娯楽映画としての二時間あまりを十分楽しめる普通の映画でした。特に卓越したシーンも目を見張るところもないし、といって途中でだれるような適当な脚本でもない。新シリーズのスタートとしてしっかりと作られたエンターテインメントだったと思います。監督は「キック・アス」のマシュー・ヴォーンです
映画はX−MENの組織が作られる前の物語、後に敵味方となるもののお互いに優れた資質を持つプロフェッサーXとマグニートーの若き日、チャールズとエリックの物語が中心になります。そして、時は1941年の第二次大戦の時代の一方はナチスに迫害され、一方は幼き日に出会う一人のミュータントとの物語に始まる。
時は1969年ごろ、冷戦真っ只中で米ソがあわや核戦争になるといわれた「キューバ危機」の背後にミュータントたちの存在があったという架空の物語が中心になる。時々ケネディのテレビ中継などを挟みリアリティとSFフィクションの物語を組み合わせた展開は単純に敵味方に分かれるミュータントたちのバトルに終始しない面白さを生み出して全編まったくだれることがない。
もちろん、特撮シーンをふんだんに使った超能力シーンもふんだんに出てくるし、後にエリックやチャールズの姿の基礎になるさまざまなエピソードも挿入されていて、X−MENのシリーズを知るものにはそれなりに、そして知らなくても十分楽しめる娯楽映画なのです。
ただ、難を言えば後にマグニートーとして悪のシンボルになるエリックの心の変化が今ひとつ弱いといえば弱い、一方のチャールズが正義としてミュータントを束ねるリーダーとなる資質があったという存在感も今ひとつ弱い。けれども、二人ともこれから十数年の後の物語が今のシリーズなのだから、まぁ、若き日の物語としてこの程度でとどまっても仕方ないでしょうか。
クライマックス、ミュータントたちに救われたと知りながら自分たちと違う存在を攻撃して粉砕しようとするシーンはある意味、今と違って当時の極端な差別意識が顕在していた時代を象徴しているともいえなくもありません。
ど派手なバトルシーンこそ終盤まで見られませんが、丁寧にドラマ性も重視した演出が良質のエンターテインメントとして完成された理由でしょうか。おもしろかったです