でした。監督はグラウベル・ローシャ、遺作である。

 

ブラジルの夜明けのシーンが延々と映されて映画は幕を開ける。そして、またまた延々としたカーニバルの場面、何やら叫んでいる男がいて、機関銃のように解説のテロップが流れていく。そして、何やら悪徳政治家のような小太りのおっさんがこれまた喚き散らしながら、何やら訴えている。同時に機関銃のようなテロップ。

 

あとはもう何を写しているのか全然わからず、カメラは振り回すし、突然全裸の男が現れるし、これと言う美人でもない女性がそれに絡むし、大都会が映し出され群衆が映し出され、いきなり終わります。二時間半ちかくある作品ですが、何とも言えない映像でした。

映画感想「異邦人」(デジタル復元版)「マンディンゴ」(デジタルリマスター版)

「異邦人」

ほぼ四十年ぶりの再見。圧倒的な迫力に身じろぎもできない。セリフや物語に全く意味がなくただひたすら映像が語りかけてくる、訴えかけてくる。そのリアリズムに叩きのめされてしまいます。マルチェロ・マストロヤンニの演技力なのか、監督のルキノ・ヴィスコンティの演出力なのか、見るものを打ちのめす迫力に圧倒されてしまいました。

 

一人の男ムルソーが判事のところへ連れて来られるところから映画は始まる。そして、物語は約一年前に遡る。アルジェからバスに乗って母が亡くなった施設へ向かうムルソーの姿となる。霊安室に安置された母の遺体の顔を見ようともせず、タバコを吸い時を待つムルソー。そこには感情というものも信仰というものも見当たらない。すでに過去に置き去りにしてきたようである。

 

葬儀を終えて、ムルソーは久しぶりに出会ったマリーと海に行き戯れ、一夜を過ごす。帰ってくると友人のレイモンが、アラブ人の女と別れるきっかけに手紙を書いて欲しいと頼まれる。それからしばらくしてムルソーはマリーと過ごしていると、上の階のレイモンの部屋で騒ぎがあり、警官が駆けつける。どうやらうまく女と別れられたレイモンは、ムルソーに礼を言う。彼はヒモのような生活をしていた。

 

レイモンの誘いでムルソーとマリーは海辺の友人のレストランに行くことになる。レイモンは、女の兄からつけられているとムルソーに話す。案の定、浜辺でアラブ人の若者とムルソーらは喧嘩になる。レイモンが銃を出すので、危ないからとムルソーがあづかる。とりあえずレストランに戻ったが、暑さに朦朧としてくる。そして、戻れずにもう一度海岸へ歩いていくが、そこでアラブ人の青年を見つける。その青年が突然ナイフを出したので、ムルソーは銃で何度も撃って殺してしまう。そのまま、収監され、裁判となる。

 

法廷シーンはひたすら感情的にムルソーを責めていく検事の姿が中心になる。そこにはよくある法廷劇の理路整然とした展開ではなく、ムルソーが母の葬儀で泣くこともなかっただの、葬儀の後マリーと泳ぎに行ったり映画に行っただのを責める。証人に立ったムルソーの友人らは誰もがムルソーを悪く言わないにも関わらず、結局有罪、しかも死刑が確定する。この展開に何かメッセージがあるのだろう。

 

独房で刑の執行に怯えるムルソーだが、宗教に救いを求める気もなく、神父との面会も拒否する。しかし、死には怯え、夜は眠れず昼に眠ることを繰り返す。しかし、ある夜とうとう彼を迎えに死刑執行人がやってくる。映画はここでのムルソーの顔のクローズアップで終わる。

 

何を訴えてくるのかは明確にわからないのだが、ラストのマルチェロ・マストロヤンニの視線に釘付けになって映画を見終わります。圧倒される映像というのはこう言うのを言うのでしょう。しかも、凡人のわたしには具体的な感想を書く言葉さえ浮かびません。すごいの一言の作品でした。

 

