くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「グエムル漢江の怪物」

グエムル

批評家から絶大な高評価をうけ、大阪の朝日映画ベストテンで外国映画の第一位になった韓国映画グエムル 漢江の怪物」をベストテン記念上映と言うことで見に行きました。

いきなり、韓国のどこかの研究室。アメリカ人らしい研究者と韓国人らしい研究者がなにやら薬品を処分する話をしています。アメリカ人らしい研究者が「漢江(ハンガン)に流せばよい」などという軽々しい言葉を吐くところから物語はスタート。この辺はあまりにも幼稚である。

続いて、それから数年後の漢江付近、なにやら不吉な予感が走ろうとするところで、この物語の主人公となるソン・ガンホ以下の家族の紹介が続き、いきなり怪物の出てきます。

この怪物が出てくるあたりの場面、そしてそのあとの人々の逃げ切る場面、ソン・ガンホが娘の手を引いて走る場面、続いて、娘から別の人に人違いをしてしまい、娘が怪物にさらわれる場面のすばらしさ。スローモーション、ストップモーション、ハイスピード、うならせるほどにすごい。このあたりで、この映画はただ者ではないと思わせる。

このスリリングな場面が終わると、娘を助けようとする家族の奮闘のドラマに物語の中心が移っていく。
まだまだ韓国映画は未成熟である。こんな稚拙なシーンで満足するのかと思えるような場面がヒットした純愛映画にも出てくる。そして、この「グエムル 漢江の怪物」にも出てくるのだ。

あまりにもリアリティに欠ける家族が隔離された施設。その職員たちの態度、家族の行動、言動。このあたりははっきり言って見るに耐えない。突貫工事で文明国に追いついた韓国のこれが現状なのである。

貧しい人は、戦後間もない日本などの国々と同レベルの生活をしているという現実が、所々にかいま見えてくる。一方でサムスン電子などの世界のトップ企業が存在する国なのだ。この矛盾が、作品をストーリーで見せようとし始めると、かいま見えてくる。さらに、そこにまだまだ稚拙な演出が存在する韓国映画の現状が重なって、何とももったいないような人物描写がなされる。

この映画のすごさは単に怪物との死闘を描くのではなく、怪物にさらわれた娘を助けるという家族の行動を通じて、絆の大切さ、信じることの大切さを描きたいのである。確かに怪物のシーンは秀逸である。しかし、その高レベルに甘んじずに家族のドラマに仕上げたポン・ジュノ監督の演出が評論家の目を引いたのでしょうね。

ポン・ジュノ監督というと「殺人の追憶」でも評価が高かった監督ですが、この作品もまだまだ稚拙なシーンが随所に見られる。

見終わったあと、そうした稚拙そのものの展開や演出は別にすれば、非常に奥の深い物語に仕上がり且つスリリングな怪物シーンに優れた秀作であったと思います。

ちなみに、本日上映前に韓国へ帰る前にポン・ジュノ監督が舞台挨拶をしてくださいました。1:00の回だけだったので、非常にラッキーでした。