くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「リヴ&イングマール ある愛の風景」「ブリングリング」

リヴ&イングマール

「リヴ&イングマール ある愛の風景
スウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマン監督と、伝説の女優リヴ・ウルマンの軌跡を描いていくドキュメンタリーであるが、これがなかなか良かった。

なんといっても、カメラが実に美しい。ふたりが出会い、愛をはぐくんだスウェーデンのフォール島の夜明けのシーンから映画は始まるが、目が覚めるほどに美しい。そして、リヴ・ウルマンがナレーションを語る映像を中心に、ベルイマンとの出会い、恋、結婚、そして離婚、別離までを映像にして紡いでいく。

リヴが語る実生活の出来事が、ベルイマン監督の映画のワンシーンで語られ、交互に挿入される。美しいカラー映像の合間のモノクロシーンが、何とも切ないほどのリズムを生み出してくる。

本来、ドキュメンタリーは見ない私も、この映画にはすっかり引き込まれてしまいました。

年輪を重ねたリヴ・ウルマンの、淡々と語るベルイマン監督の人柄、恋、芸術への思い、そして愛を越えて、信頼できる友として存在した彼の姿は、愛や恋という言葉で表せない、本当のふたりの信頼関係を叙述に物語ってくるのです。

そして、映像作品としても本当に良かった。


「ブリングリング」
ソフィア・コッポラ監督の、独特の映像と音楽のセンスの良さは、毎回引き込まれるほどの魅力がありますが、今回もしかり、どこか冷めたような、それでいてモダンなオリジナリティが、すっかり虜にしてくれました。

もちろん、大好きなエマ・ワトソンが出演しているのが見に行った最大の理由ですが、それにもまして、ソフィア・コッポラ監督の感性には、毎回脱帽させられてしまいます。

物語は、アメリカで、パリス・ヒルトンオーランド・ブルームなど、名だたるセレブの屋敷に窃盗に入った窃盗団「ブリング・リング」の実話を元にしています。なんといっても、窃盗団が高校生を中心にした若者たちで、しかも、自分たちが求めるファッションのために、軽い動機で、軽いのりで、罪の意識以前に、まるで普段の買い物のように盗みをするというところが不可思議なムードに満ちあふれている。

しがない転校生のマークが、転校先でレベッカという女子高生に出会い、そのつながりで、ニッキー、クロエなどの少女たちと親密になる。彼女らは、普通に、路上に止めてある車が空いていたら盗みをしている。そして、ある日、パリス・ヒルトンの屋敷に忍び込み、そのけた外れの豪勢さに圧倒され、セレブの家をターゲットに盗みを始める。

被害者の方は、余りの所持品の多さに、盗まれたことさえ気が付かない状態。これが異常なのか、窃盗に入った彼らが異常なのか、という妙な混乱にさえ陥るのだから不思議である。

しかも、テンポのいい映像と音楽、ノリのいいカットつなぎで見せるソフィア・コッポラのオリジナリティあふれる映像が、いかにもモダンであるし、演じるエマ・ワトソン等の少女たちがとってもキュートなのだから始末が悪い。

防犯ビデオに映された映像が、ネットにばらまかれ、ようやく、情報から警察が踏み込んで逮捕になるも、しゃあしゃあとつれて行かれる。唯一ニッキーだけが抵抗する姿を演じるも、果たして、本心かとさえ思える。

盗みを繰り返していることを学校で自慢して、みんなが賞賛する下りは、一見、同感しているものの、どこかで一歩引いている級友たちの姿もまた、ある意味殺伐とした風景でもある。

判決のカットも、扉が閉まったとたんに判決の音がして扉が開き、マークが車で護送されるシーンの後、ニッキーが拘留の後のインタビューで、自分のアドレスを自慢げに答えて暗転エンディング。この、あっけらかんと、したしゃあしゃあとした彼らの姿は、何を意味するのか。被害者たちの家のあふれるほどの物量はいったい、現代のどこか狂った世界を意味するのか?などと、めんどうなことはおいておいて、すてきでキュートな女性たち、特に大好きなエマ・ワトソンの姿を楽しむだけで十分な一本ですが、もちろん、ソフィア・コッポラの映像を堪能できる秀作だったと思います。