くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「クリーン」

クリーン

オリヴィエ・アサイヤス監督作品は触れたことがないので、正直どういうものかかなり不安でした。とはいえマギー・チャンカンヌ映画祭で主演女優賞を取った作品というネームヴァリューで見に行ったのです。

いわゆるミュージシャンとして成功していた主人公が、薬におぼれ、夫を死なせ、息子と引き裂かれたのち再生していくという苦労物語です。

物語としてはかなり地味であるし、展開も静かに淡々と抑揚なくつづられていくので、こういうストーリーが好みではない人にはかなりつらいかもしれません。
ガムをかんでタバコを吸い、時々やめきれない薬を飲む母親の姿は正直私にはついていけないものがあります。しかもその主人公が息子と同居したいために必死でまとものなろうとしているようなのですが、どうも感情移入できなかった。

ただ、見事なのがカメラワークです。
手持ちカメラを使用して、長回しのカットを多用するのですが、まるでツーカット、スリーカットに見えるようなパンニングをいれるというテクニックはすばらしい。もちろん、そんな撮影にもかかわらず、ぶれたようになる手持ちカメラのような動きにならないところはおそらくハードの面も工夫したものでしょう。そのあたりカメラマンのエリック・ゴーティエの技量によるところが多いと思います。

物語は最後にはかすかな希望へとサンフランシスコの空を仰ぐ主人公の姿で締めくくられます。
冒頭の薬による夫の死という衝撃的な導入部でどん底に突き落とされる場面から開放的なシーンで締めくくる開放感は優れた作品であることの資質がある証拠なのではないかと思います。

いい映画でしたが、どうも私は感情移入仕切れませんでした。