くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「神様メール」

kurawan2016-05-28

「神様メール」
かなり風刺の効いたおとぎ話という感じの、ちょっと素敵なファンタジーでした。監督はジャコ・バン・ドルマルです。

神様というのはブリュッセルに住んでいて、息子はキリストとして有名になったけど、娘は知られていないというオープニングから、どこか毒がある。その娘エアが主人公。父である神は部屋にこもって、パソコンで世界中に好き放題の苦しみを作って遊んでいる。

かつて、世界を作り、生き物を生み出す過程でも試行錯誤だったという説明も笑える。そんな父はいかにも横暴で、母を虐待するし、娘にも強権を発動する。そんな父に反抗したエアは、父が呑んだくれているときにパソコンの部屋の鍵を手に入れ、世界中の人に寿命を知らせ、そのまま洗濯機を通って人間界へ脱出。

人間界では大混乱、さらに神様も洗濯機を通ってエアを追いかけてくる。

いたるところにファンタジックな映像を挿入し、幻想的な演出を繰り返す画面がとにかく楽しいのですが、ところどころ、どこかブラックな装いが見えるのもドキッとさせられる。

エアは、キリストのときにいた12人の使徒を18人に増やせば何かが変わるという母の教えのままに6人の使徒を集め始める。そして、「新・新約聖書」を書き進めていく。

6人それぞれが次々と自分の寿命を知りながらの人生の変化をエアと一緒に紡いでいく姿が物語となる。その発想は本当に柔軟で、すべての現実が嘘になるのだから本当に楽しい。

一方、合間合間に、神様はどんどんおちぶれて、最後はウズベキスタンに送られ、洗濯機の工場で単純作業をさせられる。

6人の使徒が揃う頃、エアの家では母がパソコンの部屋に入り、コンセントを抜いて掃除をする。そして再度コンセントを入れるとパソコンが再起動し、今度は女神である母の操作に移る。寿命はリセットされ、母のプログラムで空が花柄になったり、地球温暖化しても氷が解けなくなったりする。

ハッピーエンドという単純なラストではなく、ある独裁者が好き勝手に人々を翻弄していたのが、ふとしたきっかけで、心温かい指導者に変わり、世の中が一変するという風刺が効いている感じの一本で、素直なファンタジーとして受け入れられないものの、エアを演じた少女の可愛らしさに映画が救われるという感じでした。いい映画でした。