くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「バッド・バディ !私とカレの暗殺デート」「潜入者」

kurawan2017-05-19

「バッド・バディ !私とカレの暗殺デート」
アナ・ケンドリックを見るためだけに行った程度の映画でしたが、意外とこれが面白かった。若干テンポが悪いので、一級品のアクションになりきらないのだが、B級アクションとしては非常に良くできた一本という感じでした。監督はパコ・カベサスです。「クロニクル」や「エージェント・ウルトラ」のスタッフなのでバカバカしい中に、見せるアクションが楽しい

幼い頃からちょっと変わり者の主人公マーサは、この日彼氏に浮気され切れきっていた。そんな彼女の前に突然現れたのがフランシス。彼はプロの超一級の殺し屋だが、なぜかターゲットではなく依頼人を殺してしまうことでも有名だった。二人はお互い一目惚れしてしまい、どんどん仲が良くなっていく。

ところがフランシスを狙う殺し屋どもが迫ってくる。巧みな技術で次々と相手を倒していくフランシスのあざやかさがまずおもしろいのだが、じつはマーサにも天性の殺し屋の才能があって、その並外れた運動能力が最後に爆発する。

爆発するのがもう少しストーリーの中盤直後くらいならもう少し全体が面白かった気がするが、終盤すぎて、やや中盤がだれたのが残念。

とはいっても、フランシスが、半ばふざけたように相手をあしらう様は実に小気味良いし、途中から登場するグミ好きの殺し屋などが粋に関わってくるあたりの脚本はなかなかのものである。

結局、二人は殺し屋たちを物の見事に倒し、フランシスの元相棒らしいホッパーという悪人もまんまとやり過ごしてエンディング。エピローグのタイで狙われる二人がいとも簡単に相手をいなして暗転。いやあ、楽しかった。掘り出し物レベルの一本でした。


「潜入者」
クライムサスペンスなので、緊張感あふれるだけの物語かと思って見ていたのですが、ラストシーンはものすごい感動が胸に迫って来ました。犯罪者に憐れみさえ感じてしまう見事な人間ドラマとして完成されていたと思います。監督はブラッド・ファーマンです。

1980年代、アメリカに巣食う麻薬取引ルートの最大のものはコロンビアのパブロ・エスコバルによる犯罪帝国だった。この事態を重く見たアメリカ政府は、ロバート・メイサーという1人の捜査官を大富豪に仕立て、潜入捜査をすることを決意し、実行に移す。実話を元にしたとはいえ、冒頭のシーンからラストまで、極限状態の緊張感と人間ドラマが徹底的なリアリティで描かれていきます。

妻も居て二人の子供もいるメイサーを大富豪に仕立て、許嫁を仕立てて、次第に組織の奥深くに迫っていく展開がとにかく恐ろしいほどの緊張感である。しかも、人知を超えた世界に入り込むという異常さ、想像もつかないセレブの世界に踏み込んでいき、殺人も普通に行われる異様な世界に入っていくに連れて、気を抜くと狂ってしまう寸前の演技をしていく主人公の姿にまず圧倒される。

捜査とはいえ許嫁を設定したという前提に、微妙に揺れるメイサーの妻の描写も丁寧に描かれているのも良い。

一方で、次第に信頼を得て来て人間同士の付き合いが深まるに連れて、捜査である以前に人間関係が築かれてくる様も丁寧に描かれ、クライマックスの結婚式の場面で、一同に集まった犯罪者たちを一網打尽に逮捕するときのなんともいえない視線のやりとりが、やるせないほどに胸に熱いものがこみ上げてくるのはどういうことだろう。それほどに、ドラマ性も徹底的に描かれているのである。

人物関係などの説明はそれほどせずにどんどん話の核心に入っていく前半部分は、ちょっとしんどいが、物語が核心に迫ってくるとグイグイとストーリーに引き込まれてしまいます。

隅々まで手を抜かず描きこまれたサスペンス映画の佳作という感じの映画でした。素直に良かったです。