くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「黄色い星の子供たち」「この愛のために撃て」

黄色い星の子供たち

「黄色い星の子供たち」
最近、どうもこの手の反戦訴え映画が多い。確かに、こういう歴史的な真実を訴えかけるのはいっこうにかまわないが、それを映画作品として仕上げていない出来映えのものが時に見受けられるのである。

今回の作品もそうしたたぐいの一本であった気がする。しかも、非常に疎ましく思えてくる。いくら征服された側の軍人であるとはいえ、ヒットラーの命令通りにフランス軍が自国のユダヤ人を強制収容し迫害する。たしかにフランス市民の中にはユダヤ人を匿う人たちの様子も描かれるが、ひたすら迫害するいけ好かない軍人の姿が表にでてくる。それが余りに姑息で見ていられないのである。これが元ジャーナリスト、ローズ・ボッシュ監督の言いたいことなのだろう。

この手のユダヤ人迫害映画の悪人はドイツ人と相場が決まっていたが、この作品でフランス人もナチスに劣らず下劣な人々がいたのだと改めて知ってしまい、それが非常にこの作品に嫌悪感を生み出してしまった。

この作品を上質の反戦映画だと紹介している人がいるが、どこが?といいたい。
映像作品として、視点が全く定まっていないという欠点があるように思う。つまり素人映画なのだ。
映画が始まるとモノクロ映像でヒトラーがパリを観光する様子が描かれる。その後、場面が変わると誇らしげに胸に黄色い星をつけたユダヤ人の少年ジョーと友人たち、家族の物語かと思えば、いつの間にかユダヤ人検挙すべきだというドイツからの要請でフランス政府がいかにしてユダヤ人を集めるかという算段をしているシーンが挿入される。一方、和やかに家族と過ごすヒットラーの姿も交互に挿入される。そのシーンのウェイトがほぼ同じなので、どれがこの作品の中心点か見えてこなくなってくる。

そして、物語はフランス人によるユダヤ人の一斉検挙の場面へ。そして巨大な競技場へ収監されるシーンに続いて、そこで働く医師(ジャン・レノ)とアネットという看護婦からの視点の物語へ移る。では、この二人を中心にストーリーが続くのかと思えば、今度はこの競技場から収容所へ移されたユダヤ人たちの物語へ再びストーリーの中心が移る。しかし、そこに時折アネットの心の葛藤が描かれ、どうにもまとまらないままに物語はユダヤ人たちが東の収容所へ送られて大量虐殺される展開へ続くのである。

そして、時は移って、1946年終戦後、うまく収容所から逃げた少年ジョーと弟分のノノが再びアネットと再会して感動のラストシーン。いったい、この映画どこを見てなにを感ずるべきなのか?ジャン・レノ扮する医師はユダヤ人だったためにつれていかれたままで終わるし、要するにこういう史実があったことを語るだけの物語でしかなかったのである。感動のラストが目的なのか、悲惨な事実を見てもらうのが目的なのか、いかにもという映画であった。

「この愛のために撃て」
フランスノワールの期待作として公開された一本で、このフレッド・カヴァイエ監督の前作「すべて彼女のために」はハリウッドリメイクされたという今注目の一本である。

映画が始まるといきなり一人の男サルテが飛び出してきて腹に受けたけがを押さえながら必死で逃げるシーンに始まる。
追われる男は携帯電話で仲間に連絡、助けにくるように要請しながら必死で逃げるが、途中でバイクにはねとばされ瀕死の状態で路上に倒れる。心臓の音がドクンドクンとして暗転、タイトル。この導入部から一気に引き込まれる。

場面が変わるととある産婦人科で一人の女性が超音波で赤ちゃんの様子を夫と見ているほほえましいショット。この平凡な夫婦のショットが続いて、実はこの夫は正看護士になるべく勉強中の看護助手で主人公となるサミュエルである。
場面が変わるとサミュエルの職場、そこで冒頭の品詞の男サミュエルが担ぎ込まれていて、集中治療室で横たわっている。

ところが、時を経ずして殺し屋がサルテの人工呼吸器をはずしにくる。しかしたまたま居合わせた危うくサミュエルがこのサルテを助け、それがきっかけで事件に巻き込まれる。

サミュエルの妻が誘拐され、電話でこのサルテを連れ出さないと妻を殺すと脅迫されるところからはもう行き着く暇もない追っかけシーンとアクションシーンが次々と展開し、画面に釘付けになったままエンディングまで走ってしまうのがすごい。

このサルテを何とか連れ出し、応急処置をした後はこのサルテ、やたらタフになってサミュエルとコンビになって真相を追求しながら逃げていく様がとにかくスピーディ。

実は真犯人は悪徳刑事のチームで、そのチームに使われたサルテは悪徳刑事たちに口封じのために命をねらわれたらしいのがみえてくる。そして、悪徳刑事たちが企てた偽装遺言殺人のビデオを手に入れる目的でサミュエルとサルテが悪戦苦闘しながら次々と危機を乗り越えながらアクションシーンを繰り返す。

サミュエルの見方になりそうな凄腕の女刑事は前半であっけなく殺されるし、サルテの仲間の弟は悪徳刑事の一味に殺されるしと次々とピンチが続いていく。
サミュエルは女刑事殺害の容疑がかかり警察から追われるし、二転三転、危機また危機。

冒頭で地下鉄の中を一人逃げるサミュエルとそれを追う刑事たちの追っかけシーンは必見ショットである。

結局、サルテが仲間を頼んで町中で事件を起こさせ、混乱している警察署にサミュエルと忍び込んでまんまとビデオを記録したUSBを手に入れ、サミュエルの妻があわや悪徳刑事の一味につき落とされそうになる寸前ですべての謎があかされる。

そして、数年後、服役していた悪党刑事のボスは出所するが、とあるホテルでかつて弟を殺されたサルテに殺されたらしいテレビニュースを看護助手が見ているシーンで映画は終わる。

とにかく、このラストシーンからエピローグまで全く行きつく暇もない。あれよあれよと思っているうちにエンディングなのである。まったく、これがおもしろい映画の典型と呼べる一本でした。