マンディンゴ

物凄い映画でした。黒人差別、近親相姦、女性蔑視、言葉にできないほど生易しい表現では語れない見事な映画でした。よくもまあデジタルリマスター化したものだと脱帽します。人生に一見の価値のある一本でした。監督はリチャード・フライシャー

 

マクスウェルの農場、奴隷を育てて人身売買する仕事をしている彼は、この日も奴隷の仲買人にめぼしい奴隷を売っている。中に一人、反抗的な奴隷もいるが、いい値段で売れてしまう。息子のハモンドは足が悪く、そのことで引け目を感じていた。マクスウェルは、奴隷の一人でまだ処女の女を抱かせる。そんなある時、事業が破綻して金に困っている名家の娘ブランチとの結婚話が持ち上がる。明らかに政略結婚で、ブランチの兄フィリップはハモンドと仲が良かった。

 

ハモンドがフィリップのところに行った夜、一人に奴隷の女エレンと知り合う。夜の相手にあてがわれたのだが、他の奴隷と少し違うエレンにハモンドは惚れてしまう。一方で、ハモンドはブランチと結婚することを決める。新婚旅行で、ハモンドはブランチが処女ではないことを知り激怒する。ブランチはフィリップと近親相姦の関係を持ったことがあった。ハモンドは奴隷市場で、かねてから父が望んでいた純血のマンディンゴの奴隷ニードを手に入れることに成功、さらにフィリップの家でエレンを買い取ることにして連れ帰る。

 

ハモンドはブランチから距離を置き、エレンと夜を過ごすようになる。また連れ帰ったニードを育て奴隷同士の格闘などをさせる。ニードは素直な奴隷だったが強かった。また、父の希望でマンディンゴに女性と交わらせ、妊娠させる。白人にとって黒人は獣でしかなかった。

 

やがて、エレンはハモンドとの間で妊娠するが、嫉妬に狂ったブランチはハモンドらが留守の時にエレンを鞭打った上階段から突き落とし流産させる。しかし、ハモンドのブランチへの態度は全く変わらず、しかもますますエレンを大切にしていく。

 

マクスウェルとハモンドが奴隷を売るために出かけた時、ブランチはニードを誘惑して体を合わせる。やがて、ブランチは妊娠、ハモンドらを喜ばせるが、出産した子供は黒人だった。赤ん坊はその場で殺され、ハモンドはブランチに毒を与えて殺す。そして銃を取りニードのところへ行き、ニードに煮えたぎった窯に入るように強制するが、拒否したニードを銃で撃つ。それを見かねた、別の黒人は、ハモンドの銃を奪い、そばにいたマクスウェルを撃ち殺す。ハモンドは、息絶えたマクスウェルのそばで意気消沈し、銃を撃った黒人は彼方に走り去る。こうして映画は終わっていく。

 

物語の展開も見事で面白いが、容赦なく差別行動やセリフが次々出てくる迫力に圧倒されてしまいます。今ではもう二度と企画に上がらないだろう作品だと思いますが、必見の映画だと思いました。

映画感想「水を抱く女」「プラン9・フロム・アウタースペース」

「水を抱く女」

面白い映画なんですけど、もうちょっとラストを綺麗に締めくくっていたら、ひとまわりいい映画に仕上がった感じですね。ほんのわずか監督にセンスが足りなかったという感じでしょうか。監督はクリスティアン・ペッツォルト

 

映画が始まると一組のカップルがカフェテラスにいる。どうやら別れ話らしい。男性の名はヨハネス、女性の名はウンディーネウンディーネは執拗に別れたくないというがどうやらヨハネスには別の女性ができたようである。ウンディーネは「私を捨てたら殺さなくてはならない」という意味ありげな台詞を投げるが、ヨハネスは聞き入れない。仕事が30分で終わるので待っていてくれとウンディーネはその場をさる。ウンディーネは、向かいの施設で都市計画の解説をする活動をしていた。

 

