くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「プロデューサーズ(1968年版)「かもめ食堂」

プロデューサーズ
メル・ブルックスの映画デビュー作にして、今、リメイク版が公開中の「プロデューサーズ
今日見てきたのはオリジナル版の方である。製作は1968年であるが日本の公開はメル・ブルックスが「ヤングフランケンシュタイン」などで名声を確立したあとのさらに後2001年というから驚きだ。

リメイク版が非常に楽しい映画だったし、懐かしいハリウッド黄金時代ミュージカルを彷彿とさせるエンターテインメント作品だっただけに、やはりオリジナル版を見たかったのである。

第一印象は私個人としてはリメイク版の方が楽しかった。このオリジナル版はミュージカル仕立てであるが、この作品の大成功からミュージカルの舞台ができあがり、その舞台が大ヒットしそして今回のリメイクに至っている。オリジナル版の展開はリメイク版とほとんど同じであり、セリフやシーンも同じところが多々あるが、ミュージカル部分はかなり少ない、というよりコメディであってミュージカルではないのだ。そこがリメイク版と根本的に違う。

メル・ブルックスはこの作品ではやたらアップが目立つ。テレビ界から映画デビューした人だけにアップを多用するのはわかるのだが、それよりも、顔の表情を大スクリーンで生かしてみせるメル・ブルックスの演出はメル・ブルックス独特のコメディ世界を作り上げている。ギョロ、ギョロット目が物語を語る展開は本当に楽しい。しかし、個人的にはこのアップの多用は好みではないだけにもう一つ入りきれなかった。

最初のタイトルバックは軽快な曲と共にシーンを細かくストップモーションで見せていって物語に引き込んでくれるのであるが、さすがに古さを感じてしまうのである。このあたりはリメイク版はミュージカルゆえに軽やかさが加わっている点が成功と言えるかもしれませんね。でも。見て損はなかったと思います。ジーン・ワイルダー出世作でもあるのですが、それほど目立ちませんでしたけどね・・・

かもめ食堂さて、もう一本、今日は話題の大ヒット映画「かもめ食堂」を見てきました。
もちろん、大入り満員・・でしたが「ホテル・ルワンダ」ほどではなかった。

映画には二度と作れない作品というのがある。良く引き合いに出されるのが「風と共に去りぬ」である。あのスタッフ、キャストは二度と実現しないといわれる。この「かもめ食堂」もおそらくこのスタッフ、キャストでなければ実現できない映画であった。

あれだけの長回しでカメラを据えたままで延々と会話が続く。それを何の不自然さもなく淡々と演技が出来るのは小林聡美もたいまさこ片桐はいりくらいしかいないであろう。全く、見事に監督荻上直子の意図を見事に演じきっている。

お話はフィンランド日本食の食堂を営む小林聡美のところへひょんなことから手伝うことになる片桐はいりもたいまさことその食堂にやってくる様々なお客さんの姿を描いたきわめて平坦な物語なのだが、この荻上直子監督の演出は見事だ。

最初は食堂を横に撮って、広く見せながらお客さんが増えるにつれて縦の構図に変わり、カメラは厨房の中へ入っていく。一方、景色の撮り方も少しずつ変わっていって、映像にリズムをつけてくる。映画はリズムだといつも言っているが、この平坦なストーリーを映像のリズムと長回しのカメラで描く演出力に脱帽である。

一つ一つのエピソードも堂に入っていて、大げさでもなく、といってやたら浪花節的でもなく、物足りなくもなく、日本的すぎることもない。この微妙な異国情緒が素晴らしい。原作があるのであるが、映像化して具体化するに当たってこれほど難しい題材はなかったのではないでしょうか。

セリフの一つ一つも、くどくなく、それでいて、それぞれの女性たちの生き方やお客さんの心理変化が無理なく挿入されていて、まるで町中で見つけたきれいな景色の入ったパンフレットを立ち読みした感じである。

結局大繁盛が始まって、終わってしまうが、何処にこれほど大ヒットする原因があるのかわからなかった。確かに良い映画なのだが、劇的な感動も、しんみりと考えさせられるほどのテーマ性もないのである。こうした映画がヒットする時代と言うことで今を理解するべきなのかもしれませんね。