くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「リトル・ミス・サンシャイン」

リトル・ミス・サンシャイン

特に傑作でも名作でもないけれど、なぜか心に残るいい映画ってありますよね。それがこの「リトル・ミス・サンシャイン
映画の総合サイトMoviewalkerでもいきなり「みてよかった映画」第二位になっていたので予定を変更してこの映画を見に行きました。

リトル・ミス・サンシャインってなんのことかって?6,7歳を中心にカリフォルニアで行われる少女のミスコンのことです。この映画の主人公はこのコンテストに出場することになるのがこの映画の本編の物語。

冒頭のシーン、まずその主人公の少女オリーヴがミスコンの発表の様子をテレビで見ているところから始まります。そこからバックのテンポのいいリズムでこの映画の登場人物(つまりこの映画の中心になる家族と一人のおじさん)が手際よく紹介されていきます。

なんせ、このオリーヴという女の子、ぽっちゃりとして、おなかも子供らしくぽこんと出ている上に顔もまん丸で、そこに大きなめがねをかけているのですんごくかわいらしい。本当に幼く見えるし、むちっとしたかわいらしさが愛くるしいのです。

その彼女、地元のミスコンの予選で二位になって、次こそは一位になってカリフォルニアの全米大会を目指しています。祖父はヘロイン中毒で老人ホームを追い出されたけれどオリーヴにはとっても優しいおじいちゃん。なんと、そのおじいさん役を懐かしいアラン・アーキンが演じています。あのオードリー・ヘップバーンのサスペンス「暗くなるまで待って」の悪人役ですよ、懐かしい限り。

お兄さんは航空学校を目指していて、合格するまで無言を通すために会話はすべて筆記、「ツァトゥラトゥスはかく語りき」なんかを読んでいる。父親はなんとかいう自己啓発プログラムを作って一攫千金をねらう、いわばどちらかというと夢ばかり追うダメ親父。何かにつけ勝ち組と負け犬という言葉をはく小憎たらしいやつである。母親はというと食事をろくに作ろうともせずにチキンの唐揚げなどのファーストフードですませるこれまたダメ母、そして、恋人(男である)にふられて自殺未遂を起こして管理下におかないといけなくなったプルースト研究家の叔父がこの家族に舞い込む。

さて、そんな舞台設定が整ったところで、オリーヴが第一位の優勝者が失格になったので急遽第一位になり、カリフォルニアの全米大会に行くことになるから大変。お金はない、それぞれ身勝手なことを言っていきたがらない、ただ一人おじいちゃんだけが賛成するものの、これも一筋縄ではいかない。

てんやわんやで何とか全員が娘のコンテストに出かけることに。
乗り込んだのはぼろの中古ワゴン(これが真っ黄色ですごくかわいい)。いつ止まるかわからない調子でがたごととでかける。途中、車は故障の連続、兄は色弱が見つかって航空学校へ行けないことになる。叔父はかつての恋人にあってしまう。さらにおじいちゃんは死んでしまうのだから大変である。

ようやくぎりぎり間に合って(といっても本当は5分遅れ、そこを小粋なおじさんに受け付けてもらうのですが)コンテスト会場へ。そこはもう子供のコンテストとは思えないような熱気とムード。大人顔負けのスタイルと仕草で審査員に迫る少女ばかりなのだ。そんな中、あまりに田舎くさいオリーヴの姿に家族たちもかなり落ち込み、このまま帰ろうとまで言い出す始末。
しかし、当のオリーヴは最後までがんばるといいだし、クライマックス、おじいちゃんが振り付けたダンスを踊るのであるが・・・

ラストはやめましょう。でも、よくあるこの手のファミリー映画のように平凡には終わりませんよ。そこがこの映画のいいところです。文部科学省推薦にならないところがこの映画の小品ながら秀作と呼べるゆえんなのです。

おじいちゃんが死ぬ前にオリーヴに言うせりふがいいですよ「負け犬というのは負けてしまう犬ではなくて、挑戦してみようともしないで逃げてしまう犬のことを言うのだ」という言葉、このせりふにこの映画のテーマが凝縮されているように思えなくもないですが、それもまたこじつけですね。テーマがどうのこうのといいたくない映画です。

最後に、コンテストの会場を後にして去っていく真っ黄色のワゴンが妙に印象的に心に残るいい映画でした。監督はMTV出身のディレクター夫婦ジョナサン・デイトン ヴァレリー・ファリス という二人。これといった商売っ気もないシンプルな作り方ですが、そこがまた好感なんですよ。

秀作という言葉がぴったりのなんか心に残る映画それがこの「リトル・ミス・サンシャイン」です