くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「海角七号/君想う、国境の南」

海角七号/君想う、国境の南

台湾で大ヒットしたというふれこみの作品で、宣伝をみていたときから気になっていたのでようやく見に行きました。

台湾作品はあまりふれたことが少ないですが、韓国映画同様、前半の三分の一あたりまでは本当に幼稚な映像と展開に終始しますね。しかも、警察官が殴るわ、郵便配達は適当ですむわ、何とも一方でASUSなどがある世界のトップクラスのIT大国と思えない日常が描かれます。このあたりが非常に韓国に似ていますね。

でも、終盤にさしかかるとこの映画、本当に監督の手腕が発揮されていて、思わず画面に見入ってしまいます。そしてラストを迎えてからもう一度最初に戻ってこの作品を思い起こしてみると、所々にラストシーンへの伏線が織り込まれていたことが何となく気がつくのです。
やたら横暴をふるう議員の姿も最初はコミカルで、あり得ない人物像なのですが、ラストまでみてみると、「こんな美しい台湾の田舎町をどうして若者はでていくのか」とう想いがなせることであったことに気がつくのです。

そして、自分の町が本当に美しいことに、かつて終戦の年に台湾を去っていった日本人たちの姿を思い起こし、その一人の日本人の手紙で気づかされる主人公阿嘉の姿が何とも切ないですね。
一方、相手役の田中千絵扮する友子が、手紙の内容に心を揺り動かされ、日本に帰るより台湾に残って恋人を選ぶことにするラストシーンにも心を打たれます。

130分の物語は、正直、前半部分の散漫な脚本がこの映画の欠点といえば欠点でしょうか。もっと、終戦で日本へ引き揚げたかつての手紙の主と教え子の物語をしっかり挿入して物語を展開させればもっと秀作に仕上がったことでしょう。
時々ナレーションで挿入される手紙の言葉が前半部分ではほとんど生きていません。本来もっと練り込んで、次第に物語の表にでてくるように仕掛けていけば見事な映画に仕上がったのかなという感想です。

そんなこんなで、まだまだ未完成度の高い作品でしたが、130分全く眠くならないし、見事な場面もさらりと登場しながら、未熟なシーンも見え隠れする、楽しみな監督さんではないかと思います。