「処女の泉」(デジタルリマスター版)
何度目かのイングマール・ベルイマンの代表作を見る。やはり圧倒される。神の不在を問うて徹底的な迫力で描き切る精神世界の頂点は、人知を超えた映像である。このレベルになると私のような凡人が感想などという生意気なことさえかけない。
物語は今更なので書かないとしても、画面の隅々、展開の隅々まで感性で彩られた隙のない映像にただただ頭が下がってしまうのである。
ギリギリまで追い詰められた主人公が満を期しての復讐、そしてその後の懺悔。神はなぜ我々の行動を静観されていたのか?その絶叫の果てに湧き出てくる泉の清らかさが一気に映画を神格化してしまうのです。
これが芸術というべき一つの到達点でしょう。やはり素晴らしい。
「夏の遊び」(デジタルリマスター版)
史上最も美しいと評されるイングマール・ベルイマンの名作を再見。映像全体から漂ってくる透明感がたまらなく美しい。どこがどうではなくて、作品が持つ空気が恐ろし透き通っているのです。
白鳥の湖のリハーサルの日。受付には1人の記者がマリーというプリマに会いにくるが素っ気なく追い返される。彼はマリーの恋人である。
稽古が始まるが照明のショートで、楽屋に戻るマリーの手元に一冊の日記帳が置かれる。それは十三年前、一夏の恋に燃えた男性ヘンリックの日記だった。持ってきたのはマリーに密かに想いを寄せる叔父だった。
こうして、若き日のマリーがその懐かしく切ない恋のひと時を思い出して物語が始まる。
モノクロ映像ですが、透き通る空の風景や海の風景、空間を大きくとった開放感あふれる構図、そして、初々しいほどに可愛らしいイングリッド・バーグマン扮するマリーがとにかくキュート。
ヘンリックが不慮の事故で死に、物語は現代へ戻り、記者の恋人とキスをするラストシーンまで、本当にピュアで美しい。こういう映像は感性でしか作り出せないものだろうと思います。見直す値打ちのある一本、そんな映画ですね。