仕事が終わってカフェに戻ったウンディーネだが、そこにヨハネスはいなかった。カフェの中に入ると、そこにある水槽からウンディーネを呼ぶ不気味な声が聞こえてくる。そんな時、さっきの解説に感心したという一人の青年クリストフが彼女に声を掛けてくる。直後、水槽が突然割れ、ガラスと水が二人に被さる。クリストフは、近くの沼に潜ってポンプの修理をする仕事をしていた。ある時、潜って仕事をしていると大きなナマズが近づいて来る。後から映像を確認したら二メートル近くあった。

 

急速に接近したクリストフとウンディーネはみるみる愛し合うようになる。二人で沼に潜った時、沼の底の石の建造物にウンディーネの文字を見つけたクリストフが、一緒にいるはずのウンディーネを探すといない。付近に目を凝らすと、あのナマズが泳いでいて、ウンディーネヒレもポンプも外れて漂っていた。慌てて彼女を助けて、人工呼吸をするクリストフ。

 

ある夜、ウンディーネが一人でベッドに横たわっているとクリストフから電話が入り、二人が会った日、ヨハネスを待っていたのではないかと詰め寄られ、そのまま電話が切れる。嫌な予感がしたウンディーネは、クリストフが仕事をしている沼に行くと、事故がありクリストフは脳死状態で入院していると知る。しかも、ウンディーネに電話が来たときには事故が起こった後で、電話があるはずがないという。ウンディーネは、ヨハネスの家を訪れプールで泳いでいるヨハネスを殺し、自分は沼に沈んでいく。その途端、脳死だったクリストフが目を覚ます。退院後、ウンディーネを探すが見つからない。そして二年が経つ。

 

クリストフには恋人ができ、恋人のお腹には子供も出来ていた。しかし、二年ぶりに沼での仕事の依頼がきたので、潜って作業をしているクリストフの前にウンディーネが現れる。後で映像を見ても映っていない。その夜、恋人が寝たのを確かめたクリストフは沼に潜る。目の前にウンディーネが現れ、一時は沼に誘われるも、クリストフは沖に上がってくる。後を追いかけてきた恋人の声が聞こえる。二人は抱き合う。それを見つめるウンディーネの視線で映画は終わっていく。この終盤の処理がちょっと普通すぎるカメラ演出なのが実に残念。さらに、ヨハネスを殺すくだりももう一工夫欲しかった気がします。面白い映画ですが、あと一歩という感じでした。

 

プラン9・フロム・アウタースペース」

史上最低の駄作と言われるカルトシネマの一本。とにかく、何もかもが適当に展開していくのは「怪物の花嫁」と遜色ない。ストーリーも映像も呆れ返るほどに適当。よくもまあこれで公開したんやと思う一方で、その割り切りと真面目に作っている感満載に脱帽してしまった。監督はエド・ウッド

 

葬儀の場面、妻を亡くした夫の悲しい姿から映画は幕を開ける。その直後、夫は交通事故らしいが死んでしまう。ここに旅客機が飛んでいて、いかにも鍋蓋のUFOが通過する。折しも、墓場では一人の女が蘇り、UFOが通過すると人々が薙ぎ倒される。さらに、事故で死んだ夫も蘇るが、マントを羽織っていかにもドラキュラだ。いやどう見てもドラキュラだ。演じているのはベラ・ルゴシだから仕方ない。やっぱりドラキュラなのです。

 

ハリウッド上空やらに現れたUFO、世間では話題になり、軍が攻撃する。いかにもニュース映像をパクった攻撃シーンが挿入される。そしてUFOはあっさりどこかへ飛び去る。えらく弱い。宇宙に浮かぶ母船の中では、今回の地球への任務がうまくいかないので相談している。どうやら友好的な宇宙人だが、どう見ても普通の人間だ。そして、次の作戦はプラン9だという。それは死者を蘇らせるというもので、すでに二人成功したと報告しているが、いやその程度かい、と突っ込んでしまう。しかも、死者を蘇らせてどうするの?と思うが、なぜかこのプラン9を実行することに。

