くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「愛のレッスン」「夏の夜は三たび微笑む」

愛のレッスン

イングマール・ベルイマン特集も自分なりに大詰めになってきました。
本日見た二本は喜劇です。ベルイマンというと神や愛の不在をうたい、難解な映像表現で見せてくる作品をイメージするので、本日見たコメディ二本はどう感想を書いていいものか困ってしまいます。

まずは、「愛のレッスン」
美しい患者スザンヌとの不倫が妻にばれた婦人科医ダーヴィッド、一方の妻もかつての恋人で親友でもあるカールとの不倫をしているらしいことを娘に聞き、それを利用してもう一度妻を取り戻そうとする姿をコミカルに描いていきます。

電車の中でのシーンが大半なのですが、その電車の中で意図的に妻と乗り合わせ、その会話の中や、一人になったとき、あるいは来るまで駅に向かう途中などで、効果的にフラッシュバックを入れて、これまでの経緯や今の自分の心の中などを挿入していきます。

現実の時間に戻ると、機関銃のように交わされる軽妙かつしゃれた会話の応酬と、時折挿入するベルイマン独特の音の効果で、あれよあれよと、彼らのなれそめや、夫ダーヴィッドの熱意をかいま見ていくのです。

この作品にはイングマール・ベルイマン独特のシュールな表現は登場しませんが、ベルイマン作品だからと損案場面を探しているとちょっとがっかりするかも競れませんね。
とはいえ、ラストシーンが本当におしゃれに終わらせるあたり、ベルイマンの才能の広さを実感してしまう作品でした。あまり有名ではありませんが、これはいい映画です。おもしろかった。

さて、もう一本は名作「夏の夜は三たび微笑む」。
この作品もコメディです。先ほどの「愛のレッスン」にどこか似通っていますよ。つまり、一人の舞台女優に熱を上げる二人の男。一人は弁護士、一人は軍人。弁護士には後妻で幼妻をめとっているが、どうも息子と恋仲のようで嫉妬しています。一方の軍人の方はひたすら、女優に恋いこがれ、弁護士を目の敵にしている。

さて、軍人の妻は何とか夫を自分の元に戻したい、女優は弁護士のかつての恋人であり、今も弁護士のことが好きで、自分の物にしたい。弁護士の息子と弁護士の妻ははれて恋人として二人になりたい。
そんな関係を丸く収めるために、女優の母の家のパーティに全員をよんで、それぞれがそれぞれの相手とうまくいくようにしようと計画を立てます。

その様子が、本当にコミカルに、軽妙に描かれていくあたりは「愛のレッスン」のスケールの大きい版的でもあります。しかしながら、風景の構図にせよ、所々に入れるベルイマン独特の音の効果にせよ、さらに、インサートカットで入る、人形や風車などのモチーフなどに名作の貫禄があることは確かです。

イングマール・ベルイマンのもう一つのジャンルとしての見事なコメディに惚れ込む人もいるのではないでしょうか?でも、私はやはりベルイマンといえば、難解ながらも重々しい神や愛をうたったシュールな世界の方が好きですね。