くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「女と三悪人」「眠狂四郎女妖剣」

女と三悪人

「女と三悪人」
井上梅次監督が描く娯楽時代劇である。
画面に所狭しと人があふれる群衆シーンから幕を開けます。物語は幕末庶民の暮らしも米を買い占める悪徳商人に苦しめられている。そんな中一人の女役者喜久之助(山本富士子)に想いを寄せる三人の男の何とも純粋そのままのさっぱりした恋物語が展開します。

落ちぶれたもののめっぽう腕が立つ浪人鶴木、偽金作りをやったりいかさまばくちを取り仕切ったりと生臭坊主竜運和尚(勝新太郎)風来坊の芳之助(市川雷蔵)三人の気っぷの良さが本当に爽快で気持ちがいい。男はこうでなければいけないと思わずほれぼれしてしまうのです。
こうした竹を割ったような性格の三人の姿はまさしく映画黄金期故のキャラクターかもしれませんね。

演出にも余裕がみられ、肩の凝らない画面づくりとたわいのないある意味モダンなストーリーが観客をいつの間にか銀幕の世界に誘い込んでしまう。そして人間味あふれる庶民感情満載のラストシーンの後は思わず拍手したくなりました。
名作、傑作ではないけれども今や廃れてしまった映画らしい映画でした。


眠狂四郎女妖剣」
ご存じ眠狂四郎シリーズの一本で監督は池広一夫。ストロボ撮影による円月殺法が初めて登場した作品。映画黄金期の娯楽映画の一本ですねこちらも。
といって、何気なく作っているわけではなくて、それぞれの監督のこだわりの演出が見え隠れします。

この作品も横長のスクリーンを意識した画面づくりで、真正面にとらえた廊下の奥に現れる女の姿や、低いカメラからとらえる登場人物など、様々な工夫がみられます。さらに画面の左右の隅に配置した人や物などの構図づくりもなかなかのものです。

この作品の特色は、まさに当時の娯楽映画の典型といえるのでしょうか、やたらと女性の裸体がでてくることです。こうしたシーンの多さは今となっては懐かしいくらいにオーソドックスな娯楽映画の手法といえるでしょうか?

娯楽という視点から、エロ、グロを基調にしたシーンも次々と展開する様はなかなか楽しめます。
ストーリーは単純で、隠れキリシタンとそれを利用した悪徳商人、さらに眠狂四郎出生の秘密を暴く物語を見所満載にチャンバラあり、お色気あり、と見せ場だらけの醍醐味。これこそ映画全盛期のシリーズ映画の妙味でしょうか。

こうしてたくさんの時代劇をみてくるとそんな中での黒澤明時代劇野市付けなどが見えてきて本当に興味深いものがありました