くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「陸軍中野学校 竜三号指令」

陸軍中野学校竜三号指令

陸軍中野学校シリーズの第三作目である。
さすがにこのあたりになるとかなり脚本も雑になり、ストーリー展開もおおざっぱになっている。映画産業がまだまだそれなりであった時代のシリーズものの弱さがそのままでたという作品でした。

第一作、第二作となかなか日本映画らしい緻密さが秀でたスパイ映画でしたが、今回の三作目はスパイ戦とはいえ、前二作ほど少年たちの心をわくわくさせるような趣向はあまりなく、どこか第二次大戦に進まんとする歴史的背景の描写が色濃くなってきて、大人向けのシリアスな展開のため、娯楽色が薄れたように見受けられます。

とはいえ、ライターに仕込まれたカメラや万年筆を改造した拳銃、サングラスに仕込まれたナイフや鏡などスパイの小道具は満載で、そのあたりの妙味はシリーズの見所としてその役割を十分発揮していたと思います。

例によって主人公椎名次郎の活躍を描いていくのですが、今ひとつ歯切れが悪く、並はずれたスパイというヒーロー的な活躍がみられないためでしょうか、物語が非常に長く感じられました。三作目ともなって、主人公の設定が知識として定着してしまったためといえなくもありませんが、スピード感と切れの良さがもう一つ不発に終わっていたように見えなくもありません。
田中徳三監督作品ですが、これといった特筆するような演出もみられず、どちらかというと惰性のシリーズ化作品であったように思います。