痛快というか、爽快というか、見終わって本当にすっきり、ニンマリした映画でした。あらすじを聞くと「俺たちに明日はない!」の老人版であるかのような印象を受けますが、そんなことはありません。
冒頭から、意味ありげな若者たちの出会いの場面に始まり、一気に物語の現代へ飛びます。時々、一昔前のシーンをカット挿入してみせる懲りようもあって、ただの作品ではない予感を匂わせます。
とはいえ、全体に、この主人公の老夫婦の生活のごとく、のんびり、ゆったり物語り展開するので、アメリカ映画のこうしたアクション系になれた私たちには、最初はちょっと、スピード感のリズムにずれを感じたりもしますが、一方で老夫婦の行動を描くとともに、もうひとつのドラマとして描く恋人同士の警官の様子を交互に見せて、単調な展開にアクセントがついて物語が進んでいくのは楽しいですね。
老夫婦が次々と銀行強盗する物語のように宣伝していますが、そうではなくて、次はちょっと、そしてつぎはちょっとと、まるでつまみ食いするように強盗する姿がなんともほほえましい。
もちろん、年金だけで生活できないハンガリーという国の現状を垣間見せているのですが、そんな社会テーマを前面に押し付けるわけではなく、淡々と老夫婦の行動を捉えていきます
行き当たりばったりで強盗しているかのようでいて、うまいこと警官の裏をかいていく老主人の頭のよさもまた見所のひとつ。
今度こそつかまるかと思えば、老夫婦がしたたかなのか、警官たちがあほなのか、まんまと裏をかいて逃げてしまう。そのあたりの微妙なバランスも良質なエンターテインメントで、しかもラストシーンは「してやったり」といわんばかりにちいさく拍手してしまいたくなる終わり方をする。
見終わって、ハッピーになれる秀作、楽しい映画に出会いました