くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「奥様は大学生」「世紀の光」「幸福な家族」

kurawan2016-05-17

「奥様は大学生」
たわいのない映画である。時代色が満載の一本だが、香川京子を見るために行った感じの一本。監督は杉江敏男

大学に通う主人公は、特待生であるほどの勉強がよくできる。そんな彼女は付き合っている恋人が就職が決まったことを機に結婚する。

学校も家事もアルバイトも両立するつもりで頑張り始めるが、次第にほころびが出てきて悩み抜いていく。

彩り豊かな脇役が物語を支え、田舎から夫の父親のエピソードなどを交えてさりげない毎日が描かれる。

とうとう学校を諦めようと決意した主人公に、おっとは勉強している姿が素敵だと励まされ、試験に向かうところでエンディング。本当にたわいもない映画であるが、1956年の製作年の世相が見えるだけでも値打ちがあったかなと思います。

「世紀の光」
アピチャッポン・ウィーラセタクン監督作品なので、それなりに構えて覚悟してみるのだが、前半寝てしまった。全編感性だけで流れていう映像芸術という感じで、感性だけで走る作品は、ほとんどストーリーというものはない。それが魅力でありこの監督の才能だと言われれば確かに、凡人を超えたレベルの映画だと思う。

映画は、森に囲まれた病院で始まる。新任らしい医師を面接している女性医師、控えで待っていた男性はその女性に贈り物をする。場面が変わると患者と向き合っている医師。あとは、恋があり、病院内の患者の話があり、僧侶の患者がいてというのを、インサートカットをたくさん挿入して映像と延々と回すカメラワークだけで描いていく。

中盤に、映画は超近代的な病院に変わる。展開は前半と全く同じ。そこに廊下でテニスをする青年、僧侶の患者など前半と同様のシーンがかぶさる。延々と回すカメラ映像と、意味を理解しづらいオブシェを捉えるカットが挿入される。ゆっくりゆっくり様々なオブジェを捉えながら、最後は広場でダンスを踊るシーンで暗転。

だからどうなのではない。ストーリーがこうあって、テーマがこうあってではない。ただ、ずば抜けた感性で描かれる映像世界なのである。それが魅力なのだが、はまるような代物でもない。凡人が理解しえない世界なのではないかとさえ思えるが、確かに、その感性はずば抜けているのも納得してしまう。それがこの監督が評価されるゆえんなのでしょう。

「幸福な家族」
たわいのない映画ですが、作られた1959年にもかかわらず、非常に古臭いほどのストーリーがある意味見もの。でも、この頃の映画は安心してみれるから良いですね。監督は原研吉。といって知らない監督ですが。

物語は裕福な家庭の主人公とちょっと貧しい庶民の家庭の女性との恋物語を中心に、いかにも平和な家族の物語が描かれる。特に秀逸な場面はないが、しっかりとローアングルで捉えるカメラにせよ、演ずる役者それぞれの存在感など、どれを取っても、安定感がある。

しかも観客を裏切らないストーリー展開で、ラストを締めくくるあたり、まさに映画全盛期の一品という感じである。

こういうたわいないけど、見て損をしたとも思わないし、普通に面白かったよと言える映画が当時は山のようにあった。しかも、この作品でさえ、今の日本映画のレベルに十分肩を並べるのだから大した時代である。