くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「カケラ」「9 〜9番目の奇妙な人形〜」

カケラ

「カケラ」
今注目の女優満島ひかり主演の映画を見る。
というか彼女がでていなければ見に行ったかどうかわからない作品である。
印象としては素人が脚本監督をした作品という感じで、訴えたいことはあるのですがそれが映像表現としてうまくいっていないという映画でした。

とはいえ監督の安藤モモ子はちゃんと助監督について映画演出を勉強した人である。にもかかわらず作品全体にリズム感がわき上がってこない。突然、登場人物がキレたり、叫んだりするショットも何のための演出なのか全くちぐはぐで把握できない。しかもそれがスパイスのように生きているのかといえば、そういうわけでもない。

せっかくの個性派満島ひかりを配しているにもかかわらず、彼女の魅力が今ひとつ生きていないのも残念。一方のリコ役の中村映里子がなかなか浮き上がっていていいです。本来この二人が相対しながらストーリーを紡いでいけばいいのですが、どっちつかずでだらだらと描かれているのは果たして原作の味なのか、脚本の未熟故か何とも判断できない。

脇に存在する恋人や山崎の存在も作品を盛り上げてこないし、不思議な映画でした。


「9 9番目の奇妙な人形」
ティム・バートンがこの作品のオリジナルである卒業制作版の11分のアニメを絶賛したという話題のSFアニメ。

不思議な世界観でつづられる物語は非常に哲学的でシュールであるにもかかわらず、アクション性も十分あり、心理描写(人形ですが)もわかりやすくてエンターテインメントとしても楽しめる作品でした。

布を針で閉じていくアップ、そして一体の布人形が目を覚ますところからストーリーが始まります。そばには一人の科学者らしき人物が倒れており、窓の外は荒廃した町並みが見渡される。明らかにSF的な設定でスタートするこの不思議なアニメーションは、近未来、すでに人類は機械との戦争に敗れて死滅した世界が背景となります。そこになぜか残された9体の布人形。果たして彼らの存在の意味は?そして機械との戦いの行く末は?

謎を引きづりながら、9番目の”9”(ナイン)という主人公に人形を中心に、独特の暗雲とした世界で他の八体の人形たちと、機械獣と戦う。
ハイスピードな演出は非常におもしろくて、ストーリー展開も単純で早いのでどんどん引き込まれていきます。しかし次第に謎が見えてきて、クライマックスに流れる「虹の彼方へ」にこの作品のテーマ性が凝縮されていることに気がつくのです。

オリジナルの短編アニメはせりふなしで語っていくらしいですが、この長編に焼く直すに当たって挿入したせりふが私たちに何かを訴えかけていることは確かですね。
ただ、ラストシーン、機械獣に捕まっていた5体の人形の魂が解放されるというエンディングと残った人形たちのこれからを思わせるショットは今ひとつ意味が把握できませんでした。

結局、人間はその心を人形に託して未来にかけたということなのでしょうか?それなら9体全部が解放されないといけないのではないのでしょうか?
と、疑問の残る映画でした