くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「レスラー」

レスラー

いまや完全に忘れ去られたかのようになってしまったかつてのトップ俳優ミッキー・ローク
その彼が起死回生の一本として、演じきった一人の年老いたプロレスラー。その話題性だけではなく一本の作品としてもあまりにも完成された人間ドラマに、涙が出るのを通り越して、なんともいえない重い感動が胸に残りました。

冒頭から、執拗なまでに手持ちカメラが主人公ランディの後を追っていきます。どこまでもどこまでも、まるで彼がこれからどこへ進もうとしているのかを追跡していくかのようなカメラワークから、この物語は幕を開けるのです。

その上、いったい、ミッキー・ロークの顔立ちはどうなったのか?というような単純な興味さえも観客を引き込んでいきます。

かつて、一世を風靡したプロレスラーの晩年、そのなんともいえない切なさは、ミッキー・ロークの人生そのままにかせねあわせる部分もあるのかもしれません。しかしこの映画にはもっと奥の深い、一人の男の生きがいというか、人生ってなんだろうなんて考えさせられてしまう、なんともいえないものもあります。

プロレス以外に人生の舞台を見出せなかった男が、紆余曲折の中で、引退し、普通の家庭生活に戻らんとしたにもかかわらず、それでも自分の存在はリングの上であると再認識せざるを得ないせつなさ、それは生きるということの存在価値を問いかけるものなのかもしれません。

画面作りは非常に切々とリアリティあふれる素朴な映像が続き、それが、ある意味壮絶な一人のプロレスラーの生き様を迫真の物語として訴えかけてくる迫力、さらに、その監督の演出に見事に答えていくミッキー・ロークの演技、さらに物語りに深みを与える脇役の存在感に拍手したい一本でした。