 

墓地のそばに、冒頭の旅客機の機長の家がある。なんとも都合の良い設定。一方墓地で墓掘りが死んでいるのが発見され警察がやってくる。実は蘇った女ゾンビが行ったのだが、意味がよくわからない。そして警部も襲われて死んでしまう。なぜかすぐに葬儀が行われ埋められるが、宇宙人によって蘇る。これがまた大男なので「怪物の花嫁」と設定が同じになる。しかも、「怪物の花嫁」に出た鈍臭い警官も同じ役名で登場。

 

宇宙船の中では作戦が続いている。警官たちは怪しいと思って墓地の奥の光るものに近づいていく。機長も一緒に加わっている。しかも妻も参加するが、パトカーの中で待っていると大男ゾンビが来て妻を攫う。このシーンは必要だったの?一方宇宙船に突入した刑事と機長は宇宙人に、なぜ来たかの説明を受ける。人類は次々と破壊兵器を作っていてこのままだと太陽さえも破壊して全宇宙が滅ぶのでそれをやめさせるため来たのだという。この理屈がよくわからない。しかも、結局刑事らと乱闘になり、脱出した刑事たちを後にUFOは燃え盛ったまま飛び立ち、それを見つける刑事たちが、いかにもなラストのセルフをしゃべって映画は終わる。

 

適当というより、妙に真面目に作っている感が前面に見えているのがいかにもおかしい。なんの疑問もなく平然とこういう映画を作ったエド・ウッドに拍手したくなるような映画だった。

映画感想「グッドバイ」「怪物の花嫁」「アタック・オブ・ザ・キラートマト」

「グッドバイ」

静かに淡々と進む中編でしたが、短い中にさりげない物語を最小限の描写で見せていく展開は、なかなかの物でした。監督は宮崎彩。

 

主人公桜が、勤め先のエレベーターに乗っている場面から映画は始まる。コピー機の前でたつ彼女のカットから居酒屋で友人と飲む姿。会社を辞めたという。その帰り、友人からの電話で、臨時の保母さんにならないかという誘い。そして、春までの臨時で幼稚園に勤め始める桜。

 

一日の最終で園児を送り出すが、その園児の父新藤に父の面影を見て、いつの間にか慕うようになる。そして、早番で買い物の帰り、新藤に会い、家まで行って夕食を作る。新藤の妻は留守だった。どういう状況かわからないまま、新藤はさりげなく桜にキスをする。そして桜は帰る。

 

母が自宅を手放す予定なので、父が戻ってくるという。単身赴任なのか別居中なのか。ある日、いつものお迎えに新藤の妻がやってくる。どうやら出産の里帰りだったようだ。間も無くして桜も期限が来て幼稚園を辞める。

 

父が荷物の整理に戻ってくる。朝、朝食を作る父の背中に顔を埋める桜。そして徐に背伸びをして父に顔を近づけ映画は終わっていく。さりげない、淡々としたひとときの物語なのですが、至る所にさりげないドラマを忍ばせた作りが見事です。今回中編なのですが、普通の作品が楽しみな監督さんでした。

 

「怪物の花嫁」

しょぼい、置いてあるだけのタコの怪物と、お決まりの大男、いかにもな嵐、そして予想通りラストは火事で締めくくり、さらにキノコ雲とまあ、呆気にとられた。監督はエド・ウッド

 

嵐と雷鳴の中、二人の男が森で迷い、ウイロー屋敷というのにたどり着く。出てきたのは大男のロボ、そして不気味な博士ヴォルノフ。雨宿りを断られた二人は森に行くが、そこで巨大タコ?に襲われる。一人がロボに連れ帰られ、気がつくと屋敷の中の実験台の上。どうやら原子人間という超人を作ろうとしているらしい。博士がスイッチを入れるが、実験は失敗して男は死んでしまう。

 

