「しあわせな人生の選択」
淡々と進むストーリー展開に、静かに伝わってくるさりげない感動が感じられます。難病ものというか、いわゆる、余命いくばくもない主人公の周りに起こるドラマという設定ですが、非常に上品な作風で迫ってくるので、かえってしみじみとスクリーンに見入ってしまいます。良質の一本という感じの作品でした。監督はセスク・ゲイ。
真っ白な雪景色から映画が始まる、ちょっとくどいほどのクレジットシーンが続く。スペインで暮らすフリアンの元に親友でカナダで暮らしているトマスがやってくる。実はフリアンは肺がんで、すでに末期なので快復の余地がないことをいとこのパウラからきいたからである。
フリアンはすでに身辺整理を始めていて、愛犬のトルーマンの里親探しをしていた。面倒がるフリアンに四日間は滞在するからと迫るトマス。やがて、かつての遠慮ない友達関係が蘇り、二人でフリアンの息子でアムステルダムの大学にいるニコに会いに行ったりする。しかも、戻ってきたら、偶然フリアンの元妻のグロリアとも再会する。
フリアンは、いよいよ末期の症状が出てきたら薬を飲んで、自分で死を迎えると告白。やがてトマスも帰る日が近づく。
トルーマンの里親探しも見つかるようで見つからないままかと思ったら、結局、トマスがその里親となることになったようである。
空港でトマスとトルーマンを見送るフリアンの姿が妙に切なく、何気なく振り返るトルーマンの仕草に胸が熱くなる。
色彩の配置やカメラの構図が美しい作品で、凝ったことはしていないのですが、さりげない色使いが美しい。その演出そのままに物語も詩篇のごとく透き通っている感じです。何気ない話なのに、いい映画を見たという感覚で映画館を出ることができました。