くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「愛を読むひと」

愛を読む人

ベルンハルト・シュリンク原作の「朗読者」という世界的なベストセラーの映画化作品である。
スティーヴン・ダルドリー監督が描く大人の愛の物語は、まだまだ私にはわかりづらいものがあった。非常によくできたラブストーリーなのですが、今ひとつのめりこめない部分がある。

冒頭、主人公マイケル(レイフ・ファインズ)が窓の外を見る。そこを走り抜ける路面電車の中に若き日の彼が見え、一気に物語りは現代から1958年へ。
この時間を飛ばす導入部は見事。そしてそれにつづく雨の中のシーン、突然具合が悪くなってうずくまる若き日のマイケル。路上で思わず嘔吐し、しゃがみこむところへケイト・ウィンスレット扮するハンナが通りかかる。このシーンのつなぎは一気に物語りに引き込むほどに素晴らしい。それは、単に突然の出来事で引き込むというより、それぞれの俳優のカットのつなぎ方のうまさだろうか。

これはただの作品ではないなと感じていると、一気に物語りは3週間後のこの二人のラブシーンへとつづいていく。
浴槽を出たマイケルを背後からやさしく包み、カメラが引くとハンナも全裸になっている。このシーンがなんともエロティックである。しかし、このあと、ベッドインしたあとのシーンは、ベルナルド・ベルトルッチならもう少し官能的に描いたのではないかと思わせるほどにちょっと物足りない。
ここまでの展開が見事なために、ちょっと、このシーンとマイケルの家族の食事シーンが鼻につくように思いますね。

ただ、ここからはピュアな、そしてひたむきな少年時代の恋を貫く主人公の姿、一方でナチスの仕事をしてきたという汚点を心の傷にして悩むハンナの姿とが入り混じり始め、物語はさらに、奥の深い内容へと突き進んでいきます。
8年後、さらに10年後、15年後とオムニバス風に時間を飛ばして物語をつむいでいく構成で、主人公たちの心の変化が語られ、それが物語の確信に少しづつ迫っていくのですが、どうも、のめりこめない部分があるのは、なぜだったのでしょうか?

ケイト・ウィンスレットの演技は素晴らしいものの、今ひとつ同化しづらい女優さんなのでしょうか、それともナチスの戦犯というないようにちょっととっつきにくいところがあったのでしょうか?いずれにせよ、期待していたほどの感動はラストに覚えませんでした。まだまだ大人の恋は理解できないのでしょうかね私には。