くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「八月燈の三姉妹」「薔薇色のブー子」「太平洋の嵐」

六月燈の三姉妹

「六月燈の三姉妹」
佐々部清監督作品であるが、いわゆるローカル映画である。
鹿児島にある実在の和菓子屋を舞台に描かれるヒューマンドラマ。

普通の出来映えの脚本を、佐々部監督の手腕で映像に仕上げたという出来映えで、やたら方言だけが耳につく。さらに、人物の過去と相関性が今一つわかりにくいために、ストーリーの根幹が見えてこない。

物語は、主人公奈美江が、実家である和菓子店に帰ってくるシーンに始まる。夫の母親とうまくいかず、離婚調停中の彼女は、東京に夫を残して実家に戻っている。実家には姉と妹がまだ家にいる。さらに、母親は別れた夫と一緒に店を切り盛りしている。姉も、バツイチで、妹は、仕事先の男と不倫中。全く、どんな家系だろうというところだが、その複雑さも、実話故に、省くわけにいかなかったのが、かえって、本来の奈美江と夫の物語をぼやかしてしまった。

さらに、かるキャンなる和菓子が夜店で大人気になるエピソードさえもぼかしてしまった。

確かに、丁寧に夕日の光を生かした終盤の映像づくりは、さすがに佐々部監督のこだわりも見られるし、だれた作品ではないが、それでも、これというポイントも見えない一本に仕上がっている。

結局、それとなく、奈美江と夫の離婚話も良い方向に向かいかけ、和菓子屋を継ぐことが希望だった妹の自作のお菓子も認められて、物語は良い方向に向かう感じでエンディング。

ひたすら誠実に尽くす奈美江の夫、平川のキャラクターが、妙にこの作品にスパイスになろうとする微妙さがちょっと、気になる程度の出来映えだった気がする。


「薔薇色のブー子」
俳優の演技力も何もいらない、ひたすら監督福田雄一の悪のりだけで突っ走るビジュアルとおふざけの映画である。しかし、この薄っぺらい笑いが、何とも個性的なのも確かで、こういうのりがあってもいいと思う。

物語は、子供の頃からぶーぶーと文句ばかり言っていた主人公幸子は、あだ名までブー子といわれていた。

大学に入ったものの、文句ばかり言って、友達もできず、結局引きこもりになる。しかし大好きなアニメの話題で気のあったネット友達のスパロウとデートする約束になる。

待ち合わせの夜の22時にターゲットをあわせ、幸子は、人生で最高の自分を作るべく奮闘する。しかし、彼女の前に、次々と不幸というかラッキーというか、邪魔が入る。

そのどたばた劇が、次々と襲いかかる様が、完全に非現実大展開で進んでいく、いわばスラプスティックコメディである。しかし、こういうのりは大好きである。だから楽しくて仕方ない。これでもう少し、主演の指原莉乃が演技がうまくて、間のとりかたが的を射ていたら傑作になったかもしれないが、いかんせん、へたくそである。ただ、彼女を丁寧にとるシーンは皆無に等しい為に助かっているのだ。

結局、悪戦苦闘の末に約束の場所へは遅れるが、そこで出会ったのは、母親の再婚相手で、本当の父ではないが現在の父親だった。引きこもっている娘のために、フェイクで彼女を誘いだしたという結末でハッピーエンド。

いいんじゃないの、こういう悪ふざけ映画。もしかしたら、福田雄一監督は、今後びっくりする傑作を作るかもしれないなと思える映画だった。


「太平洋の嵐」
二時間ほどの作品であるが、そのほとんどが特撮シーンである。円谷英二のミニチュアワークのリアリティのすごさを堪能できる一本で、まさに東宝得意の戦争映画の娯楽対策という感じの作品でした。

物語は、これから真珠湾攻撃をしようとするシーンに始まり、クライマックスはミッドウェー海戦の敗北までを描くが、ほとんど人間ドラマは登場しない。わずかに北見中尉がふるさとで結婚するシーンのみがドラマと呼べる部分である。

あとは、海上での戦闘シーンと、ゼロ戦グラマンの空中戦が映像の大半を占める。CG全盛期のいまとなっても、このミニチュアワークは必見に値する。これが特撮の神様と呼ばれた円谷英二の力量であろう。