くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「パリ13区」「ベルイマン島にて」

「パリ13区」

映像のテンポがいいし、曲の選曲も心地よく、SEXシーンは頻繁に出てくるもののシンプルで嫌味がないのでいやらしさも見えない。出だしはいい感じで始まるものの終盤若干弱さを感じるのですが、あっさり素敵なラブストーリーで締め括ったのはよかった。監督はジャック・オーディアール

 

巴里の街を俯瞰で見下ろすカメラがマンションの一室へ入りと全裸の女性エミリーがマイクで何やら歌を歌っている。そこへ男性がやってきてSEXを始めて映画は始まる。エミリーの部屋に一人の男性カミーユがやってくる。どうやらルームメイトを募集していて、やってきたのがカミーユらしく、エミリーはそのままカミーユと暮らしようになるが、時を経ずして二人はSEXにふけるようになる。

 

カミーユは高校の教師をしている。エミリーはコールセンターで携帯電話の勧誘をしているが、ふとしたことでクビになってしまう。一方、カミーユは学校の同僚ステファニーを部屋に連れ込んでいたので、エミリーと諍いになり出ていくことになる。しかし、エミリーはカミーユのことを実は愛していた。エミリーは、男性を買ってはSEXをして気持ちを紛らわせる。

 

場面が変わると、アダルトチャットの画面で、金髪の女性がセクシーな行為をしている。ここにノラのいう女性がソルボンヌ大学に入学し、パリの部屋に住まいを始める。しかし、人と接することが苦手で、授業に出て、隣に声をかけてもその後が続かない。誘われたパーティに行くのに金髪のウィグをつけて出かけたが、何とその姿がアダルトチャットのアンバー・スウィートにそっくりで、男たちが勘違いしてしまう。しかも、学校でも広まってしまいノラはいたたまれなくなってしまう。

 

場面が変わると、エミリーは、中国系のレストランで働いていた。カミーユは友人の不動産会社の手伝いにはいっていたがそこへやってきたのは、仕事を探していたノラだった。ノラはカミーユと一緒に不動産の仕事をするようになるが、一方で、アダルトチャットの女優アンバー・スウィートと接触し始め、次第にビデオチャットで友達のようにつきあうようになる。ノラはカミーユとSEXをする関係になるものの、カミーユは今一歩乗り切れないノラに不審を抱き始める。

 

そんな頃、カミーユはエミリーと連絡を取る。こうして、カミーユとエミリー、ノラ、アンバー・スウィートとの物語が絡み始める。カミーユは結局ノラとは仕事の上での付き合い以上に深くなることはなく、一方、エミリーはカミーユに頼まれて外国人の顧客との通役などでカミーユの仕事にも関わっていく。そんな頃、エミリーの祖母が亡くなる。エミリーが住んでいた部屋は祖母の持ち物だったため、エミリーは急速にカミーユとの関係を取り戻し始めた。

 

ノラはアンバー・スウィートと実際に会うことを決心し、公園で待ち合わせる。ノラはその場で倒れてしまい、アンバー・スウィートにキスを求める。一方エミリーはカミーユにデートに誘われ嬉々としていた。こうして映画は終わっていく。

 

オムニバスドラマのように展開していくが、次第にそれぞれが絡み合い、それぞれの関係がうまくまとまって未来へ向かうラストが気持ちがいい。映像のテンポも音楽のセンスも洒落ていて、映画として楽しめる一本でした。

 

ベルイマン島にて」

中盤まで、よくある流れの作品かと見ていましたが、後半みるみるオリジナリティ溢れる心地よい展開に流れ、ラストは素敵に終わりました。とってもいい映画でした。イングマール・ベルイマンに関する知識があればあったで良いし、なくても映画としては素敵な作品だったと思います。監督はミア・ハンセン=ラブ。

 

映画監督のトニーとクリスが、ベルイマンがその作品を撮影し晩年を過ごしたフォーレ島=ベルイマン島へやってくるところから映画は始まる。トニーはこの地で新作の試写を行う予定で、何かのインスピレーションを期待してやってきた。トニーはすでに監督として成功していたが、クリスはまだ認められたばかりだった。クリスは次の作品の脚本を書き進めようとしていたが行き詰まっていた。やがて、クリスは、かつて叶わなかった初恋の思い出を投影した物語をトニーに語り始める。映画は、映画内映画という形で、クリスが描こうとする作品を映しながら、時折クリスがトニーに語るショットを交えながら展開していく。

 

クリスが描く物語はこうである。エイミーは友人の結婚式でかつて恋したヨセフと再会する。ヨセフには妻もいたが、二人は束の間のアバンチュールに燃え上がり、エイミーはどんどんヨセフに惹かれていく。しかし友人の結婚式も終わり、やがてヨセフは島を離れていった。

 

そして、トニーが、一旦島を離れるにあたり、クリスは一人でベルイマンの晩年の自宅を訪れる。そこでつい時間を忘れた瞬間、場面がジャンプし、クリスの作品の撮影の現場となり、そこで、自らの初恋の思い出で登場したヨセフの姿の男優がクリスに声をかける。そして、それまでクリスが語ってきた物語と撮影が重なって終盤を迎える。撮影が終わり、場面が変わると、娘を連れて戻ってくるトニーのシーンから、娘がクリスに飛びついて三人の睦まじい景色で映画は終わる。

 

クリスの初恋の男性と撮影している作品の男優を同一人物で演じ、終盤、現実とフィクションが重なる演出のテンポがとっても素敵な流れになる。ヘタをすると凡作になる物語ですが、脚本のテクニックのうまさと爽やかな感動で終わらせる才能は見事でした。