マシュー湖にいる怪物を調べに新聞記者のジャネットが単身ウイロー屋敷へ向かうが、車が事故を起こし森で立ち往生。ロボが現れ連れ帰る。一方ヴォルノフ博士の親友が訪ねてくるが、親友の故郷へ帰ろうという提案を拒否して、親友をタコの餌食にして殺す。

 

刑事のディックがジャネットを探してウイロー屋敷にたどり着くが、ジャネットは実験台の上にあった。突入したディックはロボに負けて気を失う。博士が実験のスイッチを入れようとすると、ジャネットに恋したロボが博士に逆らい、ジャネットを助けて博士を実験台に乗せる。そして博士は原始人間となる。そこへ警察が駆けつけ、ディックも目覚め、ロボはやられてしまい、森に逃げたヴォルノフ博士は、最後は自分の巨大タコに絡まれた上大爆発を起こす。なんとキノコ雲が上がり映画は終わる。

 

とにかく、展開もセットも、何もかもがしょぼくて、センスのかけらもない映画です。よくもまあこういうのが未だに残っているものだと呆れます。でも楽しい、そんな映画でした。

 

「アタック・オブ・ザ・キラートマト」

小ネタと悪ノリだけで突っ走る、まさにカルト映画の珍品。これというお話もあるのかないのか、主人公もいるのかいないのか、ギャグなのか適当なのか、でもなぜかトマトが襲ってくる。ほんまに呆れる一本。監督はジョン・デ・ベロ。

 

一人の女性が洗い物をしているとシンクの排水溝からトマトが何やらぶつぶつ言いながら出てきて、女性の悲鳴、そして軽快な音楽と共にタイトルが始まる。なんだなんだと思っていると、どうやら各地でトマトが人間を襲う事件が起こっているということで、政府組織が対策を練る。のだが結局、CIAの職員が調査に乗り出し、トマト襲撃をスクープにしようと新聞記者の女性も政府の動きを探りに派遣される。

 

ジョーズのパロディやら、どこかで見たようなミュージカルシーンのパロディやらが挿入される一方で、小ネタを散りばめ、所々にトマトが襲ってくるシーンがあるものの、いかにも適当な作り物のようなトマトが転がってくるだけというしょぼい映像。

 

ただひたすら悲鳴やら、トマトのぶつぶついう声やらを繰り返して、どうやら、スタジアムでトマト退治に成功するのだが、ラストはCIAの職員と新聞記者の女性が意気投合して、大熱唱の末カメラは大きく俯瞰して物語は終わっていく。と、畑のにんじんがむくむく伸びてきて、もうトマトはいなくなったようだとつぶやいてエンディング。コメントできない珍品映画、でもクセになる映画ですね。

映画感想「AVA/エヴァ」

「AVA エヴァ

普通のアクション映画だろうと思って見に行ったのですが、これがなかなかな秀作でした。まず絵作りが美しく、背景に拘った映像が見事、さらに音楽に乗せたテンポづくりがうまい。そして、人物それぞれの描き方が深みがあって脚本が練られているのと、主人公がプロの殺し屋に見えるほど丁寧な描写が行われています。最近で、ここまで細部に手を抜かない映画も珍しいですが、いい作品でした。監督はテイト・テイラー

 

一人の男性ピーターが空港を出てきて、ある女性の運転する車に乗り込むところから映画は始まります。実はこの女性はプロの殺し屋で、ターゲットはこの男性。鼻の下を伸ばして口説きにくる男性に話を合わせ、巧みに車を止めて、なぜあなたは殺されるのか身に覚えがあるかと尋ねる。訳のわからないままに、一瞬で撃ち殺されてしまう男性。女性の名はエヴァ。そんなエヴァの仕事を一台のバイクに乗った女性がつけていて、車に仕掛けた盗聴マイクで会話の様子を聞いている。仕事の前にターゲットに話しかけるのは組織の規約違反なのだ。

 

