くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「4ヶ月、3週と2日」

4ヶ月、3週と2日

2007年カンヌ映画祭パルムドール賞受賞作品、なんと天六のユウラク座にて上映していたので出かけた。本当にこの映画館時々とんでもない作品を上映しているから要注意である。

さてこの映画、なんともやるせないほどに重苦しくてうっとうしい作品でした。とにかく全編完全に陰の世界なのです。しかしながら、この作品を理解するにはその舞台を知る必要があると思います。

1987年ルーマニア、この時期、独裁政権末期であらゆる自由が極端に制限されていた時代であるということです。そんな時代に、中絶を決意した一人の女子学生とそのルームメイトの緊迫した一日を描いています。この設定を知らないと、とにかく重苦しいだけの印象になってしかるべきなのです。

全編を通じて、左右対称の画面、そしてワンシーンワンカットに近いほどの延々とした長まわしの連続、暗い画面、このコラボレーションがこの作品の緊迫感を効果的に盛り上げていきます。

冒頭の学生寮の一室の場面から横長の画面をほぼ完全な左右対称の構図が繰り返されます。しかも、ワンシーンはほとんど舞台の一画面のように長い、しかも、時として手持ちカメラで追いかけていくという徹底した懲りよう。

ルームメイトの友達のためにホテルの一室を借り、裏の中絶手術を請け負ってくれる闇医者と落ち合い、その代金の不足分を埋めるために二人でその医者のSEXの相手をせざるを得なくなる。なんともやるせない展開である。

題名の「4ヶ月、3週と2日」というのは主人公のルームメイトの妊娠した現在の月数のことである。

出だしのタイトルのシーンから物語全編にわたって背景に音楽は一曲も流れない。淡々と重苦しいストーリーが展開していき、ラストでホテルのレストランで向かい合った友人二人が見つめあい、「もうこの話題は語らないこと」と中絶した友人に主人公が告げ、不意に観客側を向いて映画は終わる。その後のタイトルバックで初めて歌声が流れる。

確かに衝撃的な作品である。しかし、あまりにも暗い。さらに、この登場人物の女性たちがうっとしいくらいに陰気である。当時のルーマニアを描いたといえばそれまでだが、ここまで描いた作品をカンヌ映画祭で最高賞というのはどうなのだろうかと思う。
ぜひ女性の視点からの感想が聞きたいものです