くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「サウンド・オブ・サンダー」

サウンド・オブ・サンダー

SF界の巨人、レイ・ブラッドベリ。彼が描いたタイムトラベルファンタジーサウンド・オブ・サンダー」は短編小説である。にもかかわらず、映像化が不可能と言われてきたのはレイ・ブラッドベリの独特の幻想的な描写のせいではないだろうか。

そしてついに映画化された作品はこの手の演出には特異な才能を見せるピーター・ハイアムズ監督であった。

レイ・ブラッドベリの大ファンでもある私としては今回の作品を期待しないわけには行かない。
結果は十分満足のいくものであった。
そもそもショートショートに近いほどの短編小説なので、映画化に当たってはほとんど題材をもらっただけで、かなりの部分を脚色し追加されたものであろうと思うが、それぞれのシーンがレイ・ブラッドベリ小説の幻想的な味わいを見事にスクリーンに映し出している。

なんと言っても圧巻は時間が狂いだして訪れる時間の波のシーンである。
まるで「ディープ・インパクト」の大津波を思わせるような透明な波が一気に大都会を飲み尽くしていく。そのとたんに回りの風景が一気に変わってしまう。それも第一波、第二波、第三波、と来るたびにその変化は極端に変わっていくという展開が本当にどきどきしてしまう。

一方で過去へ戻って、犯した過ちをただそうとするサスペンスと重なり合って、お互いが増幅して観客を引き込んでくれる。このあたりさすがにピーター・ハイアムズ監督である。

次の波はいつか?次はどんな変化が起こるのか?過去で犯した過ちは何だったのか?その修正は可能なのか?いかにしてその修正を行うのか?そして、どのような結末が待っているのか?
総てが見事に組み合わされた一休のサスペンスに仕上がっていて、冒頭からラストシーンまで目を離せないし、ストーリーにのめり込んでしまった。

原作の映像化に当たっては今や当然のようにCGが使われているのであるが、なんと、スクリーンプロセスのような原始的な特撮や背景を手書き風景で作り上げたシーンなど最新技術とオーソドックスなSFXが組み合わされているのは意図的なことなのだろうか?時間もの作品なために古いものと最新技術をとりこんで何かを訴えようとしたのか。いずれにせよ興味深い映像であった。

特に大スターを起用しているわけではないところを見ると、超大作としての位置づけで作られたものではないのであろうが、なかなか見応えのある佳作でありました。

太陽の黄金の林檎太陽の黄金の林檎
レイ ブラッドベリ Ray Bradbury 小笠原 豊樹

早川書房 2006-02
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