くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「鏡」

鏡

30年ぶりくらいでしょうか?アンドレイ・タルコフスキー監督の「鏡」を見直した。
この映画は心の映像詩であることを承知の上だったので、画面に映るままに鑑賞したのですが、なんとその方が素直にこの映画を理解できた気がします。

主人公(監督自身)の両親の話、子供の話、過去、現代、などが交錯しながら、夢の中のシーンも交えてのタルコフスキーならではの映像芸術の世界が展開します。
出だしの草原のシーンはかすかに記憶があったが、その後はほとんど初めてみるほどに映像を忘れていた。しかし、母の姿なのか、妻の姿なのか、自分の幼い頃なのか自分の息子の姿なのかがそれとなく理解できて、入り乱れる時間と幻想と現実の展開がわずかながら整理できたような気がしました。

そして、ある程度整理できると、アンドレイ・タルコフスキー監督の映像美学の虜になるほどに引き込まれる魅力があることにも気がついたのです。
もちろん、ストーリーというストーリーはないので退屈であることは確かですが、炎に包まれる小屋のシーンが森の真ん中に出現したり、ぽたぽたと落ちる水の様子、風に騒ぐ木々、鳥の飛ぶ姿など、得意の自然を使った演出のおもしろさも魅力に感じました。

先週から続けて数本のタルコフスキー監督作品にふれていますが、彼の個性はまさにカメラを使って詩を書いているという感覚ですね。そして、その集大成として先日みた「ノスタルジア」が位置づけられることも改めて納得しました。
不思議なくらいにとぎすまされた彼の感性が生み出す一編の詩のごとく展開する繊細な映像の数々は本当に何ともいえない不思議な魅力に包まれていると思います。

まさに巨匠アンドレイ・タルコフスキーと呼ぶべきでしょうか