「フォーンブース」のラリー・コーエンが原案した「セルラー」
一方が、電話ボックス内でのほとんど移動のない固定された世界でのサスペンスに対して、この「セルラー」は突然携帯電話にかかってきたメッセージを機にノンストップのサスペンスが展開するいわば動の世界である。
冒頭シーンから一気に本編に進む展開にまず度肝を抜かれます。
子供をスクールバスに見送って、家に戻ってきたらいきなり裏口のガラス戸が蹴破られて男たちが入ってくる、そしてあれよあれよという間に主人公キム・ベイシンガーはいずこへともなく連れさられて、後はもうノンストップで物語が次から次へと展開していきます。
よけいな間などほとんどとらずに、助けを呼ばれた青年(クリス・エバンズ)の人間性とか現在の境遇などはほとんどはしょる程度に紹介されて、そのまま物語の渦中に巻き込まれていく展開にはもう、息をもつかせないスピード感があります。
この出だしを見て私はジョン・カサベテス監督、ジーナ・ローランズ主演の「グロリア」の冒頭シーンを思い出しました。
物語は全然違うのですが、導入部分はいきなり激しい銃撃戦から入って、一気に本編へとなだれ込んでいくのです。後はどんどん物語が進んでいって、グロリアが何者かなどという説明はおいおい説明されるという展開。
今日の「セルラー」もそれに似ているのです。
見ている側はなぜ彼女が連れ去られるのか、この男たちは誰か、夫は何をしたのか、とにかく?マークのままで必死で物語を追いかける羽目になるのですから、もう大変。
題名に示すとおり携帯電話や電話が重要なキーワードになり、さらに電話口に聞こえる英語のなまりなどまでキーワードになるという非常に緻密な組み立てなので、最後まで飽きさせないし、途中に挿入されるアメリカ映画独特のカーチェイスも嫌みが無く、しつこくもない。さらに所々に挿入されるコミカルなエピソードまでが作品に彩りを添えることになってラストシーンを迎える。
さらにちょっとした疑問点から本編の救世主となる定年間近の警察官ウィリアム・H・メイシーがなかなか味のある演技で物語を引き締めるし、事件の原因がまた警官の・・(ネタ)事件なので、結構シリアスな面もあって、見事な作品に仕上がっていました。