大林宣彦監督がつづる、余命いくばくもない妻と夫の物語。
とうぜん、大林監督なのだから、尋常の展開はしない。まさに詩情あふれるファンタジーに仕上がっていました。
もちろん物語が物語ですから、随所に涙を誘うシーンもたくさんありましたが、過去と現代、生きるものと死せるもの、そしてこれから逝かんとするものが交錯し、さらに宮沢賢治の詩やCGを使ったファンタジックな画面作りで、まるで夢見心地のような陶酔感に浸りました。
主人公の夫健太の妻とし子は、医者からあと一年と余命を宣告されています。
その最後の日を送る二人と息子たちの物語に、かぶさっていくさまざまな人たち。
あるひとは余命いくばくもないと宣告されて懐かしいふるさとへ幼馴染を訪ねてきます。一方主人公たちの夫婦は新婚時代をすごした町へ日帰りの小旅行へ。そこでたまたま、幼馴染を訪ねてきた人物とすれ違います。さらに、かつて住んだアパートに立ち寄った健太夫婦は今の住人のポストに或る品物を(ネタバレゆえ書きません)。また、たまたま立ち寄った喫茶店での出来事が、ラストに生きてくる。
さまざまな出会いを過去と現代に交錯させながら、次第に一本に結びついていく。懐かしい過去の思い出が、盆の花火とともに帰ってくるラストのすばらしさ。
全編がファンタジーで、ノスタルジー。
かつての名作「異人たちとの夏」を思わせるなんとも郷愁にみちた、大林ワールドの展開に2時間30分という長尺などあっという間に過ぎていきます。
まったく、オリジナリティあふれる作品の作れる監督さんですね