くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「パンズ・ラビリンス」

パンズ・ラビリンス

ブレイド2」をテレビで見て以来、ギレルモ・デル・トロ監督に心酔してしまった私ですが、ついに、大期待の「パンズ・ラビリンス」をみてきました。

現実と夢の世界の入り交じった内容ということでしたので、今はやりのファンタジー物かと思っていたのですが、なんとなんと、ファンタジックな内容の中に複雑きわまりない現実的な世界を混ぜ合わせていて、本当に芸術色満載の作品でした。

第二次大戦末期のスペインを舞台に、内線に揺れる片田舎で起こる数々の悲惨な現実。
半ば生活のために結婚したかのような主人公オフェリアの母親の存在、ヒトラーまがいの冷酷さで平気で人を殺す継父である軍人、そして、現実逃避からかと思われるようなファンタジックな妖精の登場などなど、その設定はなんとも奥が深い。

大人ぶって解釈すれば、悲惨な現実から逃避し、実の父親を慕うあまりに夢の世界に入り込んでいく少女の揺れる思春期の心理を、ファンタジーの名前を借りて描いた名作となるのかもしれないが、この作品はそんなひねくれた世界ではなく、単純にファンタジーであることがその中心である。

地底深くに平和に、安楽に生活している夢の王国、そこに住んでいた王女はある日、人間の世界をみたくて、地上へでますが、そこで太陽の光ですべての記憶をなくし、やがて年老いて死んでいきます。

娘の帰りを信じる王は世界中に王国への入り口を設け、いずれ戻ってくるであろう王女をまちます。

主人公オフェリアはそんな王国の少女の人間の姿。今は記憶が消えていますが、彼女を見つけた王国の侍従が彼女に3つの試練を与え、再び王国にもどり女王として統治すべき力量を試します。

3つの試練の話は、非常に手短に挿入され、現実世界の内線の模様が非常に丁寧に描かれていますが、いずれにも力を抜くこともなく演出されているので、どちらへ方夜でもなく、ぐいぐいと現実とファンタジーの世界に引き込まれてしまいます。

クライマックスのラストシーンは本当にすっきりとハッピーエンドをもたらし、一方の悲劇と他方の幸福が入り交じるという何とも高レベルな作品として締めくくったギレルモ・デル・トロ監督の力量には拍手してしまいました。

いい映画ですよ・・・・