続いてのエヴァは極秘潜入して一人の人物を殺す仕事を依頼される。そんな頃、組織の上層部のサイモンはエヴァを見晴らせるためにアランという男を張り付かせる。エヴァの仕事が成功する直前、いきなり兵士が突入してくる。当初は心臓麻痺を装うつもりを一気にターゲットを殺した上で、兵士を迎え撃つエヴァ。この手際の良さとスピード感が実にうまい。なんとか脱出したエヴァだが、ターゲットの名前を間違えていたという連絡が組織より入る。しかも、夜ジョギングをしていたエヴァはアランに襲われる。しかし反撃して殺してしまう。

 

エヴァは自分を殺し屋に育てたデュークの元を訪れ、真相を迫るが、うまくはぐらかされる。エヴァにはジュディという妹がいた。彼女の婚約者マイケルはエヴァの元カレだった。アルコール依存症で苦しんでいたエヴァは8年前マイケルの元を去って行方不明だった。たまたまジュディの元を訪ねたエヴァは母が心臓発作で入院したことを知る。母を見舞いに行ったエヴァだが、ジュディの態度も冷たかった。しかし、ジュディはマイケルがかねてからのギャンブル依存症が治っていないと泣きついてくる。この辺りがやや雑。エヴァはかつて自分も入り浸っていたマイケルが入り浸っている裏賭博場へいき、マイケルを助け出し、敵のボスに啖呵を切って去る。

 

一方デュークはかつての教え子であるが今は上司の地位にいるサイモンを訪ねる。実はエヴァの仕事のミスは全てサイモンが仕掛けたもので、エヴァを亡き者にするつもりだったという。デュークは、サイモンに釘を刺し、エヴァを狙わないように言いくるめる。

 

間も無くして、サイモンの家族のパーティに出かけたデュークは、そこでサイモンに殺されてしまう。そしてその映像をエヴァに送る。エヴァはデュークが殺されたことを知り、覚悟を決める。そして退院した母の元を訪れ、自分の正体を話そうとするが母から話さないようにと諭される。この場面が実にいい。カードをやりながらさりげなく母が娘を諭すくだりは絶品の場面です。さらにエヴァは貯蓄していた金を持ち出し、マイケルの借金をチャラにすべく裏賭博のボスに会いにいき、殺す寸前までして脅して帰る。エヴァは自分が組織に狙われていると判断し、身内も危ないと考え、マイケルの元を訪れ、ジュディと一緒に国外に脱出するように金を渡す。ジュディは妊娠していた。

 

そしてエヴァは自宅に戻るが、耐えきれずにとうとうアルコールを飲んでしまう。そして自殺を決意して銃を喉に当てた途端、サイモンが突入してくる。そして、エヴァとバトルを繰り返すが、形勢が不利と判断したサイモンは手を止める。その時、ホテルの不審者侵入の警報がなる。サイモンは巧みに脱出するが、エヴァもまた部屋を出てサイモンを追う。そして、追い詰めたエヴァはサイモンを撃ち殺す。この作品全体に言えることですが、エヴァが実に鮮やかになんの躊躇もなく銃を撃ち人を殺す。どこか冷たいようですが、これがプロの姿ではないかと思う。しかも、ピンチになることなく常にやたら強いのもいい。

 

全てを終えたと思ったエヴァは、一人部屋を出て街に出る。いつのまにか冒頭の女がエヴァの後をつけている。彼女はサイモンの右腕なのだ。カメラがゆっくり引いて二人のカットを映して映画は終わる。うまい。実にうまい仕上がりである。所々にやや甘さはないわけではないが、エヴァとデュークの師弟関係もしつこくないし、サイモンのキャラクターも組織の上層部としてありきたりの狡猾さではないリアリティがある。さらに、サイモンの右腕の女の存在が組織の不気味さを見事に描写している。エヴァの母のキャラクターも、一見よくある女のようで、娘への親としての温かさがしっかり描かれている。一番弱いのはジュディとマイケルだが、これもさりげなくかわして描くので、あまりアラが目立たない。ここまで書き込まれた脚本は珍しいと思う。非常によくできたアクション映画だったと思います。