くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ディパーテッド」

ディパーテッド

香港映画の傑作「インファナル・アフェア」、初めてみたときの衝撃は今でも覚えている。冒頭シーンからの息詰まるサスペンス、細かいシーンつなぎとフィルムノワール的な陰惨な音楽、そして、どことなくもの悲しい画面。

どきどきするサスペンスが続く上に、その独特のキャラクターたちの悲しさが、切々とみている私たちに伝わってきて、最後までのめり込んだのを覚えています。
もちろん、第一作に続く第二部、第三部と物語は少しずつ格調を高め、第三部ラストではどこかシュールな終わり方であったのを思い浮かべます。

そんな、衝撃的な名作をリメイクしたのは巨匠マーティン・スコセッシ監督。おそらく、この監督でなければ私は見に行かなかったでしょう。それほどオリジナルへの思いこみは強いのです。

マーティン・スコセッシといえば映像派でならした名監督で、昔から私は大好きでした。非常にこったカメラワークをする人なので、映像を楽しむのが好きな私としてはいちばん好みの監督の一人だったのです。

そして、今回の「ディパーテッド」、死体という意味のようですが、全く不安を払拭するほどに見事な作品に仕上がっていました。もちろん、オリジナル「インファナル・アフェア」の名シーンを所々にきっちりとはめ込み、一方で、マーティン・スコセッシ独特の短いカットと流麗なカメラ、そして、画面のリズムを最大限に意識した音楽の挿入など、どこをとっても一級品に仕上がっていました。

インファナル・アフェア」ではいきなり、情報をつかんだ麻薬取引の場面を押さえようとする警察本部の動きと、お互いに潜入しているスパイ(映画ではネズミと呼びますが)がいかにしてお互いの危険をそれぞれの組織に知らせるかがスリリングに入り、一気に本編に引き込むとともに、その後の細かいフラッシュバックで潜入者同士の生い立ちや背後の家族関係などが埋め込まれていきますが、このリメイク版では、子供時代から、少しずつ描きながら、巧妙に将来の関わりになる人間とのつながりを効果的にはめ込んでいきます。

なんといっても、秀逸はジャック・ニコルソンのヤクザの大ボスですね。非常に存在感があり画面を引き締めますが、出しゃばってこない。この程度の良さが最高です。
マット・ディモン、レオナルド・ディカプリオの二人の潜入者もお互いになかなかがんばっています。しかし、ここはやはりアンディ・ラウトニー・レオンの方が見事でしたね。

とはいっても、マーティン・スコセッシの演出はまだまだ健在なりというところでしょうか。オリジナル版の第一部を中心に、三部作をまとめたようなラストシーンにしてきれいに一本の傑作に仕上がりました。お見事。