くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想[レッド・クリフ part1」

レッド・クリフ

三国志のファンとしてはあの壮大な物語のほんの一部をスペクタクル映画にすることに対する不安は頭から離れなかった。
もともと三国志は歴史書であり、その歴史書から三国志演義という娯楽小説が完成されている。

この三国志演義が一般的に言われている三国志で、この中には英雄たちをさまざまなエピソードでつづったいわば娯楽的なフィクションが多数挿入されている。
もちろん、今回の[レッド・クリフ」もその三国志演義をもとに、誰もが知る有名なエピソードを挿入しながら、ジョン・ウー独特のすばらしいアクションシーンが展開するのだ。

チャン・イーモウのアクションが芸術なのに対しジョン・ウーのアクションは完全に香港映画的なエンターテインメントに徹している。だからこそ、見せ場の連続であるが、その見せ場があれよあれよと工夫されている。

冒頭部分はさすがに、人物関係や歴史背景を延々とナレーションでみせ、登場人物もことあるごとにフリップを入れて、人物が判らなくなるのをカバーしながらストーリーが進む。
このあたりはこの程度の説明は、あの壮大な物語のほんの一ページを描くには仕方のないことであろう。

とはいえ、クライマックスの地上戦の戦闘シーンはまったく見事。
関羽張飛趙雲などの人並みはずれた三国志の英雄たちの戦いのシーンは、それぞれに個性的な戦闘シーンを捻出し、次はナンだろうと観客を引き込んでくれる。
このアイデアジョン・ウーが天才と思わせる最大の見せ場である。
まるで、[ベン・ハー」のクライマックスの戦車シーンを思わせるほどに手に汗握らせてくれる。

三国志の面白さのひとつに天才軍師たちの知略に長けた戦術シーンがある。通常の三国志はここにポイントを最大限に置くことが多いが、今回の作品はそんな戦術シーンの面白さもさることながら、先ほど書いたアクションシーンの独創性に舌を巻く。

そして、物語は地上戦から、part2の水上戦へと続いて終わる。
そのつなぎに登場するのが、ジョン・ウー映画の常連である白い鳩。
その鳩が曹操軍の奥深くまでとび、劉備たちの知らない間もなく襲いかかってくる大群の全容を見せてくれる。

後半三分の一は本当に見事である。しかしながら、あまりにも壮大かつ有名な物語ゆえに、ドラマ部分の工夫に限界があり、そのあたりがフリップによる人物説明と、中盤のやや、稚拙な展開を余儀なくさせたのかとも思う。

最初から最後まで、隙のないほど見事な作品とは言いづらいものの、一級品の娯楽映画であり、とにかくおもしろい。これぞ、ジョン・ウーと言わしめるに足るだけのエンターテインメントでした